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ジョン・レノン, Working Class Hero 〜 風刺と痛烈な皮肉 (歌詞和訳)

歌詞の最後の 2行, その前までに言ってることと思い切り矛盾していて, 反語的というか何というか, とにかく一流の皮肉としか 受け取れない。


前説

Working Class Hero は, ビートルズ 解散後の ジョン・レノン による最初のアルバム "John Lennon/Plastic Ono Band" (1970年12月11日 リリース)に収録された曲。自身のアクースティック・ギターをバックに, ジョンが一人で歌っている。この曲は 彼の 2作目のアルバム "Imagine" (1971年9月9日 リリース)のタイトル曲 Imagine が 1975年にイギリスでシングル・リリースされた際にその B面の曲としてカップリングされているのだが, その曲調・歌詞から伝わってくる荒涼とした雰囲気は, A面の Imagine と酷く対照的である(因みに Imagine はその前に 1971年にアメリカでシングル・リリースされており, その際の B面はアルバム Imagine の収録曲 It's So Hard だった)。

のっけから 今日の本 note が取り上げる「お題」とは別の曲 Imagine の歌詞和訳 note のリンクを貼ったところで, 以下, 本題に入ることにする。

Working Class Hero 〜 歌詞和訳 

労働者階級の英雄ってのは 大したものさ, なれたらいいけどね

本章では後節で「拙訳」(拙者の訳)を載せるけれど, 外国語の歌の歌詞の和訳を掲載する時は, 原詞(ここでは 英語原詞)を併載した方が分かりやすい。元の歌詞をどんな日本語表現に変換したのかが まずは視覚上 一目瞭然になるわけだから, 当然のことだ。しかし, それ は 控えるその辺りの事情については, 次章「英語原詞 について」を参照されたい

現実として, そこそこ以上に有名な歌の歌詞原詞はネット上に溢れている(「公式」的なサイトであれ, 非公式と思われるサイトあるいは個人の趣味のサイトであれ)。勿論, ジョン・レノン の Working Class Hero の英語歌詞原詞についても例外ではない。ジョンが書いた英語歌詞に関心ある向きは(歌詞和訳に関心がある人なら当然ながら英語原詞にも関心があると思うけれども), ググって確認していただければと思う。

とりあえず一言で言ってしまうと, 次章に記す通り 英語原詞全編を掲載することは著作権上の問題となるのだが, 一部の引用であれば可

Working Class Hero の歌詞の印象的な部分は, 例えば こんなである。

この歌の歌詞は, それぞれの単語自体に関して言えば 要するに 難解な単語など殆ど無いんだけれど, センテンスあるいはヴァースのまとまりを読解しようとすると, なかなかに手強い(てごわい!)ことに気づく。のっけから, 最初のヴァースからそれが言えて, その一節は 一つのセンテンスにまとめるとこうなる。

As soon as you're born, they make you feel small by giving you no time instead of it all, till the pain is so big you feel nothing at all.

https://genius.com/John-lennon-working-class-hero-lyrics

だけどこれって, どこで切るのか, つまりどこにカンマを入れるかで, ニュアンスが変わるような気もしてくるんだけど.. 。

と感じつつ, とりあえず, ここはこんなふうに解していいと思う。

君が生まれると直ぐ, 連中は, 自分なんてちっぽけな存在だと思わせる。何しろ何もかも詰め込んで, 考える時間なんて与えないんだ。苦痛が大きすぎて 何も感じられなくなるまでね。

.. で, これってこう言い直していいのではと考え, 和訳歌詞では以下のようにした。

君が生まれると直ぐ, 連中は, 自分なんて無力だと思わせる。考える時間なんて全く与えない。最後には, 苦痛が大きすぎて 何も感じられなくなるのさ。

次は, 全編を通して繰り返される, 歌のタイトルそのものを含む, 印象的な リフレイン の フレーズ。

A working class hero is something to be
A working class hero is something to be

https://genius.com/John-lennon-working-class-hero-lyrics

これはどういう日本語(の表現)に置き換えるのが適当だろうか。というか, そもそもここは, この歌の意味をリスナーとしてどんなふうに受け取るのか, ということに関わってくる重要な部分である。

「リスナーとして」というのは, つまり, こう言ってしまうと身も蓋もないと言われるかもしれないが(しかしやはり)我々リスナーが 作者ジョン・レノンのこの歌に込めたメッセージを 完璧に, 正確に読み取ることなど不可能なのだ(ジョン・レノン自身がインタビューに応えて「解説」めいたことを述べているにしても.. 本節後段および次の節の引用部分を参照)。

おそらく全てのアートの作品において, 作者が込めた意図や意味やメッセージの内容と鑑賞する側(音楽であればリスナー)がそれを解するその内容が 完全に一致することなど, 有り得ない。結局は, 後者の側にいるそれぞれが, どう受け取るのかということになる。

"A working class hero is something to be" は, (ほぼ)直訳するなら, 「労働者階級の英雄は(我々が)なるべき, 大したものだ」という感じでよいのだろうが(書いた通りでは自然な日本語ではないが), この歌の全編を通して伝わってくるジョンの「学校」や「家(家庭)」といった, 言わば広く捉えれば「世間」みたいなものに対する冷ややかな眼を感じ取るとき, このリフレインの言葉は, 言葉の一義的な意味をそのままストレートに受け取って理解する訳にはいかないように思う。

"something" は「何か」というよくある日本語訳になる意味合いの他に, 「大したもの(人)」「重要なもの(人)」といった意味で使われる時もあって, ここでは後者に当たるに違いないのだが, しかし, ジョンはここにおそらくは皮肉を込めていたのではないかと考えられるのではないか。つまり, こんな感じ。

労働者階級の英雄ってのは 大したものさ
労働者階級の英雄ってのは 大したものさ, なれたらいいけどね

*歌い方が変わる後半の 2回分だけ, 上記の通りにした(ただし, なれたらいいけどね は 括弧に入れて。ジョンの歌詞の中にその言葉が明確にあるわけではないし)。その前までは, 以下の通り。

労働者階級の英雄ってのは 大したものさ
労働者階級の英雄ってのは 大したものさ

… ♫ ♫ ♫ …

さて, ここまで書いたところで, この歌はこれまでリスナー一般あるいは全般やいわゆる音楽評論家などにどのように解釈されてきたのか, どのように評価されてきたのかが, やや気になり始めた。これまで趣味で多くの英語の歌の歌詞を和訳してきてその種のことを気にかけたことなど殆どなかったのだが, この歌に関しては, その歌詞全編やメロディから伝わってくる荒涼感, 作者ジョン・レノンの家庭・学校・社会など「世間」に対する冷ややかな眼, さらに言えば 厭世感などと, この歌のタイトルで些か堅苦しい言葉である「労働者階級の英雄」や 歌詞の中のリフレインのフレーズ "A working class hero is something to be" との間にかなりの落差, 大きな溝があることがこの歌の大きな特徴にもなっているように思え, それがこれまでどんなふうに解釈されてきたのか, 単純に知りたくなったからだ。

で, 歌詞和訳の際は何か影響されるようなことが書いてあっては嫌なのでその意味でも普段は見ないようにしているウィキペディアを, 今回は覗いてみることにした(日本語版と英語版)。

この曲は、政治的な曲であるとされている。1970年12月のローリング・ストーンによるインタビューの中でジョン・レノン は、労働者階級の個人が中流階級やマシーンにかえられていくプロセスを歌っていると語っている。ジョンは「19世紀のイギリスの労働運動家タリク・アリについて歌ったもの」とも語っている。「生まれてすぐいじめられ」、「宗教とセックスとテレビに酔わされて誰もが平等と信じ込まされていた」と社会風刺と批判を展開し、「労働者階級の英雄になるのは大変だ (A working class hero is something to be) 」というフレーズが繰り返される。最後に「もし英雄になりたいのなら僕について来い」というメッセージを伝えて終わる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/労働階級の英雄#解説

上に引用したのは, ウィキペディア日本語版のこの歌の「解説」の項, その前半部分である。というわけで, ここには リフレイン の フレーズ "A working class hero is something to be" の和訳が出ていてしまっていて, それは「労働者階級の英雄になるのは大変だ」という日本語に置き換えられているのだった。

確かに, 上に既に書いた通り, "something" は「大したもの(人)」「重要なもの(人)」といった意味で使われることがある言葉であって, 「労働者階級の英雄になるのは大変だ」という訳し方はそれなりに説得力があるような気はする。

しかし, "A working class hero is something to be. A working class hero is something to be." という繰り返しを先に拙訳(拙者が訳)してみた, 要するに日本語に置き換えてみた, 上記の「労働者階級の英雄ってのは 大したものさ。労働者階級の英雄ってのは 大したものさ(なれたらいいけどね)」の方は, なるのは単純に「大変だ」という意味とともに「なかなか なれるもんじゃないよ」といった皮肉めいた, あるいは聴くものを突き放した感じの語感を込めたものであって, やはり自分としてはその方がしっくりくるように感じている。

英語版 Wikipedia も覗いてみたのだが, それについては次節で取り上げることにする。

Age of Aquarius 「水瓶座の時代」の終焉 〜 The 5th Dimension のあの歌を聴きながら 🎶

さて, ここでは John Lennon "Working Class Hero" に関する英語版 Wikipedia から, 気になったところを転載する。まずは,

Stridently political, the song is a commentary on the difference between social classes. According to Lennon, it is about working class people being processed into the middle classes, into the "machine". Lennon also said, "I think it's a revolutionary song – it's really just revolutionary. I just think its concept is revolutionary. I hope it's for workers and not for tarts and fags. I hope it's about what Give Peace a Chance was about. But I don't know – on the other hand, it might just be ignored. I think it's for the people like me who are working class, who are supposed to be processed into the middle classes, or into the machinery. It's my experience, and I hope it's just a warning to people, Working Class Hero."

The song continued a string of political Lennon recordings that began in 1968 with the Beatles' "Revolution" and continued in 1972 with the release of Some Time in New York City.

https://en.wikipedia.org/wiki/Working_Class_Hero#Theme

ここまではとりあえず ジョン自身による説明を引用した小「解説」で, まぁ「ふむ, ふむ」という感じで読めるのだが, 拙者が気になるところは 以下の部分のその最後のところである。

Classic Rock critic Rob Hughes rated "Working Class Hero" as Lennon's 4th best political song, saying that "The class wars provide the impetus for Lennon’s searing commentary on the repressive nature of institutional power." Ultimate Classic Rock critic Nick DeRiso rated it as Lennon's 4th greatest solo political song, calling it "one of Lennon's most brutally frank and emotionally gripping moments."

Stereogum contributors Timothy and Elizabeth Bracy rated it as Lennon's 3rd best solo song, calling it "a stark, acoustic ballad reminiscent of Bob Dylan's 'Masters Of War'" and "a painful recognition that the Age of Aquarius has meant less than zero."

https://en.wikipedia.org/wiki/Working_Class_Hero#Reception

というわけで, 上掲の後段で紹介された評者は, John Lennon の "Working Class Hero" という歌は「水瓶座の時代はゼロ以下の意味しか持たなかったのだという苦痛を伴う認識」をもたらすものだと言っているようだ。

Age of Aquarius, 「水瓶座の時代」と言えば, 拙者かそれ以上の年齢のロック世代なら, その多くがこの歌を思い出すのではないだろうか。

"Medley: Aquarius/Let the Sunshine In (The Flesh Failures)" by the 5th Dimension (1969, a medley of two songs written for the 1967 musical "Hair")

When the moon is in the Seventh House, and Jupiter aligns with Mars, then peace will guide the planets, and love will steer the stars .. This is the dawning of the Age of Aquarius

つまり この歌, 1967-69年に, 「.. やがて 平和が 惑星(複数形)を導き, 愛が 星々を導く。これは 水瓶座の時代の幕開けなのだ」と高らかに, 文字通り「水瓶座の時代」, Age of Aquarius の到来を予告しているわけなのだが(脚注 *)(脚注は別にして, しっかし, このメドレーの歌, 普通は略して "Aquarius/Let the Sunshine In" とか 単に "The Age of Aquarius" とか "Let the Sunshine In" とか呼ばれているわけだけど, 正式名称は "Medley: Aquarius/Let the Sunshine In (The Flesh Failures)" なわけで, この副題の "The Flesh Failures" ってナンだ? ナンはインドの美味しいパンだけど, それはともかく(笑), "Failure" っていや「失敗」「障害」「不具合」とかであってその複数形, むむ? "Flesh" は「(精神と対比させた意味合いでの)肉体」って意味があるから, つまりこれ, これからは「精神」の時代だ, これからは「物質」や「身体」「肉体」ではなく「スピリチュアル」の時代だって言いたいのかな.. しっかしこの括弧, 本 note の主題から離れて(そんな離れてもいない, 笑)延々と長過ぎ!), 

(上の段落の長々と書いた括弧の前に一旦戻ってから ここに来てほしい, 笑)ジョン・レノン の Working Class Hero は, 早くも 1970年に(上述の評者の言葉を援用すると) "水瓶座の時代, Age of Aquarius なんてのは, ゼロ以下の価値しかなかったんだよ" と告げていることになる(なんてこった!)。

ところで, 「水瓶座の時代」, Age of Aquarius というのは 西洋占星術の思想に基づいている言葉で, 20世紀後半になって「新時代」(New Age)という言葉と共に一時期 盛んに言われた言葉である。1960年代のカウンターカルチャー, ウッドストック, ヒッピーなどと切り離せないところもあって興味深いのだが, しかし, 拙者は西洋占星術とか全く詳しくないし, 深追いする気もないので, これはこれで, ウィキペディアを利用してしまおうと思う。

ニューエイジ(英: New Age「新時代」の意)とは、20世紀後半に現れた自己意識運動であり、宗教的・疑似宗教的な潮流である。ニューエイジという言葉は、魚座の時代から 水瓶座の時代 (Age of Aquarius) の新時代(ニューエイジ)に移行するという西洋占星術の思想に基づいている。グノーシス的・超越的な立場を根幹とし、物質的世界によって見えなくなっている神聖な真実を得ることを目指す。ニューエイジ思想の運動は、ニューエイジ運動という。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ニューエイジ

*以下の最初の一文の括弧と括弧内の記述は, 拙者=本 note 筆者が加えたもの。

宗教学者のマイケル・ヨークは、(ニューエイジ, New Age という概念や思想運動は)1960年代から1970年代に潜在的に発展していたが、1980年代に宗教的・準宗教的な選択肢として知られるようになったと考えている。ニューエイジの最初の具体的な出来事として、1969年にニューヨーク州のウッドストックで開催された音楽祭 ウッドストック・フェスティバルと、ミュージカル「ヘアー」がある。「ヘアー」では「アクエリアス」という曲で ニューエイジのテーマ が表現された。この頃から、対抗文化などを通して、「キリスト教」とも「近代合理主義」とも違う新しい文化原理を探求する運動が、大衆レベルで行われていた。

ロックバンドのビートルズや、Apple創業者スティーブ・ジョブズなども、ヒッピー・ムーブメントにコミットし、米国で活躍したインド人マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーは「超越瞑想」を創始しニューエイジの牽引者の一人となった。人類学者カルロス・カスタネダはドラッグを通じて異次元の世界を体験する著作を刊行し、ハーバード大学心理学部教授のラム・ダス(英語版)がヨーガを紹介した書物『ビー・ヒア・ナウ(英語版)』(1971)を発表し、「ヒッピーの聖典」として世界的なベストセラーとなった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ニューエイジ#歴史

上記引用した項目における記述は 以降さらに続いていて(日本における影響についても書かれている), 「新時代」, New Age とか「水瓶座の時代」, Age of Aquarius といった概念にまつわる思想運動は 1960年代に終わったわけではなく, 以後も延々と続いてきていることが分かる。

しかし, 再び上述の評者の言葉を借りるなら, ジョン・レノン は既に 1970年リリースの Working Class Hero で, 「水瓶座の時代はゼロ以下の意味しか持たなかったのだという苦痛を伴う認識」を表現していたというわけだ。

……. ♫ ♫ ♫ …….

*因みに, 上に YouTube リンクを載せた歌(メドレー) "Medley: Aquarius/Let the Sunshine In (The Flesh Failures)", その歌詞は「西洋占星術」的にはけっこう不正確らしい。同曲に関する英語版 Wikipedia, その History の項の終盤から引用すると,

The lyrics of this song were based on the astrological belief that the world would soon be entering the "Age of Aquarius", an age of love, light, and humanity, unlike the current "Age of Pisces". The exact circumstances for the change are "When the moon is in the seventh house, and Jupiter aligns with Mars." This change was presumed to occur at the end of the 20th century; however, astrologers differ widely as to precisely when.

Astrologer Neil Spencer denounced the lyrics as "astrological gibberish", noting that Jupiter forms an astrological aspect with Mars several times a year and the moon is in the 7th House for two hours every day. These lines are considered by many[who?] to be merely poetic license, though some people take them literally.

だけどそもそも(笑)(おっとどっこい, ただしこのドーキンス爺さん, パレスチナ問題の話になるともうどうしようもない偏屈クソ爺いのダメ爺い 〜 この括弧は 2024年6月18日に追加, このツイート・リンクの下の note リンクも)

ドーキンス は 一方で, ただの頑固爺いの偏屈オヤジだったりする。

さてさて,

Working Class Hero 〜 歌詞和訳

以下, 拙訳(拙者による訳)のみ載せる。英語原詞は 載せたいけれど, 載せない。というか, 載せられないその理由については, 本章の冒頭の節「労働者階級の英雄ってのは 大したものさ, なれたらいいけどね」及び 次章「英語原詞 について」を参照されたい。

ではでは, 歌詞和訳を始めます。

一応書いておくと, どうしてこういう日本語表現にしたのか, と思われるところがあれば, 本章の前の 2つの節 労働者階級の英雄ってのは 大したものさ, なれたらいいけどね と Age of Aquarius 「水瓶座の時代」の終焉 〜 The 5th Dimension のあの歌を聴きながら 🎶 を覗いてみていただけると幸い!(上の段落と一部被ってしつこい!) 

Working Class Hero 〜 written by John Lennon (October 9, 1940 – December 8, 1980), included on the album "John Lennon/Plastic Ono Band" released on December 11, 1970; John Lennon's first album after the break-up of the Beatles 🎶

英語原詞 https://genius.com/John-lennon-working-class-hero-lyrics

[ 和訳 ]
君が生まれると直ぐ 連中は 自分なんて無力だと思わせる
考える時間なんて 全く与えない
最後には 苦痛が大きすぎて 何も感じられなくなるのさ

労働者階級の英雄ってのは 大したものさ
労働者階級の英雄ってのは 大したものさ

家にいれば傷つけられ 学校に行けば殴られる
賢ければ除け者にされ 愚かだったならただ軽蔑される
最後には 頭がおかしくなって ルールにもついていけなくなるのさ

労働者階級の英雄ってのは 大したものさ
労働者階級の英雄ってのは 大したものさ

20年以上も 君を酷く苦しめ 怖がらせておきながら
今度は 連中は 君に一生の仕事を決めろと言う
もう 君は全く機能しなくなって 恐怖心しか残ってないというのに

労働者階級の英雄ってのは 大したものさ
労働者階級の英雄ってのは 大したものさ

宗教とセックスとテレビに溺れるように仕向けられ
自分は随分と賢くて 階級から解放され 自由の身だと思い込んでる
そんなことないぜ 俺が見る限り 君らはまだひどい田舎もんさ

労働者階級の英雄ってのは 大したものさ
労働者階級の英雄ってのは 大したものさ (なれたらいいけどね)

連中はまだ君に言ってる まだ上があるぞって
だけど 君がまず学ばなくちゃいけないのは 人殺しをしながら微笑む術なのさ
丘の上にいる奴らのようになりたいならね

労働者階級の英雄ってのは 大したものさ
労働者階級の英雄ってのは 大したものさ (なれたらいいけどね)

英雄になりたいなら ただ 俺について来な
英雄になりたいなら ただ 俺について来いよ*

………………….. ♫ ♫ ♫ …………………….

*訳注: 歌詞全編の訳の「注釈」的なものについては本章, 先に書いた 2節にて。ここでは一言だけ。訳注というわけではないけれど, 歌詞の殆ど, つまり冒頭 Verse 1 から Verse 5, そして Refrain で言ってきたことからすれば, 最後の Outro, これはかなり皮肉だと思う(因みに, 全く同じことを 2回言ってるけれど, 日本語では後者の言い方を変えてみた)。

If you want to be a hero, well just follow me
If you want to be a hero, well just follow me

英語原詞 について

前章の冒頭の節「労働者階級の英雄ってのは 大したものさ, なれたらいいけどね」にも書いた通り, 外国語の歌の歌詞の和訳を掲載する時は, 原詞を併載した方が分かりやすい。元の歌詞をどんな日本語表現に変換したのかが, まずは視覚上 一目瞭然になるわけだから, 当然だ。

実際, 昨夏まではここ note 上に英語歌詞の拙訳を投稿する際には, 歌詞の(通常言うところの)一番, 二番, 三番などの和訳を掲載するごとに, それぞれの直ぐ上に 英語原詞を載せていた。

著作権上問題含みかとの不安を抱きつつそうしていたのだが(2000年代の数年間頻繁に更新していた自分のホームページ上ではそのために日本語訳しか載せていなかったくらい), しかし, 歌詞原詞の全編を掲載することは, 昨秋以降 控えるようになった。

時期としては昨年の晩夏, 音楽著作権を管理する団体(音楽に関心ある日本人ならほぼ誰でも知っていると思われる団体)から, 歌詞原詞全編を掲載することは著作権上の法的問題があるとの趣旨の通告を受け, それまで「拙者」(本 note 筆者)が様々な理由で歌詞(英語以外の歌詞も含む)全編を掲載していた膨大な数にのぼる note 投稿から, 歌詞原詞全編掲載部分を削除するよう求められた。

若干の指摘もれと思われるものも含め, 著作権フリーと思われる古い時代の歌詞以外の歌詞原詞全編掲載箇所を全て削除したのだが(膨大な時間と手間をかけて 昨年9月2日までに), 削除するとその前後の文脈上 さらに編集などしなくてはならなくなるところも少なくなく(例えば歌詞和訳の投稿において併載していた英語歌詞の一部にアスタリスクを付けて脚注的な注釈をしていた場合, 等々), 文字通り, 掛け値なく, 莫大な時間を要する大変な作業だった。

以下の二つの「拙マガ」(拙者のマガジン!)に収録してきた note 記事数は 昨年晩夏時点で既に相当数にのぼり, 昨夏まで様々な経緯で歌の歌詞全編を掲載していた note 記事の数は膨大。歌詞全編掲載箇所の削除とそれに伴って必要となった編集作業は, とにかく, 莫大な手間と労力と時間を要するものだった。

そういうわけで, 載せた方が分かりやすいと思いつつ, しかし, 歌詞の原詞全編の掲載はしないことにしている。著作権上の問題と共に, とにかく, note 利用を継続したいという一心で ♫

Strawberry Fields Forever の "someone" 〜 Working Class Hero の "something"

この二つの歌の共通点とか相違とか, 深入りすると もしかしたら延々と書くようなことになったりするのかもしれないけれど(共に「世間」とか「社会」とかいったものからの疎外感が背景にありそうだけど, ビートルズ時代の直訳「苺畑よ永遠に」の方が優しい眼差しはある), ここではとりあえず, "someone" と "something", それぞれその単語だけ取り出した場合, 似たような意味で使われているという, ただそれだけのことに留めます。

とか言いながら 一言加えると, Working Class Hero の "A working class hero is something to be", 「労働者階級の英雄ってのは 大したものさ(なれたらいいけどね)」も, 「でもそこまで なれなくてもいいよ」ってメッセージを受け取りたい気はして, そう取ったなら, 文脈上の前後を含んだ意味合いも何となく似てくる気はする。

Strawberry Fields Forever では, "It's getting hard to be someone but it all works out. It doesn't matter much to me", 「ひとかどの人物 になるのは難しくなったけど, 全ては何とかなるもの。僕にとっちゃ大したことじゃない」… 

Something, Someone, Nobody 〜 Nowhere Man

"He's a real nowhere man, sitting in his nowhere land, making all his nowhere plans for nobody.."

本章は, 前の章からの流れで, なんとなく.. 

なんとなく? .. ナンとなく って何だ?

やっぱ, インドのカレーには「ナン」だよなぁ😋

"Working Class Hero", John Lennon/Plastic Ono Band (1970) 〜 同じアルバムに "God" 〜 「水瓶座の時代」, Age of Aquarius の終焉

"Working Class Hero" 収録の 1970年リリースのアルバム "John Lennon/Plastic Ono Band", このアルバムってやはりけっこう「水瓶座の時代」, Age of Aquarius の(早々の)終焉を告げるようなアルバムだったのかなと思う(「水瓶座の時代」, Age of Aquarius について関心ある方は, 本 note の Working Class Hero 〜 歌詞和訳 の章の第2節 Age of Aquarius 「水瓶座の時代」の終焉 〜 The 5th Dimension のあの歌を聴きながら 🎶 を参照してください)。

このアルバムには, "Working Class Hero" の他に "Mother", "Isolation", "God" などが収録されていて, 例えば, というか 特にというべきか,  "God",

"God" 歌詞 https://genius.com/John-lennon-god-lyrics

"God" では, その歌詞の冒頭で, "God is a concept by which we measure our pain", 「神とは, 我々の苦痛を測るための概念である」と繰り返し述べ(脚注 *), そのうえで, 「自分は」「魔法を」「易経を」「聖書を」「タロットを」(タロットは西洋占星術とリンクするところがあるらしい, 西洋占星術と水瓶座の時代については Working Class Hero 歌詞和訳の章の第2節)「ヒトラーを」「キリストを」「ケネディを」「仏陀を」「マントラを」「ギータを」「ヨーガを」(ヨーガと水瓶座の時代については Working Class Hero 歌詞和訳の章の第2節) 「王を」「エルヴィスを」「ジマーマンを」(「ボブ・ディランを」, ディランが生まれた時の名前は Robert Allen Zimmerman), そして「ビートルズを」, それら全てを「信じない」と宣言し, 続けて「私はただ」「自分を」「ヨーコと自分を」「信じる」と述べ, 「それがリアリティだ」と言っている。

そして, 「夢は終わった。自分に何が言える? 夢は終わったのさ」, 「かつて」(英語原詞では Yesterday, これはビートルズ時代のポール・マッカートニー作の歌のタイトルを意識していたかもしれない)「自分は夢織り人だったけど, 生まれ変わったのさ。かつてはセイウチだったけど(ビートルズ時代のジョン・レノンの歌 "I Am the Walrus" から), 今はジョンさ」と言い, 最後にこう呼びかけている。

「だから, 親愛なる友人たちよ, 君たちはただ続けていくしかないんだ, ただ生き続けるしかないんだよ。夢は終わったんだ」

"Mother", "Isolation" も, 何というか, 殺伐としている。

一方で, "Love" があって,

そう思うとこの歌の歌詞, 使ってる単語はシンプルでも, 意味はけっこう深いのかも。

因みに, John Lennon/Plastic Ono Band (1970) の収録曲は,

Side one
"Mother"
"Hold On"
"I Found Out"
"Working Class Hero"
"Isolation"

Side two
"Remember"
"Love"
"Well Well Well"
"Look at Me"
"God"
"My Mummy's Dead"

…….. ♫ ♫ ♫ …….. ♫ ♫ ♫ ……..

*上に YouTube リンクを載せた ジョン・レノン の "God", その歌詞の冒頭で繰り返される "God is a concept by which we measure our pain", 「神とは, 我々の苦痛を測るための概念である」というのは, 

ドイツの詩人 ハインリッヒ・ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine, 1797年12月13日 – 1856年2月17日)の次の言葉に近いのではないかと思う。

宗教は救いのない、苦しむ人々のための、精神的な阿片である。

*以下の 2つ, (本 note においては)余談

いやはや しまった, ここでも 偏屈クソ爺い ドーキンス を引いていたのだった。以下のツイート・リンクとビデオ・リンクの下に, 頑固爺い ドーキンス について言及した note 投稿へのリンクを置きます(この段落と件の note 投稿リンクは 2024年6月18日に追加)。

「宗教」に関しては, もちろん ユダヤ教, キリスト教, イスラム教 といった アブラハムの「宗教」を含めて, こうなってほしい。大賛成。 

911 はあなたをどう変えたか?「(「宗教」に対して)ばかばかしい敬意を払うのは, 皆さん, もうやめにしましょう」(リチャード・ドーキンス)

28:56~ People are always going on about, "How did September the 11th change you?" .. Well, here's how it changed me. Let's all stop being so damned respectful.

しかしながら, さらば 頑固爺い, 偏屈爺さん リチャード・ドーキンス!

さてさて。

ジョン・レノン のその他の歌 〜 歌詞和訳集

これまでに投稿した, ジョン・レノンの歌の歌詞の拙者による和訳, 略して「拙訳」, いや「良薬」(口に苦し)いや違う, 「良訳」(かな?)とにもかくにも兎にも角にも(なぜ兎に角が?), とにかく(拙者, 納豆好きの粘着性質),

拙者, つまりこの note の筆者による歌詞和訳 note 集。

ジョン・レノン作の歌で歌詞を訳したことがあるのは, 今日のこの本 note の "Working Class Hero" の他には "Nowhere Man", "Strawberry Fields Forever", "Imagine", "Happy Xmas (War Is Over)", "Give Peace a Chance" だけなんだけど, 以下は ちょっとした関連 note も含めて。

Nowhere Man

Strawberry Fields Forever

Imagine

(Neil Young version)

(Imagine, Neil Young version 初出)

Happy Xmas (War Is Over)

以下の note は, 最後の章が, Happy Xmas (War Is Over)  🎶 

Give Peace a Chance .. タイトル画像に合わせて note タイトルでも A と大文字にしたけど(でもタイトル画像ではもともと全部が大文字だったか, 笑) ♫

Give Peace a Chance の「拙訳」(拙者による訳)の一節が, 昨年亡くなった稀代の名コラムニスト 小田嶋隆氏 追悼特集の書籍の中の追悼文, その文中で引用され, 嬉しいというか文字通り「名誉」に感じるというか .. とにかく, 励みになる出来事が!

それについては, 以下の note の冒頭の章「隣町珈琲 に寄ってから 〜 いざ, 武道館 へ」の中で経緯を 🎶 

Nowhere ManStrawberry Fields Forever, ImagineGive Peace a Chance, Happy Xmas (War Is Over)

ジョン・レノンのプロテストとユーモア(ジョンの命日に) 〜 ジョンが作った歌の歌詞, 和訳集

(目次)
1. ジョン・レノンの母国イギリス女王宛て「勲章返却の理由」を記した手紙
2. 写真を3枚
3. ジョン・レノンの命日に 〜 ジョンが作った歌の歌詞, 和訳集
4. Give Peace a Chance
5. Happy Xmas (War Is Over)

以下の note にも, Nowhere ManStrawberry Fields Forever などを載せている(ジョン・レノン作ではない Let It Be も載せた)。


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