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前略 人類のゆりかごより
最初アフリカへ行こうと決めたのは、いろいろと煮詰まっている時だった。とにかく、どこか旅をしたいという衝動に駆られていた。
周囲の人たちとの関係性、その時抱えていたいくつかの仕事、先が危うい生活の行く末。何か、現実を打破したいというか、生活している中で少し目線を変えてみないことには、さまざまなことが行き詰まる感覚があった。
ちょうどマイルが溜まりに溜まっていたこともあったのと、長く働いたことによっていつもより少し長い期間休めるタイミングだったのも良かった。何も考えないまま、3つの国を渡り歩くことに決めた。
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エチオピアのアディスアベバは、エチオピア航空のハブ空港として必ず寄らねばならない場所だった。なので通らざるを得ないため、せっかくだから立ち寄るかという感じだった。そのため航空券を取った時、特に目的は存在していなかった。
タンザニアは私が小さい頃に知り合った家族の出身地で、あわよくば彼らと再会することができたらくらいに思って選んだ。友人の母親はのちに、政府の要人となり、日本に来日し見事再会した。もしかしたら、タンザニアでもう一度会えるかもしれない。そんな淡い希望を持って訪れることを決めたわけで、正直行くと決めた時はコーヒーが美味しいところというくらいのイメージしかなく、とんだ世間知らずだった(結局今回連絡がつかず、会うことはできなかった)。
マダガスカルは──。
いつだったか世界の絶景を特集した本でバオバブの木が紹介されていて、それを実際に自分の目で見たい!という夢を実現するためだった。
アフリカはただ怖いというイメージしか持っていなかったし、割と文明も発達していないのではと勝手に思っていたけれど、実際に行ってみるとそんなことはなくて国の中心となる場所にはそれなりの文明都市が広がっていた。
誇りを持って仕事をする人たち、でも一度中心地を離れると、そこには同じ国とは思えないほど簡素な家が広がっていて、どこへ行っても貧富はついてまわる。でも、果たしてお金がある、ということがそのまま幸せに直結するものなのかどうかわからなかった。
お金がなくても、心は満たされているかもしれない。
かつては世界一幸福な国としてもてはやされたブータンも、若者たちが携帯を持つようになって文明が少しずつ発展していくことで、国民総幸福量(GNH)というのが減っていったという。この世には知らないままの方が幸せだった、ということがある確かな証左ではないだろうか。
自分の今の生活が正しいものなのか、考えるきっかけにはなった気がするが、振り返ってみると旅している時は日々が割と必死で、あまり考える暇はなかったように思う。
話はずれてしまったけれど、今回旅するにあたり街を歩く時間、それからサファリなどの自然を見る時間をそれぞれの国で持つことを意識した。もともと写真を撮ることは好きだったけれど、自分が本当に何を撮りたくて、何に対して心が動くのかということを、再度認識したかった。
約1ヶ月間、仕事を放り出して頭を空っぽにして写真を撮り続けた。言葉にしないとどんどん記憶が粉塵と化してしまいそうだったので、少しずつなけなしの記憶を引っ張って明日から不定期に振り返っていきたいと思います。
今回の旅のダイジェスト
エチオピア - アディスアベバ(街歩き)
特に目的もなく、ただぶらぶらして写真を撮るエチオピア - ダナキル(自然)
世界一過酷とも言われているダナキル砂漠にあるエルタ・アレ火山へ行くタンザニア - キリマンジャロ(自然)
山を登る……のではなく、サファリツアーに参加して動物を撮るタンザニア - ダル・エス・サラーム/ザンジバル島(街歩き)
世界一凶悪と言われている街と、スパイスの楽園と言われている島を歩くマダガスカル - モロンダバ(自然)
物心ついた時から夢見ていた、バオバブの並木道を見るマダガスカル - アンタナナリボ(街歩き)
特に目的もなく、ただぶらぶらして写真を撮る
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