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ビリギャルと学歴ロンダリング

「学歴ロンダリング」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

これは元々いた学校よりもレベルの高い学校に進学して良い学歴にアップデートすることを指す言葉である。

特に「ロンダリング」という言葉はマネーロンダリング(資金洗浄)といった汚い言葉にも使われることがあるからか一般的には良いイメージがなく、裏口入学は勿論、推薦入試制度を利用したり、家庭教師をつけたりするなど、多くの外的要素を含んだ「セコい」方法で最終学歴をより良いものにした場合に用いられることが多いと感じる。

一方、学歴ロンダリングとほぼ同義として扱われることが多くなった言葉として「ビリギャル」が挙げられる。

「ビリギャル」とは学年ビリの高校生ギャルが塾講師との出会いをきっかけに猛勉強、偏差値を40上げて最終的に慶應大学に合格するという実話をもとにした小説であり、数年前には映画化もされ、大ヒットを記録した。

作品名である「ビリギャル」という言葉は、作中に登場する主人公のように努力によって自らの学歴や将来を変えるという意味で使われることがある。

私自身、この先述した2つの言葉の両方、あるいはいずれかに当てはまる人物である。

高校1年のときに高校を事実上中退し、一時は最終学歴が中卒になり、将来の展望も何もかも見えなくなったにも関わらず、いろいろあって今春には早稲田大学政治経済学部に入学したため、学歴を本家ビリギャル同様、あるいは彼女以上にアップデートすることができたからだ。

入学式当日の早稲田大学大隈記念講堂

私が学歴そのものに対してどう考えているかは置いておいて、私の感覚としては私がここ数年辿った道は「ビリギャル」というよりも「学歴ロンダリング」に近い。

なぜなら、私が今の進路を実現することができたのは運的な要素が非常に強いからである。

例えば、帰国生入試という海外在住経験者を対象とした大学入試制度を利用した以上、最重要な要素だと思われる、カナダへの高校留学。たまたま留学エージェントの広告を目にし、たまたま留学費用を支援してくれる保護者を持ち、たまたま英語が好きだったという多くも偶然の要素によって実現することができた道だ。

当然、上記に加えて自分の努力も相当量あるわけでそこを過小評価したくはないのだが、それでも「学歴ロンダリング」を成功させるために運的な要素は必要不可欠だったわけである。

では、ビリギャルの成功に運的な要素が一切無いか、と言われればそんなことはないのだろう。

そもそもビリギャルが在籍していたのはその地域では知らない人がいないほどの名門校かつ進学校らしい。東大京大早慶にも合格者を多数出しているとのこと。つまり、ビリはビリでも進学校のビリであり、上の上の下である。まわりの友人はきっと頭が良かったのだろうし、勉強するだけの環境は整っていただろうし、本人をとりまく環境がそもそもビリではない。

また塾にも相当な数通っていたようだ。高2の夏期講習には週3回、それ以降は週4回。早い時期から塾に通って自らを追い込むことも非常に凄いが、高2から受験までの長期間にわたって塾に通い続けることができる家庭の経済力もまた凄い。

これを聞くとたぶん「学歴ロンダリング」と「ビリギャル」という言葉の意味に実際大した違いはなく、要は書き方であったり認識の違いなんだろうと思う。

前者は運的な要素に焦点をあてており、それ故に成功者は「お前の努力の帰結ではない」「セコい入学方法だ」と批判に晒される。後者は本人の努力に焦点をあてており、成功すると通常社会から褒め称えられる。ほぼ同義語なのに社会からの評価はきっぱり分かれる。

しかし、ビリギャルとして扱われ社会から褒め称えられる人の学歴ロンダリング的な要素に気づく人も少なからずいる。実際、徳島からスタンフォード大に進学したことで一躍有名になった松本杏奈氏は最近著書のレビューをきっかけに炎上し、ツイッターのアカウントを削除するに至ったことが話題になっている。

この一件から分かることは学歴ロンダリング成功者のみならず、すべての成功者は謙虚な気持ちを持つことが大事ということだ。

私が尊敬する政治哲学者のマイケル・サンデル教授が自らの著書「実力も運のうち」の中で語っているように、非成功者の支持を得てその成功を継続するためには謙虚であるべきなのである。

私を含め、世の「ビリギャル」達は多少批判されても学歴ロンダリング的な要素を潔く認めて謙虚になるべきだ。

とはいえ、現状私たちが運的な要素から目を背けており傲慢である、というわけでない。メディアや広告で美談を作るために邪魔な要素が省略されたりしているために、そのことがなかなか公に出てこないのだ。それ故、我々自身もたまにその運的な要素を忘れがちだし、忘れてしまったような言動をしている人も多く見受けられ、その度批判に晒されているが、とにかく忘れてはいけない。そして、そんなメディアや広告、批判の中で孤独に闘い続けなければいけない。

謙虚たれ。ただ謙虚たれ、謙虚たれ。ロンダリング成功者たる我々は常日頃からこのことを意識して行動し続けなければいけないのだ。

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