【社内報の作り方】ゆるさの効能
MACの普及により、デザインレイアウトは「ゆるさ」がどんどんなくなってきました。一方、編集(企画・原稿作成)も真面目な人が多く、「ゆるさ」を作らないことに主眼を置いている人も少なくありません。しかし良い社内報を目指すなら、敢えて「ゆるさ」を作るべきだと考えます。今回は、その「ゆるさ」の効用についてお伝えします。
社内報は編集部だけで作っている?
広告、パンフレットで「ゆるさ」を作ることは、ほとんどの場合プラスには働きません。むしろ完成度が低いという評価を受け、紹介する製品の品質イメージを損ねる可能性もあります。では社内報ではなぜ「ゆるさ」が必要なのか。それは作り手と読者とが、混然一体となっているからです。社内報は経営層が発行人で、多くの場合広報部が編集を担当し、読み手は社員です。では登場する人は誰でしょう。そう社員です。話題を作り、情報を提供し、出演もする。つまり社員なしには社内報は作ることができないのです。ですから、社内報とは、編集部と読者が向き合っているのではなく、編集部と社員とが共犯関係になり、一緒に作って、一緒に読んでいる媒体なのです。
隙が無いと、遠く感じる
そこで「ゆるさ」の話なのですが、ここでいう「ゆるさ」とは、自分も意見が言えそう、参加できそう、ネタを提供したら載せてもらえそう、と社員=読者が感じられるかどうかです。そのためにやるべきは2つ。1つは、登場する社員の数を増やすこと。例えば1000人の企業で、毎号100人くらい掲載されていれば、いずれ自分も掲載されるだろうと、媒体に身近さを感じます。一方、いつも経営層と幹部社員のみが掲載されていると、「経営ツール」感が丸出しになり、一般社員は自分事と捉えられなくなるでしょう。こうした「経営陣の社内報」には隙も無ければ、ネタを提供する気も起きません。もう1つは、「ゆるネタ」を掲載することです。メイン企画とは違うところでよいのですが、投稿記事コーナーや、新人紹介、ちょっとした社員登場コラムなどゆるめのネタを掲載できる場所を敢えて作ることで、社員も「これならネタの提供ができるかも」と思い、媒体に親近感を抱くことができるでしょう。
キーマンは部署長
とはいえ、社員がみんな社内報に載りたいわけではありません。むしろ恥ずかしいと思う人が多いでしょう。またネタの提供と言っても、一般社員が重要なネタを持っているとは考えにくいです。では誰に「ゆるさ」を感じてもらうべきか。それは部署長です。部署長の仕事は、部署の運営です。部下のマネジメントを行っているわけですが、その中でもモチベーションを向上させることは、重要事項の1つです。そのためには、使えるものは何でも使いたい。選択肢は多いほうがいい。それならば、社内報も活用しよう。もしここに思いが至ればしめたものです。放っておいてもネタが集まってくるでしょう。
社内報で出世???
社内報は「褒める」ことのできる媒体です。よくやったと上司が部下を褒めることも大切ですが、社内報を使って「褒める」ことで、他部署や経営層へのアピールになります。かつて社内報に取り上げられたことで、経営層の目に留まり大抜擢された方もいらっしゃいました。その方は後に社長にまで上り詰めています。こういった例は稀有かもしれませんが、しかし、一般社員の活躍が経営層に届く機会は、日常業務の中ではあまりなく、社内報はその数少ない機会の一つなのです。また社内報に掲載されることで、ご家族の方もその活躍を知ることができます。記録としても残ります。特に紙媒体だと、「記念品」的な効能を強く実感できるでしょう。
部署長インフルエンサー
部署長は、お互いある程度コミュニケーションを取りあうものです。もし1人の部署長が社内報活用に目をつけると、隣の部署長にもそのノウハウを伝えたりするものです。ですから部署長一人を捕まえて、社内報制作の共犯関係を結びましょう。すると、その人がインフルエンサー的に社内にノウハウを広げてくれるでしょう。いい加減に作るのではなく、読者に門戸を開く、いいゆるさをぜひ目指してみてください。
今回の1冊
花くま ゆうさく著
メカ★アフロくん
サラリーマンになって、最初の上司が愛読していたダカーポ。読み終わりを貸してもらっていたのだが、そこにあった連載がコレ。いやー、取り敢えずすぐに登場人物が死ぬんです。でも次回には何事もなかったかのように生き返っている。あのあっけらかんとしたゆるーい世界観は、実は入社時の原風景として、今でも心の中に息づいています(だから、こんなゆるい会社員になってしまったのかも…)。さてここで描かれているサラリーマンの姿って、実はまさしく日本の会社あるあるで、今読み返しても納得の内容。こういうことが起きたら、こう行動するな確かに、という展開の連続です。ゆるさとは何か、サラリーマンとは何か。肩ひじ張らず哲学できるゆるーい名作。