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秒速5センチメートル one more side/加納新太(原作・新海誠)

新海誠さんの映画「秒速5センチメートル」のもう一つの小説で
「君の名は。」のアナザーサイド小説も書いた
加納新太さんの小説である。

「君の名は。」の小説の著者紹介のページで秒速のアナザー小説も書いていると知り、購入。

 
「秒速5センチメートル」の映画・小説版では
第一話の桜花抄が貴樹
第二話のコスモナウトが花苗
第三話の秒速5センチメートルが主に貴樹
目線なのだが

こちらのワンモアサイドでは
第一話が明里
第二話が貴樹
第三話が貴樹と明里
目線に変更されている。

 
映画でも印象的な、明里の「桜の花びらが落ちる速度が秒速5センチメートル」と貴樹に伝える時の心情が
今作では描かれていて
明里にとって貴樹の存在がどんなにどんなに大きかったか分かる。
あまりにも理想過ぎてしまったのだろう。

 
二人の最初で最後のキスの時に
二人とも同じことを感じたのに
明里が次へ向かおうとし
貴樹は分かっていても運命や距離に抗おうとしてしまった。
そんな心や行動のズレが
二人のその後の人生を大きく変えてしまったように感じる。

 
私は元々自身もパートナーにも転勤は望まない派だが
これを読むと尚のこと
子どもが犠牲になると思うと
転勤は望まない。

 
第二話のコスモナウトだが
これが実に興味深い。
貴樹、あなたこんなこと考えていたのか…と、貴樹の気持ちが分かってハッとする。

 
貴樹の花苗への気持ち。距離感。
それは私もかつて感じたことがあるもので、友達以上だったり、特別だったりしても
恋愛感情を言語化したり
関係をハッキリさせようとすると
途端に色褪せてしまう。
そんな人や関係は確かにあると思う。

 
映画や小説版、漫画版では触れていないが
花苗のお姉さんとも貴樹は関わりがあり
私も花苗の姉のような人は警戒する。

見透かされる。

それは恐怖なのだ。
理解されるのは嬉しいのに、見透かされるのは恐ろしい。
花苗の一種の鈍さや似た感じは、だから貴樹が惹かれるのもまた分かる。
夢の人が花苗であり、明里と出会っていなかったら花苗と上手くいったかもしれないやるせなさが際立つ。

 
第三話では明里の大学生活や仕事、旦那さんのことについて触れているが
明里が満たされた幸せであればあるほど
逆に悲しくなる。
小学生の頃は貴樹の方が明里の手を引くような存在だったのに
完全に逆転してしまった。
女性の方がタフだということだろうか。
貴樹が周りの人と上手くいかない、仕事も仕事自体は好きなのに社会人あるあるな内容で日に日に潰れていく。
恋愛も彼女はできるのにいつも上手くいかない。
この差が………グサグサやられる。
居心地の良さを感じたリサに対しても
結局一線は超えられない。

好きとか信頼とかそういったものを越えた特別なものがないと
いくら一緒にいても崩れてしまう。
結局人と人が繋がるのは縁なのだろう。

 
全作品の中で唯一、貴樹の手紙全文が載っているが
個人的には今まで明かされていた内容だけでよかったと思う。

 
漫画版が一番ハッピーエンドなので
個人的には

映画

新海さん小説

加納さん小説

漫画

の順に楽しむことがおすすめ。

 
余談だが
かつて、MADで秒速5センチメートル×奥華子「夕立」があり、それが素晴らしかった。
その動画を見ることで
私は秒速にも奥華子にもハマったのだ。

 


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