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週刊わたしの映画と舞台メモ『関心領域』『雨とベンツと国道と私』『ベニー・ラブズ・ユー』
今週のメモです。最近移動の時に『バッタを倒すぜアフリカで』という本を読んでいて、徐々にバッタの知識が増えつつあります。でも虫は怖いので実際に見るのも、動画もちょっといやかも。本って、写真って、便利だなあ。苦手なものでも詳しく知ることができる。本の感想もいずれnoteにあげたいと思いますが今日はいつも通り映画と舞台の感想noteです。
『関心領域』
監督:ジョナサン・グレイザー
話題作です。アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスとその家族は、収容所の隣の大きなすてきなお家に暮らしています。収容所からは朝から晩まで悲鳴や怒号が聞こえてきます。でも家族は普通に、暮らしています。そういうお話です。
あの環境で暮らすことに、とても耐えられそうにない。そう思うのと同時に、でもあの時代あの立場の人だったら、慣れるものかもしれないとも感じました。だって、敵なんだもん。自分たちが裕福に暮らせれば、関係ないし。
なんで同じ姿かたちをしている「人間」を敵とか殺すべき存在だと思えるのか。そこにさえ蓋をしてしまえば、暮らせるし、事務的に「どう処理しよう」、みたいな話もできるんだなあ。だから私はどんなときでもそれだけは絶対に忘れないし、疑っていかなきゃいけないと改めて思いました。
これを見てああだこうだと感想を言う事自体、私達だって家の隣じゃないにしろ同じようなことが起きている地域があるのに、声だって聞こえているはずなのに、気にせず普通に暮らしていることを考えると、何をごちゃごちゃ言ってるんだろうという気持ちになりますよね。楽しかったとか良いもの観た~とかでなく、なんだか怒りがわいてくる作品でした。世界に対しても自分に対しても。
モダンスイマーズ『雨とベンツと国道と私』
吹替の現場で共演させていただき、ずっと尊敬している小林さやかさんがご出演されている舞台です。東京芸術劇場シアターイーストにて上演中で、私は初日の8日に観劇させていただきました。
#モダンスイマーズ#雨とベンツと国道と私
— モダンスイマーズ (@modernswimmers) June 1, 2024
上映時間は約1時間50分を予定しております。あらすじを掲載します。
(一部恫喝や暴力のシーンがあります。)
本番まであと1週間。劇場にてお待ちしております。
ご予約はお早めに!!
⬇︎チケットはこちらから🎫 pic.twitter.com/9sU4QHCovc
あらすじにあるように、ハラスメントがテーマの一つとなっています。実際に度々話題になることですよね。
私は幸いそういった被害を受けたり、目撃したりということもなく今まで生きてきています。なので舞台上で繰り広げられる恫喝や暴力のイヤな空気がとても衝撃的でした。本当に空気がどよっと重たくなるし、心の奥がヒヤッとして、冷めていく。
初日はアフタートークがついていて、そこでのお話も面白かったです。恫喝される側は芝居だと分かっていても辛いと感じていて、一方恫喝する側は芝居だからこそではあるけれど、楽しいと感じていたというお話が印象的でした。される側とする側の違い、きっと現実でも同じような感じなんだろうな。声が小さいと「恫喝する」という行為が選択肢に上がらないから、あれはあれで才能みたいなものでもあるというお話も。
作品にかける思いが熱くなっていくことは素晴らしいことだけど、それの伝え方が恫喝や暴力に頼るものになるのは全然別の問題。作中で本当にサラッと「それは関係ないです」というセリフがあったのがとても印象に残っています。関係ない。本当にそう。そう言った人物がちょっと意外な立ち位置の人だったのも、なんだか救いだなと感じました。
もう一回観たいと思うほど本当にいろいろあれこれ考えた作品です。なのにところどころクスッと笑えるような瞬間もあったりして、そのバランスがすごすぎる…後半チケットは取れるものなのか…様子をうかがいたいとおもいます……👀
『ベニー・ラブズ・ユー』
監督:カール・ホルト
今週の予告先発投手の予定でしたがクローザーに変更です。大幅な改革!謎の采配!この作品、画像だけでぬいぐるみがかわいすぎる……とずっと気になっていました。最近U-NEXTに入ったため、念願の視聴。うれしい。
主人公はおもちゃデザイナーのジャックさん。実家で両親と暮らしていましたが、35歳の誕生日の朝に事故で両親をともに亡くしてしまいます。仕事もうまく行かず、お金のため家を売ることに。思い出の品を処分し、過去を断ち切り再スタート!のつもりでずっと一緒に暮らしてきたぬいぐるみのベニーもゴミ箱へ。するとベニーに魂が宿り、ジャックを困らせるものすべてを排除する殺人ぬいへと化してしまうのでした・・・というお話。
これはもう本当にベニーがかわいすぎる。どこを見ているのかよくわからない目…ポカンとあいた口……かわいらしい声……かわいい…かわいい………感情はありそうなんですが、内蔵された音声しか話せないので、実際何を思っているかはわかりそうでわかりません。
私は最後なんでかよくわからない号泣をしてしまったんですが、おそらく「言葉は自由に話せないけど、なにか考えて、思って、行動している」という健気さがツボみたいです。今何を思ってるんだろうと想像して勝手に泣いちゃう。
なぜジャックを助ける=殺人というプログラムになっているのかは分からないというか、そういうホラーなので…という感じなんですが、とにかくベニーはジャックの役に立ちたいんですよね。そしてジャックに「僕もベニーが大好き!」と言って抱きしめてほしいだけなんです。そういうぬいぐるみだから。一番の友だちになるために生まれたぬいぐるみだから…!もう打ちながら泣いてる
ジャックの一番の友だちでいるために何ができるんだろうと、多分ベニーなりに考えていろんなことをしてるんです。でもそれが大体殺人なのでやるほどジャックは困る。ホラー映画の世界に生まれたばっかりに。ディズニーだったらトイ・ストーリーとかくまのプーさんとかあのラインなのに。なんて健気でかわいそうなベニー。
このジャックさん、現実的にはかなり良くなくて、しかしホラー映画の主人公としてはかなり良くて、すべてが最悪な方向に展開していきます。目の前にある大変なことをその場しのぎで誤魔化していくともっと大変なことになるぞというお手本のような35歳です。もうちょっとしっかりしよう!
もし初手でジャックが「僕も大好き」とハグしてあげていたら、別のルートがあったんだろうか。それともそういう問題じゃなく殺さずにはいられないシステム(?)になってるんだろうか。わかりませんが、ベニーが好きすぎて彼の幸せを願うあまりいろんな想像をしてしまいます。
映画の良し悪しとか出来不出来って多分ずっとよくわからないんですけど、誰かがこれをボロクソ言ったとしても私はめちゃくちゃ好きだと言いたい作品です。ベニー・ラブズ・ユー♪じゃじゃ~~ん!
という映画が2本と、舞台が1本な一週間でした。来週は、ちょっと、おすすめしていただいているものすごくしんどそうなやつを覚悟を決めて見ようと思っているところです。その1本で終わる可能性もなきにしもあらず。でもベニーみたいな軽めカワイイホラーで気になっているのもあるので、それは観られたら良いな…。というわけで今回は明言をさけていきたいと思います。