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大吉堂読書録・2025年1月

『高校図書館 生徒がつくる、司書がはぐくむ』(成田康子)みすず書房
学校司書である著者が見た、学校図書館と生徒たちの様子。そこから見える問題点と学校図書館の意義と魅力。
10年前に問われた問題点が、今なお在り続けること。多くの人が知ることで、変わることへと繋がるのだろうか。

『いばらの髪のノラ』(日向理恵子)童心社
全3巻一気読み。
黄金の心臓を手に入れ、ちゃんとした魔女になるため、ノラは人間の住む地上に降りる。
火を生む神炉。時に制御できず暴れ、抑えるために生贄を与える。そんな世界のために厳しい状況や描写も多くなるが、全体を包むのは暖かな感覚。それはいつも失敗ばかりすると自分を責めながらも、懸命に前に進もうとするノラの姿に起因するのかも。
そんなノラを支える人、見守る人、ノラだから為し得たこと。
大きな力に助けられながらも翻弄される。その力を手放すことができるのか。作者が別作品でも描いたテーマが、ここにも貫かれている。

『絵画をみる、絵画をなおす 保存修復の世界』(田口かおり)偕成社
修復家とはどんな仕事なのか、芸術作品を修復するとはどういうことなのか。
技術だけでなく、芸術作品を見ること残すこと伝えることにまで話は及ぶ。
作品が持つ歴史を尊重すること。敢えて修復しないことも。面白い話に満ちています。

『フクロウ准教授の午睡』(伊与原新)文春文庫
地方国立大学に於ける学長選挙を舞台にした物語。
陰謀渦巻く中でのトラブルやアクシデント。スキャンダルを暴く袋井准教授の目的は?
ミステリというよりも政治劇。好みの話ではないのに、ほうと納得され面白く読み終える。それが作者の筆力ということか。

『読まれる覚悟』(桜庭一樹)ちくまプリマー新書
小説は、読まれてはじめて完成する。
小説家はこのような思いで小説を世に出しているのか。批評というものの意味と力も改めて知る。小説を如何に読むか(受け取るか)の指針ともなろう。
「大きな声は小さな声を可視化するために使われるべき」との言葉が響く。

『コービィ・フラッドのおかしな船旅』(ポール・スチュワート・作、クリス・リデル・絵、唐沢則幸・訳)ポプラ社
昔は豪華客船だったSSユーフォニア号の奇妙な乗客たち。聞こえてくる謎の歌声。怪しげな一団。
謎が少しずつ解明すると共に、物語がどんどん膨らみ動き出す。楽しさの仕掛けに溢れた一冊。

『ピーチとチョコレート』(福木はる)講談社
ルッキズムにヒップホップ(ラップ)で立ち向かう女子中学生のカッコイイ物語。
ポジティブってネガティブの反対側ではなく、ネガティブを抱きしめるために存在する。
気になる体型、他者との違い。自分の価値を自分で決める言葉を得て、自分を取り戻す。

『ぼくは本のお医者さん』(深山さくら)佼成出版社
本を修理するブックスドクターの齋藤英世さん。
本の修理をするようになったきっかけ、作業工程、気をつけていること、本が持つ歴史と持ち主の思いを尊重することなどが紹介されている。
製本会社を営まれているので、まさに本のプロフェッショナル。

『絵本のつぎに、なに読もう?』(越高綾乃)かもがわ出版
幼年童話の紹介と思い出話。
幼年童話の大切さを最近強く感じるので、このような本は嬉しい。
幼年童話は子どもの身近にあるものであり、共に笑い、泣き、学び、進む、そんな友達のような存在となるのかもと思う。何度も繰り返し読んだ日々を思い出す。

『晴れた日は図書館へいこう 夢のかたち』(緑川聖司)ポプラ文庫ピュアフル
本好き小学生が語り手の図書館ミステリ第3弾。
様々な本への関わり方が示され、将来の夢を考える流れが素敵。ほのぼのだけではない謎も。でも解決に希望が込められている。
この手の物語としては珍しく、実在の本が出てこないのも特徴かも。

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