友達に教えたいリスクとお金の話(はじめに)
友人・知人向けの「私家版」お金の本がもうすぐ完成する予定です。ここではその内容を順番に紹介していきます。本が完成したら地域・学生時代・職場関係の友人には無料で差し上げるつもりです。
なお、私家版を印刷するまえに、公認会計士の友人にレビューを受ける予定ですが、これを見てくださる方で「わかりにくい」とか「こういう話も聞きたい」という方は、どしどしご意見をコメントとしてお聞かせください。印刷は早くて2025年1月を予定しています。
(はじめに)かしこいあなたにこそ、読んでほしい
本書に興味を持った時点であなたはそうとう「かしこい」方でしょう。読まなくてもこの本にある半分以上はすでに実践されているかもしれません。
そうであっても、私は「かしこい」方にこそ本書を読んでもらいたいと思っています。
というのも、日本人を見る限り、かしこい人たちが自分の資金管理については「え?」という行動をとることがしばしばあるからです。
お金に関する???な行動
たとえば、貯えが数百万円あり、十年程度の運用期間があるのに、そのすべてをゼロ金利に等しい銀行預金だけで運用している人。がん保険、ペット保険と保険契約は複数持っているが、投資は一切しない人。逆に、金銭的な余裕があるわけでもないのに、為替の方向性を当てるゲームのようなFX証拠金取引を積極的にする人。余裕資金の大半で自社株を買い、塩漬けにしている人。
仕事や家庭では常識的な判断をしている方たちが、お金のこととなると極めてずさんでかつ無頓着な行動をとるのには驚かされます。
私は投資運用の業界に長く在籍し、投資信託の組成などを担当してきました。一般の方にとっては、私たち金融のプロが当たり前と思っていることが、まったく当たり前ではないことに気づいてしんどくなることがあります。
SNS等で自分の経験則にのみ基づいて発信する投資ブロガーのコメントは人気があるのに、金融業界の監督を行う金融庁や公的年金を運用するGPIFなど、正統派の発信はそれほど注目されないのも驚きです。
「手を切るのが怖いので包丁を持たない」
日本人の多くは元本を減らすリスクを極端に怖れます。平均的な成人の多くが「私は何もわからないので」とNISAやイデコすらやりませんし、会社の確定拠出型年金では元本確保型にしか資産を振り向けません。
しかしそれは「手を切るのが怖いので包丁を持たない」くらい極端な行動です。お金は肉体と同じで、炭水化物だけとっていても健全に成長はしません。一切運動をしない肉体が衰えていくように、リスクを一切取らない資産は先細りになっていくのです。
かといってバンジージャンプのような「チャンスに賭ける」「相場を当てる」を一般人に求めるのは、スポーツクラブでオリンピック選手向けのプログラムを勧めるようなもので、大きな怪我のもとです。
オリンピック選手になる必要はない
しかし書店で売られている投資指南本の多くは「あなたもオリンピック選手になれる」的な内容で煽って売れることを目指しています。こうした指南本の多くが投資運用の専門職からみれば「いかさま」「時代遅れ」と思われるような内容にもかかわらず、書店に平積みにされ、そこそこ売れているようなのも私には衝撃です。
お金の取り扱いにおいて、一般人がオリンピック選手を目指す必要はありません。健全な肉体を維持し、65歳を超えても電車の中で立っていられる筋肉を作る。つまりお金において「人に席を譲れる自分」を作ることを目標にしましょう。ウルトラCは不要。柔らかく長持ちする骨と筋肉で歩行を続けられたらそれで十分なのです。
この本は地味な本です
本書には「これをやれば必ず儲かる」といった目を引くことは一切書かれていません。むしろ、あなたが見慣れてきた投資関係の書籍やブログの前提をひっくり返す、まったく面白味のないことが書かれています。
お金の健康には、肉体の健康と同じ、ごく平凡なつまらないことの繰り返しが大事なのです。そして、毎日、毎月、毎年、どんな選択を行うかで人生が180度変わってしまうものです。一度だけ、その基本を押さえておいてもいいのではないでしょうか。
読んだ後、どうするかはあなた次第です。
お金の健康寿命を延ばす=社会貢献
日本は少子高齢化が進み「稼ぐ人」が減り「もらう人」が増える構造になっています。この社会で自分の老後を国や社会に百パーセント支えてもらうことを期待するのは、ムシが良すぎるだけではなく、若い世代に大きな出費を強いることになります。
また、高齢者が増える中で高齢者向けの社会保障を優先すれば、障がい者やシングルマザー、ヤングケアラーや勤労学生など、より助けを必要とする人に十分なお金が回らなくなる懸念もあります。公立ホールや美術館などの文化を税金で支えていくことも次第に難しくなります。そんな中で「65歳を過ぎても席を譲れる自分」を作ることは、最高の社会貢献となります。
経済的な意味で「席を譲られる」より「譲る」高齢者が増えれば、より助けを必要とする人たちを助け、日本の芸術や文化を守り育てていくことができ、豊かな社会を維持・発展させることができるでしょう。
詐欺や高コスト商品への防衛にも
また、読者の一部でもプロにとっての「常識」という武器を手にしていただければ、悪徳業者のカモや、金融詐欺の犠牲になる方が減るでしょう。悪徳業者だけでなく、適法であっても顧客を食い物にする高コストで低効率の商品を淘汰することも期待できます。
それがこの本の狙いであり、私の希望です。わかりやすい言葉や図、絵などで「金融と投資の常識」を説明するよう努力しますので、ぜひ最後までお付き合いください。(この章終わり)