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「娘さんの就活」降籏達生氏の建設関係で働く人たちの「ちょっといい話」より


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降籏達生氏の建設関係で働く人たちの「ちょっといい話」より

「娘さんの就活」
ある職人さんの話です。 その職人さんは、当時建築ラッシュだった駅前のオフィスビルで、 来る日も来る日も工事をしていました。
休日も、その仕事のたいへんさから疲れてしまい、 家族をどこかに連れて行ったりすることもできません。

それでも、自分の仕事で街が活性化する、人が幸せになる、と思い、懸命に仕事を続けました。

その職人さんは、自分が携わった建物はいろんな人が協力し合い、完成するもので、また、それは自分の作品でもあり、子どものように愛情のあるものだとも話していました。

ただ、建物に対し子どものように愛情を注ぐ一方で、
自分の家族に愛情をうまく表現できない自分自身にいら立ちを感じていました。

それから十数年。
娘さんも大きくなり、就職活動をしているときに、その職人さんは聞きました。

「就職活動はどうだ?」
娘さんは 「○○に決まったよ、お父さん」 と答えました。
あまり娘と向き合えなかったその職人さんは、わが娘を感慨深く見つめていると、娘さんは続けてこう言ったそうです。

「○○って会社のオフィスビル、お父さんが工事して建てたんでしょ?
他の会社と迷ったけど、やっぱりお父さんが建てた建物の中で働くのって守られてる気がしてね」

照れくさそうに話す娘に、職人さんは、 ただただうなずいて
言葉を返せなかったと言っていましたが、 少し誇らしげにも見えました。

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