差別化の”差”って何?すぐに実践できる定量的”差”の考え方と作り方
差別化をする。競合が存在をする市場において売上を獲得・伸長させていくために必要不可欠な事項です。
外食店やテイクアウト・デリバリー店のようなフードビジネスにおいて、差別化といえば、業態や商材、コンセプトのような店舗開発時に考える部分や商品における創意工夫や独自性などがすぐに思いあたる部分かと思います。
この業態やコンセプトの磨き込みや商品開発での工夫は、言わずもがな非常に大切で、これらが消費者に選ばれる大きな要因の1つであると言えます。
一方で、これらは定性的な問題であり、業態/商品開発ノウハウ・調理技術・蓄積した経験・商材(食材や調味料)のストーリーなどが必要で、時間と労力が掛かってしまうものです。(※もちろんそうだからわざわざ来店する、お金を払う価値があるという見方も大いにあると思っています。)
そこで今回は、既に開業・出店をしている、特別なもの(ノウハウ・経験・食材のストーリーなど)な物がないという場合に、定量的・数字的観点で差別化要素を作るための考え方をお伝えしようと思います。
人が感じる”差”ってどのくらいなのか?
人はどのくらいの”差”で、その”差”を感じとることが出来るのでしょうか?
その答えは1.3倍の差です。
人は比較検討の場合、比率で捉えるので1:1.3もしくは0.77:1と覚えておいてもいいかもしれません。
また1.3倍は差を感じとれることが出来る差であるため、圧倒的な差の場合は、1.3の2乗=1.7倍(1.69倍)にする必要があります。
(これはランチェスターの射程距離理論における局地戦:3倍差、広域戦:1.7倍差=√3倍差に起因しているものです。今回1.3倍差=√1.7倍差のイメージです。小難しいのでまずは1.3倍差を覚えておいて下さい。)
合わせて覚えておいて1.3倍差は、すべてに適応されるのでなく、形状によって異なります。
面積の場合は1.3倍×1.3倍=1.7倍差で差を感じます。(例えば写真であれば1.7倍以上のサイズ設定で差を感じやすいです。)
体積の場合は1.3倍×1.3倍×1.3倍=2.2倍差で差を感じます。(例えば箱状のものであれば体積2.2倍以上の容量設定で差を感じやすいです。)
”差”を店舗運営に活かしてみる
ではこの1.3倍、1.7倍の差を使って考えてみましょう。
商品に落として考えてみます。ある商品のボリューム感を売りにする場合、原価の問題はありますが、競合店よりもg数が1.3倍になれば価格に対して満腹度=満足度は競合店を上回ります。
また、看板・目玉商品で注文数の多い刺身盛り合わせや前菜盛り合わせが近似価格で競合と重なっていたとしましょう。この場合、競合が5種盛だった場合、こちらは1.3倍(6.5品)以上の7種盛であれば、自店のほうが沢山の種類があると感じてもらえ、1.7倍(8.5品)以上の9種であれば圧倒的に多いと感じてもらえます。もちろん原価の問題はありますが。
これが品揃えであればどうでしょうか。アルコールのサワーカテゴリーが自店のストロングポイントとしたい場合、競合に比べて1.3倍以上の品揃えあれば、競合よりも多いなと感じとってもらえ、1.7倍であれば明確な大きな差があると感じ取ってもらえます。
また利益ほぼ無し覚悟の高原価集客商品を使う戦術が様々なお店で散見されます。(何を集客商品にするかという問題もありますが、)競合の1.3倍以上の原価設定に自店の集客商品の価値をより感じてもらえます。
また、面積の1.7倍ではどうでしょうか。
例えば外観の看板やタペストリー自体の大きさ(=面積)や業態や商品を告知する文字などは他社よりも1.7倍大きければ、内容やデザインはさておきより目立つことで集客性が上がる事が期待できます。
さらに自店のメニュー表やチラシの中で売りたい商品や看板・目玉商品、カテゴリーがあったとします。この場合、もっとも見やすい位置(左上や最初のページ)に配置しながら、通常商品の写真や文字よりも1.7倍以上にすることで誘導率は上がり、更に2.2倍以上にすることで誘導率が上がります。もちろんもっと大きくても良いです。
感じにくい”差”を応用する
ここまでは1.3倍または1.7倍以上によって差別化の”差”を作ることを主として扱ってきましたが、
逆に、1.3倍未満に抑えれば差がると感じにくい=元の数値0.77倍以上なら小さい・少ないと感じ取られにくい
ということも経営の細かなテクニックとして使えます。
例えば、食材原価高騰が原因で、原価調整や商品内容量・価格の見直しが必要なシーンが出てくると思います。そんなときには、お客様の目に付く価格を変えずに、内容量を変え、実質的値上げを実施していくのが理想です。
いくら1.3倍以内の差でも目先の価格変更については、購買頻度の高い業態であればあるほど、価格に見慣れている分、お客様も気づきやすいため、あくまで内容量変更による実質的価格アップのほうが良いと私は思っています。
例えば、約100gを盛りつけて600円で提供している商品があったとします。この商品を価格改定をしていくのですが、ステップは3つです。
step1)1円あたりのg数を計算する
→この場合は100g=600円のため、1円=0.1667gになります。
step2)1円あたりのg数に対して0.77倍以上の数字を掛ける
→原価率をどこまで落とすかという議論は各社・各店舗の方針、原価高騰の状況によって異なりますが、今回は0.9倍(90%まで落とす)としましょう。その場合、1.667g×0.9=0.150gとなります。
step3)調整をした1円あたりのg数を元の価格に戻す。
→調整後の価格は1円あたり0.150gでしたので、これに元の価格600円を掛け、再計算をします。この場合は0.150×600円=90gとなりましたので、内容量変更後は90g盛り付けで600円で提供ということになります。
今回はgを測って盛付をする商品でしたが、〇個/〇枚/〇切れなどで計算する場合もこのステップは同様です。
◆20枚で600円の提供の商品
1)1円あたり0.3333枚、を算出
2)90%で調整した場合、1円あたり0.3枚
3)600円を掛け直して、18枚での提供
といった形になります。
今回は差別化の”差”を定量的に作るための基準値1.3倍以上と0.77倍以内についてお伝えしました。
この1.3倍以上、0.77倍以内は、多くの事項に当てはめることのできる企業・店舗であればもちろん好ましいですが、
自店・自社のストロングポイントとしたい、ウィークポイントとして目立たせくない部分へ絞ってまずは使っていくと尚良いと思いますので、参考に是非活用してみてください。