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ポイズンドーター・ホーリーマザー/湊かなえ

帯の「あなたの「正しさ」を憎みます。」が気に入って購入。

弱っている時、正しさを突きつけられるのはとても苦しくなる。

 
短編集でしたので、1日に一作ずつ寝る前に読んでいた。
今日は体調不良でベッドとトイレがお友達状態のため
最後の「ホーリーマザー」を読んだ。

男女や友情のもつれなども書いてあるが
表題作以外の作品でも
毒親(母)がたくさん描かれている。

 
私は家族仲良好で
両親、姉と仲良しだ。
その反面、私は自立心が低く
家族仲がいまいちな人からは「だからお前は甘ったれなんだ。」とか言われたこともあるし(事実であると同時に嫉妬とも感じる)
家族を悪く言われてケンカになったこともある。

 
私は母を心から尊敬している。

優しく穏やかで面白く
家事も仕事も(祖父母生前は)介護も懸命にしており
愚痴や涙を子の前では見せない。八つ当たりもない。

私を否定したりすることなく
私の挑戦を応援したり、愚痴や泣き言をたくさん聞いてくれるような
所謂「ホーリーマザー」だと思う。

 
だからかは分からないが
私が特に親しくなる友人やかつて付き合っていた人々は
家族仲が悪い人が多く、大抵が毒親(母)だった。

 
この本の毒親のエピソードを読む度に
友人のエピソードが蘇り、友人が浮かぶ。

 
昔、冬休みに入ったら友人6人で一緒に映画を見に行く約束をしていたが
私が一番親しかった友人はドタキャンした。
その前日に成績表が返され、成績が下がったからと正座で2時間説教をされて映画に行くのを許されなかったそうだ。
成績が下がったといっても、友人は私よりよっぽど頭が良く(そもそも私は6人の中で一番成績が悪い)
そもそも私含む全員が入試で分けられた一番成績が良かったクラスだった(うちの高校は入試成績順でクラス分けがされた)。

 
別の友人のエピソードとしては友人同士の泊まり旅行は禁止の上、小学生の頃は遊びに行くのも禁止されていた。
女に学歴は必要ない、と
きょうだいが男女だったそうで
家族の接し方が男女で随分違ったらしい。 

私と遊んでいる時も
前もって約束していた(し、それを家族に伝えてある)にも関わらず
遊んでいる間によく電話がかかってきた。

場合によっては私が電話に代わり
男性と友人がデートをしているわけではないことをアリバイ証明したこともあった。
友人宅で遊んでいた時も
定期的に部屋にお茶やお菓子を持ってきて
様子をうがわれたりしたのも印象的だった。

 
私は昔から黒髪メガネで露出系の格好をしないためか
そういった毒親を持つ友人の家族から信頼されやすかった。

 
この本は毒親じゃない母を持つ私だから読み進められたし
私はあの時、友人はこんな気持ちだったのかな…と重ねながら読むことができたが
母親と関係がいまいちな娘の立場の方は
読むと本当に辛くなると思宇。
おすすめはできない。

 
湊かなえさんらしく
同じ物事や人を色んな人視点で描かれているが
人は誰もが善悪があり、それぞれの正しさを持っており
見方を変えると正にも悪にもなり得ることがよく伝わりる。

 
個人的には「ホーリーマザー」の理穂が弓香に親友ではないと
結婚して出産していないから分からないと
浅瀬で溺れそうと騒いでいるだけと
そんなことを思ったり言ったのが寂しかった…。

 
 
1番個人的に似ていると思ったのは「優しい人」の明日実で
私は似た経験をしたり、似た感情を抱くことがあった。

祖母は私に優しくあれと願った人で「ともかちゃんは優しいね。」とよく言っていた人だった。

私は世間体や大人や周りを気にして行った
所謂「いい子」のふるまいをする自分や
それにより求められた「いい子」役割を
ほめられるほど、違和感を感じていた。

やはり積もり積もるとキレてしまい
結果、「キレた」ことで悪になる
という経験はたくさんあった。

 
私は感情の起伏が激しく、好き嫌いがハッキリしていて
嘘を吐くことが苦手で
すぐ我慢してしまう反面、我慢強くはない。
異性や団体と上手く付き合うことも苦手で
コンプレックスがある。

 
私は人の「正しさ」に傷ついてきたし
人を私の「正しさ」でたくさん傷つけてきたと思う。

 
優しくありたい。
そう思っても優しい人になるのは本当に難しい。

 
この本文に私は心が少し軽くなった。

「あなたは優しい人じゃない───。でも、それは決して悪いことじゃない。」


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