絶唱/湊かなえ
阪神淡路大震災で大切な人やものをなくした主人公が、トンガに行く物語。
短編集で主人公がそれぞれ異なるが、登場人物は被っており、それぞれの人が何を失い、何を求め、トンガに行き、どのような変化があったかが描かれている。
「楽園」はやや非現実的で
「約束」は恋人同士でよくあるあるなことが描かれていて(はたから見た恋人と、彼女に接する彼の違いはリアルだった)
恋愛中心かなぁと思いきや
後半の「太陽」「絶唱」で一気に物語は加速していく。
「太陽」では阪神淡路大震災で避難していた時の生活やシングルマザーがリアルに描かれていて
「楽園」とはまた違った見方ができる。
そして何より、表題作の「絶唱」
これが見事である。
「太陽」で物語全体の流れを変えたと思ったら
更にどんでん返しがある。
やはりこちらも阪神淡路大震災の避難がリアルで、なくしたものの大きさ、それに直面した時の人の感情表現が見事である。
三人組の切なさも上手く書けていた。
「絶唱」の完成度が高いし、この一作だけでも読み応えあるが
最後の方のネタバレ?タネ明かしで
へ!?は!?
になる。
フィクションだかノンフィクションだか分からないが
それは読み手に任せるということなのだろうか。
今までトンガに対して何かを思うことはなかったが
海がキレイなことや、「死は悲しいものではない」という言葉や
そういったこの国独自な幸せや生き方が
読者を惹きつける。
思わず地図で場所を調べる。トンガに行きたくなった。
あと、フレンチトーストを食べたくなる。
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