絶対に被害に遭わない!音楽事務所とオーディション商法
こんにちは、作曲家の大日禰宜(読み:ダイニチネギ)です。今回は音楽関係で存在するオーディション商法について書いていきます。
ここに書いているのはオーディション商法についてのざっくりした説明や実例、作曲家から言える内容だけです。法律などでの実際の対処については多くの法律事務所が記事を出していますのでそちらを参照して下さい。
また、私の場合は事実上、個人事務所の人間であり、事務所に所属した事はないので、そういった人間が書いている事を留意して読んで下さい。部分的に語弊も含まれますので詳細は各自調べて下さい。
オーディション商法って何?
オーディション商法というものがあります。オーディションという名目で行われる商法を指し、次のような流れがあります。
①表向きは音楽事務所がオーディションを開催する形となっており、参加者を募ります。
②そして、参加者の大半を合格とします。
③その後「合格者はレッスンや宣材写真の撮影が必要だからそれらの代金を貰います」という話がされて数十万円の請求をされます。
オーディション商法の目的
オーディション商法の目的はBtoBのような企業が企業に製品を売る商売です。要するに「事務所がアーティストに対してサポートのサービスや楽曲、レッスンを売る」という目的があると思ってもらえると分かりやすいです。事務所所属と言えば聞こえが良いですが、実態として悪徳事務所のお客さんは所属アーティストです。
オーディション商法の見分け方
SNS上で広告を出して「歌い手募集」「歌手になりたい人」「事務所に入れるカラオケ大会」みたいな感じで明記しているオーディションの多くはオーディション商法です。オーディション募集のリンクから飛んでオーディションの説明を隅々まで読んで、会社概要などを見たらオーディション商法なのかそうじゃないのかの見分けが出来ます。金銭を要求されるものは基本的にオーディション商法です。
なぜ今も存在する?
詐欺に該当しないようなやり方をしている悪徳事務所は残っています。本当に悪質なところであれば警察が刑事事件として動いて詐欺として経営者を逮捕する事もありました。一方、警察が動くほどでもなくて、行政からも目をつけられないような事務所は未だオーディション商法を続けています。
BtoB的な類似の商法
ブッキングライブ(ライブハウスからアーティスト)
極めて一部のライブハウスやクラブにもこの手の商法を行なっています。そういうところは「曲を聞きました!出演されませんか?出演費用は3000円です。」という旨の連絡をしてきます。ただ、そういったライブハウスやクラブは曲を聞いていません。実際に曲を出していない人にも声をかけています。
アーティストを呼ぶ金もない、集客力もない、演者から「ライブハウスを借りたい」という声もかからないライブハウスは、存続のためにどうにか箱の使用料とドリンク代を稼ぎたいのでこのような事をします。
自費出版(出版社から作家)
ちょっと前は「自伝を書きませんか」といって自費出版させる商法が存在しました。出版社側はとにかく利益が上がれば良いわけです。自伝という形で書籍を書いてもらって、お金をもらって本を作れば自分達はライターとしての仕事もせずに利益が上がります。形式上は店に並べたりもするのかもしれませんが、自費出版として金をもらっている時点で利益は上がっているので、出版社側は書籍が売れても売れなくても良いわけです。
プロモーター(プロモーターからラッパー)
ビートメイカーやヒップホップなどのジャンルをしていると外国人の「プロモーター」から連絡が来たりして「20ドル払えばプロモーションしてあげるよ」という連絡をしてきたりします。これに応じた事はありませんが、多分金を払ってもプロモーションは一切されない純粋な詐欺なので金を払う必要はありません。
ラッパー(ラッパーからビートメイカー)
ビートメイカーに対して「お前のビートを使ってやるから金を払え」といって金銭の請求をしてくるラッパーがいるようです。ただ①金を払ってもそのビートを使うかどうかは分からない点や②そもそもビートはラッパーが金を出して買うのが基本なので、金は払わなくて良いです。
騙されないためには
音楽業界を知る
騙されないためには外部から分かる範囲でいいので業界を知ったり想像して下さい。
音楽事務所とは
そもそも音楽事務所を厳密に言うなら「レコード制作業」という業種で、事業や業務を行なう事業者や会社です。夢のある場所でも憧れの場所でもなく会社ですし、やっている事も仕事です。
音楽事務所との契約とは
大手事務所との契約、悪徳事務所との契約、どちらも「契約」と言えます。しかし、契約の種別が違います。
大手事務所との契約は、基本的に雇用契約や業務委託契約です。一方、悪徳事務所との契約は言うなれば売買契約です。
音楽事務所の利益の出し方
本来、大手事務所であれば基本的に「タイアップの製作費、楽曲使用料、CDの売り上げ、ライブチケットの売り上げ」というような形で利益を出しながら運営します。
一方、悪徳事務所は基本的に「サポート料、マネジメント料、楽曲製作費、レッスン料」などで利益を出しながら運営します。
悪徳事務所って何がダメ?
事務所としての仕事をしていない
悪徳事務所は基本的に事務所としての仕事をしていないと思って頂いて構いません。悪徳事務所は在籍費用の徴収をするし、それの対価としてサポートをしているという形を取っていますが、外部の人間が見ている限りでは事務所としての仕事は大して感じられません。人使いが荒かったりマネジメントが下手だったりする印象があります。
例えば、アーティストを全国に飛ばして路上ライブに出向かせたりするようなところもあります。
悪徳事務所に入る価値がない
例えば、事務所Aは「YouTubeに歌ってみたやカバーを上げましょう」などと言って歌ってみたやカバー動画の作成をします。しかし、これくらいの事であれば誰でも想像がつくし、わざわざ事務所に入ってまでやる事ではありません。
実際、某有名アーティストや韓国の方ではカバーを発端にして売れている経緯があり、それに則ったらカバーを作るべきというのも分かります。しかし、わざわざ何十万も出して事務所に入ってまでする事ではありませんし、何よりこんな事は個人で出来ます。
悪徳事務所は戦略がない
また、事務所Bは警察の許可を取らず、アーティストに全国で路上ライブをさせたりしています。路上ライブに事務所の人間まで出向いているので故意でしょう。これも色々と大問題ですが、そもそも戦略上の難点があります。
路上ライブをプロモーションとして行なうのは百歩譲ってわかりますが、路上ライブを全国で転々と行なう点に戦略の稚拙さを感じます。
路上ライブで有名になる事は実際ありますが、それは「定期的に」「同じ場所で」やる事で雪だるま式に人が増えるから効果があるわけで、全国を転々とするのは戦略としては微妙です。
また、全国を転々とするとお金がかかります。例えば関西と九州を往復するとしたら数万、宿泊費を含めたらもっとかかります。事務所の歌手は路上ライブの最中にCDとチケットの販売を行なっていましたが、明らかに赤字でしょう。そういう人使いの荒さ、金勘定の下手さを見ていると主観としては入る価値はないなと思います。
そもそもなぜ事務所に入る?
そもそも、なぜ事務所に入るのでしょうか。正直なところ個人であらゆることが出来る時代です。タイアップ、楽曲提供、楽曲の配信、MV制作、ライブなども、個人でやろうと思えば出来るわけです。実際に私も楽曲提供の経験があったり、タイアップの話も来てはいるのでやろうと思えば出来ると思います。金が無いなら金が無いなりに上手くやる方法を調べるなり考えるなりすれば、出来る事も少なくないはずです。
事務所所属の利点は営業マンがタイアップの仕事を持ってくるであるとか、税金や法律関係の諸々を事務所がやってくれることとか、販売戦略を考えてくれる事かなと思います。一方、営業の能力も低い事務所に所属したところで大して意味もありませんし、雇用契約も結んでいないとか、ましてや販売戦略も立てないし製品を売る気も無いなら本当に入る価値は無いです。