大学職員から受験生へ今伝えたいこと:大学共通テスト
先日、文部科学省から『大学入学共通テスト』を延期しない方針が発表されました。
その背景には、全国高等学校長協会のアンケートで国公私立高の約7割が予定通りの実施を求めており、また大学側からも個別試験に影響するとして延期に慎重な声が出ている、といったことを踏まえたそうです。
一方で、私の周りの受験生や保護者からも不満や焦りといった声も少なからずあります。
ただでさえ、現在の高校3年生は入試に振り回されてきたので、焦る気持ちはよく分かります。
それらを踏まえ、今回はいち大学の職員である私の気持ちを受験生やその保護者の方々に伝えたいと思い記事にしました。
どうぞ最後までお付き合いください。
■不登校から引きこもりになった幼馴染との話
来年、専門学校に入り直そうと必死に勉強している少し年の離れた幼馴染がいます。
家が近所で小さい頃はよく遊んでいました。
ですが、あることがきっかけで彼は中学校から引きこもるようになりました。(ここからはDくんと呼びます)
Dくんは少し前に高卒認定を取得しましたが、上の学校への進学に全く興味がない様子でした。
当時、私が専門学校の職員をしていたこともあって、Dくんの両親からお願いされて何度か週末に大学や専門学校のパンフレットを持って学校紹介しに通っていました。
私の説明も悪かったのかもしれませんが、ある日の夜、Dくんは両親と大喧嘩し、それ以降この話はタブーになりました。
Dくんの両親からは丁寧に謝罪されましたが、正直に言えば「何でわかってもらえないだろう?やりたい事があればやればいいのに…」と考えていました。その後、数年が経過しました。
そして、つい先日にDくんの両親から
「Dがプログラミングの専門学校に入るつもりで今勉強をしている」
とLINEがありました。私はびっくりしました。
「あれだけ嫌がっていて、上の学校に興味を示さなかったのになんで行く気になったんだろう?しかもこの時期に?」と思いました。
不思議に思った私は電話をかけ直し、なぜそうしようと思った理由を聞きました。
両親いわく「突然」のことで「学校も自分で勝手に探してきた」そうです。
ですが、聞いていくうちにその理由に納得いきました。
Dくんは、元々パソコンに詳しかったのですが、このコロナウイルスの騒ぎでテレワーク勤務ができる世の中になると思い、顔を出さなくても参加できるオンライン学校説明会へ参加したそうです。
その参加者の中には、似た境遇の方もいたそうです。極めつけは、専門学校の担当者の方がその方々を交えて匿名制OKのオンライン意見交換なども行い、親身になって彼の話を聞いてくださったようです。
すごい…と思いました。
当時、私が説明していた学校説明には「熱意」もなかたっただろうし、Dくんからすれば「興味のない学校」について延々と聞かされてただけだったんだ。と反省しました。
パソコンに詳しい彼なのでマッチングは必然とも考えられますが、心が動いた一番の理由は『共感』でしょう。
そして、この記事を書いているうちに、以前読んだ漫画「稲荷神社のキツネさん」の1コマでキツネさんが『才能とは、ズバリ頑張らなくてもできること』という台詞を思い出しました。
この話は、主人公の旅行代理店のサラリーマンが利益重視のプランに嫌気がさし早期退社。でも「自分が最高と思うプランならずっと調べてられるし、発信もしたい」という頑張らなくても続けられることを見つけ、カスタマーから共感を得るという物語です。
才能というとハードルが上がりますが、
Dくんにとっては、その担当者の方や参加者との共感によって自分を棚卸し、自分の好きな事について考え行動へとつながったのかもしれません。
■『共感』と『焦らなくていい』
冒頭でも触れたように、大学共通テストは通常実施の方針のようです。
時期をずらさなかったという国の判断についてはあえて触れません。
(厳しいかもしれませんが、決まったことは仕方ないとも思います)
私の経験上ですが、この切り替えが早くできないと逆に格差が出てしまうのではないかとも懸念しています。
でも、もう一つ今回の経験で伝えたい事は
やりたい事が見つかるタイミングは人それぞれで、
オンラインでも気軽に学校説明会に参加できるようになった
という世の中の変化についてです。
そして、人は『共感』によって心が動くのだなと改めて感じました。
学力格差や学びの継続といったように、教育業界は荒波にさらされていますが、今回の経験で個人的には『果たして現役にこだわる必要もあるのかな?』といったことも考えさせられました(同業者からはバッシングを受けそうですが…)。
状況は違いますが、アメリカでは当たり前のように編入学も行われています。また、私も社会人になってから大学院に通ったくちなので、本当にいつでも学び直せます。
社会システムがまた稼働すれば人手不足の問題も出てくるでしょう。
『焦らなくていい』
昔、私はDくんにそう声を掛けてあげるべきだったと今さら気付き、それは今の状況にも重なると感じました。
『焦らなくていい』そう言ってくれるだけで気が少しラクになるのではないでしょうか。
ぜひ、受験生や受験を考えている方、あるいはそのご家庭の方がこの記事を見たら、今日からそう受験生に声を掛けてくれれば嬉しいなと思います。
自分のペースでよくて、焦らずに考え、共感できる居場所こそが自分が学ぶ場所として『本当に心地のよいところ』だと心から思うからです。
オンラインの画面越しの進路相談でも、受験生にそう伝えていきたいと思います。
■pay it forward(次の人へ伝える)
私の好きな映画で『ペイ・フォワード』という映画があります。
まだ幼き頃のハーレイ・ジョエル・オスメントが主演の映画ですが、その作中の中で「pay it forward」という台詞が繰り返し使われます。
この意味は『次の人へ伝える』という意味です。
この思いが伝わっていけばいいなと思います。
最後までお読みいいただき、ありがとうございました。
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