【気まま書評シリーズ:3】『鬼速PDCA』- 実行編 - 。おっさん社長の読書録
PDCAサイクルは、実行をしている時間がほとんどです。一生懸命考えて計画したのだから、確実に実行したい。
実行フェーズでPDCAがとまらないようにしたいですよね。まだ読んでいないという方は過去記事:鬼速PDCA 計画編も読んでみてください。
本編説明の前に、『鬼速PDCA - 実行編 -』で使うまぎらわしい用語の説明を先にしておきたいと思います。
・解決案:課題解決のための具体的な施策
・DO:解決案を実現するために必要なアクション
・TODO:DOを具体的な作業内容に分解してスケジュール化したもの
例えば、解決案が「会社の数字に強くなる」だとします。DOに変換すると「簿記の本を読む」といったものが出てきます。DOをTODOにすると「今日中に駅前の本屋で簿記の本を3冊買う」「1週間で全て読む」といったレベルの話になってくる、こんなイメージです。
アクションをDOとTODOの2階層にしているのは、1階層だとDOの状態で仕事を抱えっぱなしになることが多いから。手間のかかるDOや緊急性の低いDOは、わかっているけどつい先延ばししてしまいがち。ですから、DOが放置されないためにわざと2階層にしているんです。
『鬼速PDCA - 実行編 -』は全5ステップです。それではステップ順に解説していきます。
ステップ1. 解決案を「DO」に変換する
解決案が抽象的なら、DOに変換します。抽象度が高いほど、多くのDOが出てきます。解決案が最初からDOレベルの作業なら、そのままDOにしても大丈夫です。
DOには、1回でおわる完結型のDOとKPIを達成するまで続ける継続型のDOがあります。例えば、解決案が「クライアントともっと交流するべきだ」だとすると、「2ヶ月に1回、会食に行く(継続型)」「打ち合わせの前後の雑談時間を増やす(継続型)」「ゴルフに誘ってみる(完結型)」といったDOが考えられます。
完結型と継続型のDOは、1つの解決案に混在することが多いのです。
ステップ2. DOに優先順位をつけ、やることを絞る
DOが1つしかない場合、またはこのDOをしないと始まらないといったDOは無条件で選びます。
DOが多い場合は、「インパクト」「時間」「気軽さ」で優先順位をつけて数を絞ります。ただし、解決案につき最低1つはDOを選ぶようにしたいところ。なお、継続型のDOは効果が出るまで続ける必要があるので、「時間」は記入せず優先順位をつけるのがポイントです。
ステップ3. DOを定量化する(KDIを設定する)
ここでは、DOを定量化してKDIを設定します。KDIとは、計画通りに行動に移せたかどうかを判断する定量的指標(行動目標)のことを指し、鬼速PDCA独自の言葉です。
ゴール(KPI)は多くの要素から影響を受けるので簡単にコントロールできませんが、行動(KDI)はやるかやらないかで測ることができるので自分でコントロールしやすいのです。
もちろん行動してもKPIに表れないケースもありますが、かといって行動をしなかったら当然KPIも達成に近づきません。だから自分が確実に行動しているかどうかを見える化し、逐一チェックするためにKDIを設定することが重要です。
KDIを検証サイクルごとに細分化した目標をラップタイムと呼びます。例えば、完結型のDOが「1,000ページに及ぶ大作の本を読む」だとすると、KDIは「1000ページ本を読む」になり、KDIを5週で分解すると「毎週200ページずつ読む」となります。
例では1週間に1度、検証をする場合で考えましたが、このように検証のペースに合わせてKDIも分解してラップタイムをみる必要があります。今回の例だと「毎週200ページずつ読む」がラップタイムです。
継続型のDOはラップタイムで追うと確実です。毎日ルーティンチェックシート(その名の通り、習慣のセルフアンケート)を使って振り返りと自己採点をして、週単位などの平均値(ラップタイム)の推移で進捗の確認します。
例えば、継続型のDOが「目を見て挨拶をすること」だとする。これを無理やり数値化しようとしても、目を見られたかどうかを毎回メモするわけにはいきません。
そんなときは「今日はお客様の目を見て挨拶できたか?」など毎日ルーティンチェックシートをつかって振り返りをして、点数をつけ、週単位などで平均値の推移を確認します。
実行できたか、できなかったかを感覚的に評価するしかない行動であっても、その日のうちに振り返れば比較的正確に把握できるので、継続型のDOの定着にはルーティンチェックシートを使ったセルフアンケートが向いています。
ステップ4. DOを「TODO」に落とし込む
多くの人はKPIに向かって進むとき、たいていの場合はDOのレベルで止まってしまい、具体的な作業に落し込まれていない、と著者は言います。ここでいう具体的な作業とは、「これなら今すぐにでも手をつけられる」と思うまで分解した作業内容のことです。
DOのTODO化とはDOを実行の際に迷わないレベルまで分解すること(これなら今すぐにでも手をつけられるレベルまで分解すること)であり、必ず期日設定もおこないましょう。期日を切らないことにより、DOが放置されることが多いからです。
例えば、DOが「2ヶ月に1回、会食に行く」だとしたら、TODOは「(今日中に)先方のスケジュールをメールで確認」「(日付が確定したら)店をネットで探す」「(日付が確定したら)予約の電話をいれる」「(日付が確定したら)自分の予定をブロックする」「(予約がとれたら)先方に情報をメールで伝える」「(予約が取れたら)上司に会食の旨を報告する」などが考えられます。
TODO化されたかどうかのひとつの基準は、タスクをスケジュール帳に書き込めるかどうかです。DOがTODOに分解されると、もはや言い訳の余地もないので、必然的に「もうやるしかない」という気分になります。TODO化は実行力を高めてくれる点で、メリットが果てしなく大きいのです。
ステップ5. TODOの進捗確認をしながら実行に移す
KDIの進捗確認は検証フェーズで行ないますが、TODOの進捗確認は実行フェーズで取り組みます。最低でも1日1回、理想を言えば1日数回進捗確認をしましょう。
TODOを実行するにあたって、大きな問題が発生したら検証フェーズで打開策を検討しますが、TODOが滞るたびに次の会議まで問題を保留にしていてはあまりにも時間の無駄。だから、TODOの進捗確認は実行フェーズに含まれるのです。
毎朝仕事を始める前には、その日のTODOリストが目の前にある状態にして、予定より遅れていればペースを上げるといった「帳尻合わせ」を日中に何回か行ないましょう。継続のTODOに関しては、毎日ルーティンチェックシートで達成率を確認します。
フルマラソンを走る時の1キロ毎のペース配分の確認が検証フェーズだとすれば、TODOの確認は絶えず行うフォームの確認のようなものなのです。
計画フェーズから散々考え抜いてきた結果として導き出されたTODOをこなすことは、ロールプレイングゲームのレベル上げに似ていて楽しいもの。TODOは目的が明確なので迷いなく取り組めますし、それを終わらせれば必ず前に進むことがわかっているので頑張れます。
結局、仕事が楽しくないときは、かけた労力に対して見返りがないからです。ここでの見返りとは、金銭的な見返りだけでなく、自己実現も含めた意味のある行動結果のこと。PDCAをまわしていれば「やることすべて意味がある前提」で動くことになるので、行動することに楽しさを感じられて、日々の充実感が増してくるでしょう。
とはいえ、いざ実行すると課題にあたったり、モチベーションが上がらないこともあります。ここからは、実行における筆者のアドバイスを3点紹介します。
1.「人」に潜むリスクに気を配る
人は自分に直接的に損失をもたらしそうな経済的リスクなどについては想像力が働きやすい一方で、「人(他人の感情)」に関するリスクを忘れがちです。
例えば、順調に仕事を進めていたのに、進捗報告を受けていなかった上司に注意されるなど。こういった「人(他人の感情)」にまつわるリスクを防ぐにはコミュニケーションをとるしかありません。
コミュニケーションを怠ってしまう原因は「報告しても小言を言われるから嫌だ」「上から目線で発言されるから苦手だ」といった好き嫌いの話である場合が多いでしょう。むしろ自分が苦手だと思う相手ほどコミュニケーションミスのリスクが潜んでいると考え、積極的に対話を仕掛けていく必要があります。
ただし、リスクが思い浮かんでも、確率的に低いまたは許容範囲のダメージだとわかっている場合は、必ずしも新たな課題として追加する必要はありません。
2. セルフトークでPDCAを促進
セルフトークとは、掲げている目標を自分自身に言い聞かせること。KGI、KPI、KDIなどをセルフトークを通して意識の中に植え付けるために、携帯のアラーム機能をつかって1日に3回声に出して自分に言い聞かせてみましょう。
苦しいときこそセルフトークで意識づけすることが大切です。モチベーションを奮い立たせ、実行速度を上げていきましょう。
3.「終わらなくてもいい」という割り切りも重要
DOやTODOを書き出すときに理想に燃えて、TODOをやたらと詰め込みすぎてしまうことは多いはず。これには、「人はTODOを実行に移すまではモチベーションが高い傾向にある」という性質が関係しています。
しかし、あまりにもTODOを詰め込み過ぎて結果的に未完遂が増えると、人によっては自己不信に陥ってしまうケースがあります。それではPDCAを加速させる源泉となる「やる気」を大きく削ぐ結果になりかねません。
筆者もかつてそのような経験をし、ある日を境に「必ずしも終わらなくてもいい」と割り切ることを覚えたといいます。ただし、普段から優先順位の高いTODOから順番に着手している必要はあります。
まとめ
実行の5ステップ、参考になりましたでしょうか?
私は実行編を読み進めていくなかで、"TODOを実行するのはあくまで人間"という当たり前のことを改めて再確認しました。
「ついついやらずに放置してしまわないように」とか「KPIなどを視界に入れて、意識づけをしてモチベーションを上げよう」とか「意味ある行動をして、楽しく実行しよう」とかは、レベルが低い話だと思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも現実には、私もやってしまうことあるんですよね。常に最高のモチベーションで最大限のパフォーマンスを出すのって、何年経っても難しい。
そういった「人間の性質」を深く理解して、仕組みとして最大限の実行を体系化したのがこの『鬼速PDCA - 実行編 -』ではないかと私は思いました。
それでは次回、『鬼速PDCA - 検証編 -』でまたお会いしましょう。
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