日本の国家安全保障90年代 56


#多様性を考える



第5節 日本の危機 南シナ海 1990年代



南シナ海での近年の戦争、紛争は、

中国とベトナムの西沙諸島(パラセル諸島)での戦争(1974年1月)、

中越戦争(1979年2月)、

南沙諸島(スプラトリー諸島)での中国とベトナムの戦争(1988年3月)、

ナトゥナ諸島での中国とマレーシアの係争、

南沙諸島・ミスチーフ礁での中国とフィリピンの戦争(1995年2月)

などがあり、

中国と東南アジア諸国との対立は深刻である。



さらに南シナ海では強力な武装の残忍な海賊集団の存在、地形的な面からテロリストによる襲撃が容易など、危険地帯であり、日本のシー・レーンは脆弱である。


南シナ海には石油や天然ガスなどが埋蔵されていることが確実視されており、さらに海上交通の要衝であるため、この地域の実効支配は非常に重要である。


そのなかで、中国のこの地域での実効支配強化のための軍事力の強化をすすめた。


中国が実効支配している岩礁、暗礁(低潮高地)は、ミスチーフ礁(美済礁)、ジョンソン・サウス礁(赤爪礁)、ヒューズ礁(東門礁)、スビ礁(渚碧礁)、クアルテロン礁(華陽礁)、ファイアリー・クロス礁(永暑礁)、ガベン礁(南薫礁)がある。


 南シナ海においても中国は「領海法」を適用しており、この海域に点在する島々の武力奪取、実効支配を進めており、現在も中国とベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシアとは一触即発の緊迫した状況が続いている。


  ベトナムはミコヤンMIG-29戦闘機、

フィリピンは昼間限定のノースロップF-5Aフリーダム・ファイターを極少数、

マレーシアはボーイングF/A―18ホーネット戦闘攻撃機とスホーイSu―27戦闘機、

インドネシアはロッキード・マーティンF-16ファイティング・ファルコン戦闘機

をそれぞれ少数保有していたが、

海軍力は沿岸警備程度で総じて弱体であり、中国との紛争が生じやすい状況となっている。




第6節 日本の危機 インド洋 1990年代


 インド洋においては、中国とインドの覇権争いが熾烈になってきている。


中国はミャンマーの軍事独裁政権と協力するなど、ミャンマー、スリランカ、パキスタンのインド洋沿岸に海軍基地を建設、中国人民解放軍海軍の艦船が寄港、覇権への布石を打った。


インドもブリティッシュ・エアロスペース(BAEシステムズ)のシー・ハリアー垂直離着陸戦闘機を艦載機とした軽空母を有する艦隊を保有し、将来の正規空母保有に動いた。


中印の対立は避けられそうに無い。


 日本政府は、

1998年にインドとパキスタンが実施した核実験に対し、

政府開発援助を全面的に停止してしまった。


重要な戦略的パートナーに対するこの非行は日本、インド双方にとって重大な損害である。


しかも、1995年に敵国の中国がおこなった核実験に対して日本は、

無償資金援助を停止したのみであった。


敵国には援助するのに、戦略的パートナーには援助を全面停止するという、

日本政府の奇行は日本国民に大きな損害を与えた。






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