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「食べる」がうまくいかない時にきっと何度も開く本 読書メモ『自分のために料理を作る』
最近読んだ本の話です。
たまに、何食べていいかわからなくなることがあって。スーパーやコンビニに行っても何も欲しくないし、じゃあどこかで食べていくかと思ってもなんかどれもイヤ。何も買わずに帰るんだけどお腹はすくので、冷凍してあったご飯に塩振って食べる。全然楽しくない食事をしてしまった…となんか更に落ち込む。
っていう話を周りの女性たちにしたところ、「30代なんてそんなもんよ!!毎日泣いてたわよ!!!」という人もいたし、「あまりメンタルに波がないからわからない」という人もいました。当たり前だけど、人それぞれ。ということは、自分であれこれ試して解決策を見つけなきゃいけないんだ。
そんなときに気になったのがこの本でした。料理が自分の心のケアに繋がるのではっていう話です。「手先を動かすこと」「何かを生み出す、作り出す、育てること」がなんかそういう…メンタルの安定とか、不安を遠ざけるとか、孤独を楽しむとか、そういうのに有効だとはなんとなく知っていたんですが、料理って、まさにそれだ!しかも出来上がったら食べて栄養にもなるし、すごくいいかも!
この本は”自炊料理家”の山口祐加さんが「自分のために料理ができない」と悩んでいる6人を、3ヶ月間自炊コーチとしてサポートした記録です。6人が料理できない理由はさまざま。配偶者のためになら作れるけど、自分ひとりだと…とか、仕事で疲れすぎちゃって…とか。参加者さんが料理と、料理に関する対話を進めていくなかで少しずつ変わっていく様子が、私まで明るい気持ちになれてとてもよかったです。
私はみりんとか料理酒の意味をよく知らずにレシピにあるから入れてたんですが、同じく意味を知らないという参加者さんの回で理屈を説明してくれていました。あ~そういうことなのね~が分かるだけでもう楽しい。野球もそうなんですけど、見ながらちょっと詳しい人に「あの人はこういう選手でね」って説明してもらうと楽しいんですよね。体験しながら知識も増えるって、良い。料理が好きな人はこういうところを楽しんで、応用して、いろんなものを作ってるんだ~~~。
そしてこの話の時に作っていたのが生姜焼きなんですが、私も真似して山口さんの手順どおりに作ったら、め~~~~~ちゃくちゃ美味しかった。生姜焼き、「まあこんなもんだろう家で作るのは」としか思ったことなくてあんまり好きじゃなかったんですけど、これはもう3回作りました。美味しいし、何度でも思ったように美味しくできるのが楽しくて。自分の料理が「また食べたい!」と思えるの、ものすごい幸福感がある!
料理の方法だけでなく、考え方とか味わい方とかいろんな話題が出てきていて、私の中で単独の困りごとだった「食べる」が、「食べる」以外のものと線でつながった感じがしています。「食べる」がうまくいかない!!!と思ってたけど、そうじゃなかった。
何を食べたいのか分からないほど元気ないときって、「私今元気ない……」に支配されちゃってるというか、何も考えてないようで、すごく考えているときなんですよね。でもそれって、考えてもどうしようもないことだったりする。そういう時に、豚肉と玉ねぎを買ってきてこの美味しい生姜焼きを作ることに思考の矛先を変えられたら、私は回復できる気がする。そんな料理の種類をこれから増やせたらいいなと思いました。そのために、普段からもっと自分がどんな味が好きなのか、ちゃんと気にかけたい。食べる時についスマホとかテレビを見ながら適当に食べちゃうの、控えたいなあ。料理に集中するときのように、食べることにも集中したいです。
食べるとか作るを、やらなきゃいけないことでなく、楽しいからやりたいことと思えるようになったら、なんかもう、勝ちだな!と思いました。どんなことでもそうだけどね。考え方、捉え方ひとつだ。食べることって人間の生活に必要なことなのに、ちょっとおろそかにしていた。おろそかにしていることにすら気付いてなかったかも。もっと楽しむ気持ちをもって生活していきたいな、と思わせてくれる1冊でした。
巻末に「自分のために料理を作るヒント」がまとめられてるのがお守りみたいでありがたいし、登場したレシピもまとめて掲載されています。助かる。私は巻末のレシピに気付かず3回とも本文を追いながら作ってました。それもライブ感あっておすすめです。