見出し画像

「汝、星のごとく」⭐︎作家•凪良ゆうさんに会う

わたしは本屋さんが大好きです。
少し時間があればふらふらと本屋さんか図書館に
行ってしまいます。
そこでお気に入りの本と出会える喜びと言ったら
大好きなカフェでお気に入りのパフェを食べる喜びに匹敵すると言ったら怒られるでしょうか。


自分の人生は一回限りですが、本に登場する住人は
ありとあらゆる人生を送っているあまたの人たちで、
本を読むことで本の住人の人生を追体験させてもらえているような不思議な機会をもらえます。

自分の人生とは違う、たくさんの人生を垣間見ること。それは作家さんの壮絶な想像力と文才に支えられていることでしょうけれど、わたしは今日も本を読んでいます。

本屋大賞ってなに?

書店では、いつも大きなポップで描かれた「本屋大賞」というコーナーがあって今年の大賞受賞作や
ノミネート作が賑やかに並べられています。
書店の中での一番のホットコーナーです。

皆さんは、このよく見かける『本屋大賞』って
どういうものかご存知ですか?
少しだけご紹介させてください。

書店員の投票だけで選ばれる賞です。
「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。 また「本屋大賞」は発掘部門も設けます。この「発掘部門」は既刊本市場の活性化を狙ったもので、過去に出版された本のなかで、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと書店員が思った本を選びます。

本屋大賞

書店にお勤めされている、本が大好きなスタッフさんたちが自分でも読んで「売りたい!」「面白い!」「読んでほしい!」「ぜひお勧めしたい!」と、えらい作家さんたちが選ぶ直木賞や芥川賞ではなく、日々働きながら本に触れている書店員さんたちが、押し上げるようにお勧めする本なのですね。

ほんとうにお勧めしたい本として、大賞を2回重ねて取ることが難しいと言われている本屋大賞を2度取った作家さんが今までにおふたりいるそうです。

ひとりは恩田陸さん。
もうひとりは凪良ゆうさん。
今、熱い視線を注がれている作家のひとりである
凪良ゆうさんにお会いできる機会があって行ってきました。
と言っても地方の小さな街の図書館が主催してくださったトークイベントでした。

凪良ゆうさんと作品『汝、星のごとく』

最近は図書館も本屋大賞に刺激されたのか、
司書さんおすすめの本のセレクトコーナーなどがあったり、売れっ子作家さんをこうやって呼んでくださったり、
昔と違ってどうやったら本好きと素敵な本とを結びつけられるのかと、いろんな催しを企画してくださっているので本好きに取っては、本屋さんも図書館も熱いなぁと思います。
本好きは、放っておいても読みますが、文字をひたすら追う読書よりも楽しいことはたくさんあります。
全国の本屋さんが減少している今の世の中に危機感があるのかも知れません。

そんなわけで作家の凪良ゆうさんの
お話しを聞きに講演会に行ってきました。

凪良さん曰く、にこにこされながら「大御所でもないわたしごときでは講演会などおこがましく、二時間近く場が持ちません」とおっしゃって2023年度本屋大賞「汝、星のごとく」の編集担当した小説現代の編集長の河北さんと共に掛け合いながらの楽しいトークイベントになりました。

「汝、星のごとく」は、読まれた方はご存知かもしれませんが、小説の舞台が愛媛の今治で瀬戸内が舞台になっています。この今治が実は編集者の河北さんの故郷であって、実際に四国まで凪良さんは取材に行かれたそうです。

ストーリー

本では四国の美しい四季や自然が美しく書きあげられていましたが、鋭く人間を見つめる凪良さんの書く小説は、そこでの狭い人間関係による閉塞感なども
しっかり書かれてあって、実際にそこで育つと言うことは、良いことであろうと悪いことであろうと
全ての自分の来し方が世間に筒抜け状態で暮らしていくってことなんだろうなと思いました。

主人公は、高校生の10代から始まる男女ふたりで
彼らが30代になるまでを追っていきます。

10代の彼らは、ふたりとも破綻した家庭で必死に
親を支えている子供たちでした。

女子高校生の暁海の家は父親が俗にいう浮気が本気になって母親の待つ家に帰って来なくなり、専業主婦だった母親は、精神的な支えと経済的な支えの両方をいっぺんに失って心が破綻して鬱病を発症し、ひとりっ子である暁海に依存します。
暁海は恋も未来も諦めざるを得ないヤングケアラーになって壊れたお母さんを支えたいと願いながらも、
大きな足枷とも感じて自分の自立も模索し続けている女の子です。

もう一方の男子高校生である櫂は京都から今治に移住してきた転入生。櫂の親は母ひとり、子ひとりです。
母親は、スナックをしながら彼を育てています。
でも櫂たちが今治に来たきっかけは、
櫂の母親が好きになった男性を追っかけて京都から
今治にまでやってきているのです。
櫂の母親はひとりでは生きていけないタイプで、
常に好きな恋人がいないとだめな男性に依存する女性。
櫂のことも頼っているけれど基本は恋人が全てです。
櫂が小学生のころお母さんは櫂を家にひとりで残して
恋人を追って出奔し、数ヶ月1人取り残された櫂は、
家にあった残飯や学校給食でなんとか生き延びた過去があります。
子供の頃から誰にも頼れず、自分を捨てた母親を心の底では許せずにいながら、恋人に捨てられることを繰り返す母親を不憫に思い、恋人に依存する母親を惨めに思いながらも優しい彼は母の平穏も祈らずにはいられないのです。

互いの親に振り回され続けている高校生のふたりは、
ふとしたきっかけで親たちの所業を知ることとなって、大きく心に空いている空洞を埋めあっているうちに気がつくと初めての恋をしていたのでした。

やがて高校を出た彼らは、櫂は漫画原作者としてデビューするために東京に出ていき、櫂を追いかけたいと願いながら暁海は母親を捨てることが出来ずにふたりは遠距離恋愛を始めます。
だんだんとおとなになっていって、環境が激変していく櫂とずっと四国の今治で母親に依存されながら
自身の成長を感じられずに葛藤し続けていく暁海。
ふたりの関係は、どうなっていくのでしょうか。

思ったこと

講演会では、トークイベントのあとでサイン会もあって、購入していた手持ちの本を持っていくと気軽く
声をかけてくださってサインもしてもらえました。

今までにたくさんの本に出会ってきましたが、
その本を書いた作家さんを目の前にすることは初めての経験でした。

わたしはその時には自分が持っていった本をまだ読んではいなかったのですが、本を書くにあたっての裏話などをいろいろ聞いているとその本の背景や作家さんの人となりが少し知れたようで、これから読む本がより楽しみになりました。

本もCDも、こうやってファンに会うことで
そのものがより身近に感じることになるんだと
あらためて思ったことでした。

凪良さんの書く本は、展開が面白くて、
一気に読みたくなってしまうもので、
主人公ふたりの想いは、それぞれに純粋で互いに惹かれ続けながらもボタンをかけちがってしまったように離れてしまいましたが、どんなに離れていても互いの存在は心のなかで変わらずにずっとあるのでした。

それにしても確かに櫂と暁海のそれぞれの母親のような親は、確かに存在しているけれど、
もっとしっかりしてよ。
子供を犠牲にして生きてるんじゃないよ。と、
シロクマも子育てを3年したら親から自立させて、
それぞれの人生(シロクマ生?)を生きていくんだよと思ってしまいました。
人間の親の不甲斐なさにスンとなってしまい、
だから物語りが生まれるのですが、この本による人生体験は、歯痒かったです。
続篇があるそうなのでもう少し、彼らの人生を追っていこうと思います。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?