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いま目の前の毎日がしんどいあなたへ
「疲れた」
「もう無理」
「辞めたい」
「何もしたくない」
ぼくらはときどき、そんなふうに思うことがある。
何もかもが嫌になって、嫌なことばかりに目が向いて、そうやって全部がダメに感じてしまう。よくないことしかないように思ってしまう。
そうなったら、もうしんどい。
立ち直るのも、簡単じゃない。
なんのために生きているのか、わからなくなってしまうこともあるかもしれない。
そんなとき、ふと思い出してみてほしい。
いま目の前に”ある”ものに、ちゃんと目を向けてみるんだ。
「本当に嫌なことしかないだろうか?」
昨日話した彼はいまヨーロッパにいる。
先週日本から旅立って、約1週間が経った。
『workaway』という1日5時間働く代わりに、住まいと食事を提供してくれるホームステイプラットフォーム。海外バックパッカーなどがよく利用するサービスを利用して、お手伝いをしながら海外を旅をしている。
今はフランスにいて、次はドイツに行くそうだ。
「まったくわからないフランス語で仕事の指示を受けたけど、わからなかった。意思疎通がうまくできずホームステイ先のお母さんもイライラしてきて思いっきり怒られた」
彼はそう言って少し肩を落としていた。
言葉の壁は思っていたよりも大きいみたいだった。
彼も言葉の壁、文化の違いがあること自体は理解していたようだけれど、それでもそんなに怒らなくてもいいじゃないかと感じてしまうのは仕方のないことかもしれない。
お互いに人間だから。
それぞれにそれぞれの想いがあって、それを完全理解もできないし、理解する必要もない。
それでも僕らは1人で生きていけないし、ましてやそういったサービスを使って自ら異文化に飛び込んでいるわけだから。
「日本にただいたら経験できることじゃないですよ、それ。それを経験するロールプレイングゲームをしている感覚でいるしかないのかもしれないですね」
僕は純粋に彼から知る異文化の話が面白くって、違いがあることをなんとなくわかって行っていても心にくらっている彼が妙に愛らしくて。だから「いいな、楽しそうだ」って、笑って伝えた。
「みんなね、嫌なことがあるとそれグッって目がいっちゃう。それが全部みたいに。それしかないみたいに、ガッと心がとらわれちゃう。ネガティブなことは強いエネルギーがあるからしょうがないんだけど、でもちゃんといいことだってもっとたくさんあったんでしょう。そこにもちゃんと目を向けられるといいですよね」
彼は英語もほとんど話せない。第二言語が英語のヨーロッパ圏でも、メインはその国々の言葉があるから、英語も単語をちょこちょこ。フランス語はGoogle翻訳を使ってもなかなか気持ちが伝えられなくてしんどいそうだ。
それでも、そんな彼を受け入れてくれたホストファミリーは、笑顔で話をしてくれて、毎日ご飯を食べさせてくれて、外出する時にサンドイッチを作ってくれて持たせてくれた。
フランスの凱旋門も、エッフェル塔も、そのほかの建造物、街並みもまったく違くて、歴史を感じる素晴らしい景色を見れている。
ちゃんと、ある。
僕はよく、手のひらを眺める。
両手がある。左手と、右手があって、それらは僕の身体から伸びてきた腕の先にちゃんとある。
握ったり、開いたり。小指だけを動かそうと思ったら、ちょっと薬指も、下手したら中指までも動いてしまったり。思ったら、動かせる。
グッと力を込めて握ることもできる。
それからもう一度、手を広げて、眺める。
自分の手のひらには何があるだろう。
僕には友だちがいる。時差が7時間あって、彼がいるフランスは今朝方だ。きっとまだぐっすり寝ている頃だろう。
そんな彼と顔を合わせて話をする時間がある。手段がある。僕らはそうやって定期的にZoomを使って話している。
面白いと思ったり、笑ったり、気持ちがある。想いがある。
それから聞いた話を聞いてくれる妻さんがいてくれる。おやすみを言って、おはようを言える彼女の存在ほど大きなものはない。
朝目が覚めて、起きる。今日もまた生きていく。
散歩をして、シャワーを浴びて、洗濯物を回して、干せる。今日は少し天気が悪いけれど、ベランダの屋根が雨が当たるのを防いでくれている。
炊き立てのご飯にネギと卵と醤油をかけて、大好きな卵かけご飯を食べられる。
そのあとは自転車に乗って、カフェに来て、コーヒーを飲んで一息ついてから、こうして僕は書けている。
大変なこともある。つらいことはきっとこの先もなくならないはずだ。
でも、ずっとじゃない。
嫌なことがあっても、いいこともちゃんとある。
だから、見つめるんだ。
手のひらを眺めるのもいい。友だちと「最近いいこと何かあった?」を話してみるのもいい。目を瞑って思い出してみるだけでも気持ちが少し軽くなるかもしれない。大きく吸って、大きく吐いて、深呼吸も忘れないように。
書きたい人なら、書いてみるのもきっといいだろう。
僕らにはあるものが、ちゃんとある。思っているよりもずっとたくさんある。
今できることがあって、でもできないことはもっとあって。
でも今できないことをやってみることは、今できることだから。
今できることをやろう。やってみよう。ちゃんとあるから。
できる、できる。まだできないだけ。
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