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「歪み」という妄想を手放す:身体にとって本当に大切なこと

私たちは日常的に「身体の歪み」という言葉を耳にします。

整体やマッサージに行けば「歪んでいますね」と言われることがほとんどだし、ネットを見れば、

「肩こりは骨盤の歪みが原因」
「歪みを正せば不調がなくなる」

といった情報が溢れています。

こうした言葉を聞くと、多くの人は「歪み=悪いもの」「整っている=良い状態」と考えてしまうと思います。

本当にそうでしょうか?

今回は、「歪み」という言葉の持つ意味、そして私たちの身体にとって本当に大切なことを一緒に考えていきます。

「歪み=悪い」という先入観はどこから生まれたのか?

解剖学の教科書には「理想的な姿勢」というものが描かれていますが、それはあくまで“モデル”であって、すべての人がその姿勢に当てはまるわけではありません。

それなのに、現代では「理想の姿勢」から少しでもズレると「歪んでいる」とされ、矯正の対象になっています。

これは、「整った姿勢こそが健康的であり、歪みは悪いものだ」という前提が社会に根付いているからだと思います。

しかし、実際のところ、人間の身体は常に変化し続けていて、左右対称や完璧な均衡を保っている人など存在しません。

それなのに、なぜ私たちは「歪み」を気にしてしまうのでしょうか?

「歪み」とはそもそも何なのか?

ここで改めて「歪み」という言葉の定義を考えてみましょう。

一般的に「歪み」と聞くと、「骨格がズレている」「姿勢が崩れている」といったイメージを持つかもしれません。

これは非常に単純すぎる考え方です。

実際、私たちの骨や筋肉は日常の動作やクセ、過去の怪我などによって常に変化しています。

例えば、右利きの人は右手を多く使うため、左右の筋肉のバランスは当然異なります。

これは「歪み」ではなく、その人にとって“必要な適応”なのです。

つまり、今の身体の状態は、これまでの人生の中で積み重ねられてきた結果であり、それ自体が正常とも言えます。

では、なぜ人は「歪み」を気にするのか?

「歪み」が気になるのは、情報社会の影響が大きい

現代は情報が氾濫している時代です。

「このストレッチで歪みを改善」
「〇〇の歪みが肩こりの原因」

など、身体の歪みに関する情報はどこでも目にします。

こうした情報を見続けていると、自然と「歪みは直さなければいけないものだ」と思い込んでしまうでしょう。

実際に、トレーニング指導中にもそういった相談をされます。

さらに、整体やマッサージに行くと、高い確率で「歪んでますね」と言われますよね。

これは単に施術を受ける理由を作るための言葉でもあります。

「歪んでいるから施術が必要ですよ」と言われると、不安になってしまい、定期的に通う人も少なくないですね。

もちろん、整体やマッサージ自体が悪いわけではないです。

適切なケアを受けることで身体が楽になることもあるでしょう。

ただ、「歪み」という言葉が不安を煽るために使われている側面は否定できません。

本当に「歪み」は直すべきなのか?

ここで考えてほしいのは、「そもそも歪みは直さなければいけないものなのか?」という点です。

もし、歪みが本当に問題なら、すべての人が完璧な姿勢でなければ健康でいられないことになります。

現実には多少猫背でも、左右のバランスが違っていても、元気に過ごしている人はたくさんいます。

身体が適応した結果としての“歪み”を無理やり矯正すると、かえって不調を引き起こすことすらあります。

例えば、長年のクセで右足に重心をかけることが多かった人が、急に「まっすぐ立たなきゃ」と意識しすぎると、逆にバランスを崩し、別の部位に負担がかかる可能性があります。

大切なのは、「歪みをなくすこと」ではなく、「自分の身体の状態を知り、それに合ったケアをすること」です。

「歪み」という言葉のビジネス的側面

最後に、「歪み」という言葉の持つビジネス的な側面について触れておきましょう。

身体の悩みは、常に市場価値があります。

健康や美容に関する商品・サービスは、「身体に問題がある」と思わせることで売れるようになっています。

「歪みがあるからこの施術が必要」
「歪みを治せば痛みが消える」

と言われれば、多くの人がそのサービスを求めるでしょう。

もちろん、すべての健康産業が悪いわけではないです。

「歪み=悪」という前提が作られることで、不必要に不安を抱えさせられている人が多いのも事実です。

では、私たちはどうすればいいのでしょうか?

歪みを気にする前に、自分の身体を観察しよう

まずは、自分の身体をよく観察することから始めてみましょう。

左右差があるのは自然なことだと知る
無理に矯正するのではなく、動きやすさを重視する
「歪み」という言葉に惑わされず、自分にとって心地よい姿勢や動きを探る

このような視点を持つだけでも、「歪み」への不安はかなり減るはずです。

身体は、今まで生きてきた結果として形作られたもの。

大切なのは、それを否定することではなく、受け入れながらより快適に過ごす方法を見つけることです。

「歪み」という言葉に振り回されず、本当に自分の身体にとって必要なことを考える。

それが、健康的な身体との向き合い方ではないでしょうか。

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