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ダフトクラフトが目指す「みんなのXR屋さん」のカタチ | 私と社長 #3

note担当の新入社員:オオタが、ダフトクラフトの社長:花島にダフトクラフトの「コア」についてインタビューをする新企画『私と社長』。3週連続でお届けしていきます。

最終週の今回は、ダフトクラフトをXR業界から俯瞰して見た時に、どのような地点に立っているのか?そしてダフトクラフトは今のXR業界をどう見ているのか?について語ります。

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2021年のXR市場

(オオタ)今回は、花島さんはXR業界で働く専門家として、XR市場をどう見ているのか?という質問から始めたいと思います。まずは2015年から2020年の5年間を振り返って、印象的だったことを教えてください。

(花島)まず2015年ですね。その頃僕はスマホゲームに携わっていて、ある時ゲーム業界人の交流会みたいなのに参加する機会がありました。その場にあったのがOculus DK2っていう開発者向けに2014年に発売されたVR HMDで、それでVRジェットコースターアプリを体験したんですよ。そこでなんと、生まれて初めて腰を抜かしたんですよ(笑)本当に驚きの体験で、身体感覚にここまで影響を与える力ってスマホゲームにはないので、これはすごいものがきたと。

その後2016年に、開発者向けではなく一般向けに販売されたのがHTC ViveとOculus Riftで、このことが所以で2016年はVR元年と呼ばれたりしてますね。僕個人は2017年にVRの開発をしている会社に転職することになって、作る側としてVRに関わることになりました。
2017年ごろは、4KテレビやRetinaディスプレイなんかの高解像度ディスプレイがだいぶ浸透してる頃だったんだけど、VR HMDの解像度はその頃まだ低かったから、いろいろ批判する人がいましたね。でもゲーム史的にいえば、どんなゲームハードウェアも初期は解像度低いもの。いずれ必ず解決される課題だと僕はわかっていました。

2017~18年は、いろんなハードウェアが出たり消えたりしてた。だから、ハードの発売に合わせて行動するということはなく、XRの体験そのものをどう作ろうかって、「考え方を準備しておく」みたいな期間でしたね。あと、いろんな会社さんが実験的なことやってたフェーズでもあって、日々出てくる試行錯誤の情報がすごい面白かったなと思います。当時はまだ何に使えるか本当にわからなかったから、手探りして→R&Dして→現場に出してみる って順番をしっかり踏みながら、着実に前に進めてきた歴史だったなと。

(オオタ)今でこそ「9兆円」とか、だいぶ大きい数字で市場予測が出る時代になりましたが、2016年あたりにはどういう予測が出てたんですか?

(花島)まぁずっと同じくらいの予測が出てましたけど、そこにユーザーの認知がついてきてないっていう課題がありましたね。認知が早かった一部の人たちも、ずっと「くるぞくるぞ〜」って言い続けてた感じだった。でもやっぱり、そこをずっと信じてコツコツやってきた人たちが今活躍していますね。

(オオタ)Quest2が2020年に発売されて、ユーザー認知の拡大もようやく追いついてきたわけですね。それを踏まえて、この市場予測値はわりと信憑性があるというか、期待できると思いますか?

(花島)そうですね。なんかこの前家電量販店をフラっと歩いてたら、Quest2に紐かけてぶらぶら提げながら歩いてる人を見たんですよ。家電量販店でサクッと買える時代になってきたってのはなんかいいなと思いました。スマホだったらみんなが電車の中やカフェで使ってるところを目にするけど、VRユーザーとの接点って少ないじゃないですか。VRって基本的に家で体験するものだし。だから家電量販店でそのシーンを目撃できたのはなんか嬉しかった。
今のところQuest2の出荷は600万台を超えたとか、ゲームは1億円以上売り上げているタイトルが数十本あるっていう話も聞いてて、結構賑わってるんじゃないかと思います。

(オオタ)なるほど。では続いて、2021年のXR市場の印象についても教えてください。

(花島)2021年はまずあれです。前半は、欲しくても買えない人が多かった。コロナ禍で流通や製造が止まってしまった影響が出てましたよね。この頃は「XRにすごく興味があるんです」っていうお客さんも実機を入手することができなかったので、代わりに僕らの機材を実際に触らせてあげたりしたかったのですが、そもそも会うこと自体憚られるという状況だったのが辛かったですね。

でも奇跡的に、2021年春にXR総合展に出展できましたね。緊急事態宣言が明けた一瞬の隙に開催されたんだけど、コロナをものともせず、たくさんの人が来場してた。僕らもいろんな人に直接会えて、色々話ができて嬉しかったですね。

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2021年4月14日~16日 第1回XR総合展 出展時の様子

今年の展示会は、お客さんが話す内容がこれまでと比べてすごく変化したなと感じてて。2020年以前のXR展示会は、大体のお客さんは冷やかしみたいな感じで、基本的には「何に使えるの?」「どんなメリットがあるの?」って質問攻め。で、最終的には「まだ先の話だね〜」って言って帰っていく、ほんとにそんなお客さんばっかりだった。だけど今年は、そういうお客さんにはまず会わなかったですね。

そのあと、また緊急事態宣言に入って、自由に出歩けないフェーズに入りましたよね。5月ごろから夏が明けるまで。だからいろいろ話はもらっても結局潰れちゃったりして、どうしても空白期間はあったかなあと。ただそれはうちだけじゃなく、どこの開発会社も同じで。みんなもう淡々と仕込みを続けていたんでしょうね。9月以降、秋になっていっぱいいろんなリリースが出てきたというところでやっぱりみんな仕込んでたんだなとわかりました。新しいハードウェアの発表であったりとか、FacebookがHorizonを発表したりとか。最近だと社名がMetaに変わったり。ものすごく慌ただしくこの9月10月11月って年の後半、凝縮されているんじゃないかと思います。

秋冬になってからはMetaに全部持ってかれてる感があって、流れは今「XR」じゃなく「メタバース」になってますよね。ただこの火がついて一気に燃え上がる流れはそれこそ2016年のVR元年と呼ばれた年にもあって、その後少しずつ落ち着いた。そう考えると、2022年以降は、メタバースに関しても一旦落ち着いてどんなことできるか?どんなことがしたいか?って色々考えるフェーズが来るんじゃないかなと思います。もちろん燃え上がったまま持続できるとさらにいいですけどね。

(オオタ)次のフェーズでいくと、私としてはまたハードの波が来てくれると嬉しいですね。
この前サンリオのVRフェスが開催されてて、遊びに行ったんです。チケットはPCVR向けのものとスマホ・スタンドアローンVR向けのものが2種類あって、私はQuest 2しか持ってないのでスタンドアローンVR向けのチケットを買ったんです。

いざ会場に入って他の参加者に手を振ってみたら、自分の手、というかコントローラーの位置は小さな点で表示されていて、アバターの手は動かないようになっていたり、会場は確かに3DのVR空間になっているんだけど、肝心のアーティストのライブパフォーマンスは2D映像のライブビューイング形式になっていたりと「軽量化」というテーマをひしひしと感じる仕上がりになっていまして。
スタンドアローンVRの限界を感じるとともに、人を感動させる・人の心を掴むレベルのVR体験を作るとなると、結局まだハイエンドなゲーミングPCが必要になるのかなと思いました。だから、PCVRじゃないとできなかった体験がVR単体でできるようになる、ゴリゴリの処理機能を持ったスタンドアローンVRが今後出てきたら嬉しいなと思います。

(花島)やっぱり、スマホ→スタンドアローンVR→PCVRていう、段階があるかなと思うんですよね。主催者側からすると、ハードによってユーザーが漏れてしまうのは避けたい。サンリオVRフェスで言うとスマホユーザーさんを取っておきたかったわけですよね。今、誰もが所持していて誰もがインターネット接続しているハードウェアってなんですか?って考えたら、それはもうスマートフォンなわけだし。主催者側がそこを捨てるってことは多分できないし、スマホ版はある意味「基準値」として楽しくて快適な体験作りが必要で、それはそれで難しかったりする。だけど理想としては、スマホ版の参加者が「次はVRで来よう」「次はアバター買おう」とか、次に期待しちゃうような仕組みにまでなっているといいですよね。

(オオタ)そうですね。スマホから参加した人はもしかしたらVRで見てみたかったなと思ってるかも。私も妹にPCVR版を見せてもらった時は「ゲーミングPC欲しいな〜」と思いましたし。PCVR版は、一緒にライブを見てる参加者さんたちの面白さが全然違うんですよ。
サンリオキャラクターのライブを最前で待っていたら隣に子どもがきて、マイクミュートのやり方がわかっていないのか「ねえママー!」みたいな声が聞こえてきたり、友達とお喋りしながら遠巻きに見ている人がいたり、むしろサンリオキャラクターよりあなたの方が目立ってますけど?っていうアイドルみたいなアバターのユーザーがいたり。

(花島)やっぱりこういうのってどこまで行っても自分と他者の違いをどうつけるか、そしてそれをどう見せるかなんだよね。これはもう本当モバゲー・GREE・アメーバピグの時代からずっと変わらない。どのプラットフォームでも初期アバターはシンプルに始まって、誰も持ってないあのアイテムを着せたいとか、あの人が着てるアイテムすごくかっこいいけどどこのだろうとか、そうやって楽しむわけです。
「私はこういう人です」「私はこれが好きです」「ここではこういう自分になりたい」っていう自己表現や自己実現ができる場所になっていることが今後メタバースなんかでも重要なんだと思います。

(オオタ)なるほど。それを聞いて今思い出したのが、FacebookがHorizon workroomsを発表したタイミングで、Questでアバターが作れるようになりましたよね。WorkroomsをきっかけにVR用の3Dアバターを初めて作る人だったら、提示された顔パーツの選択肢を見て「リアルの自分に似せたアバターを作ればいいんだな」って認識すると思うんですけど、Workroomsより先にVRChatでウニになれることを知ってしまってる私は、「せっかくVRなのにまた私みたいな人にならなきゃいけないのか」って、ちょっと気分が下がっていたなぁと思います。

(花島)それはやっぱりFacebookが実名にこだわったプラットフォームだからだよね。メタバースっていっても、プラットフォームの型は別に変えてなくて、自分たちの文脈の上にメタバースを乗せる感じ。
でもさ、異世界に行ったらまずは自分が予想してない姿に変換されるもんじゃないのかなって思っちゃうんだよね。日本のアニメ文化で育ったからそう思うだけかもだけど。全然違う世界に来たのに自分は自分のままって面白くないなって思う。
あとはメタバースは「なりたい自分になれる」ってよく言うけど、実際現実世界でもなりたい自分になれてる人っているのかなって思ったりしますね。本当は何をどんな仕事をしたいんだっけとかさ、どういうこと好きだっけ、って、自分の理想自体が定まってなかったり、好きなことがわかってなかったりするじゃないですか。
そうなるとメタバース空間で、私ってこういうの好きだったんだ、とか、僕って実は結構社交的なんじゃないか?とか「自分も知らなかった自分を知る」みたいな要素もあってもいいんじゃないかなあと思う。

(オオタ)そういう花島さんの願望みたいなところも含めて、今後メタバース業界に期待することはなんでしょう?

(花島)まあまずは現実以上の多様性。さっき話した単なる見た目や身に着けるものだけじゃなく、空中に浮かべるかどうかとかもね。でもそこに至るまでの段階として、「これが着たい」「これが欲しい」とユーザーに思わせる、魅力のあるものをどんどん提示していってもらうところに期待ですね。どんな世界でも「欲しいものがある」ってのはユーザーが第一歩を踏み出すきっかけになる。UIだったり決済環境は後からいくらでも整うものなので、魅力を持った「モノ」や「体験」をたくさん提示していってもらいたいです。

B向けXRの理由

(オオタ)さっきまではアバターやVRフェスなどC向けなXRの側面について話してきましたが、ダフトが作っているXRプロダクトは、実はB向けの作業効率化システムが多いんですよね。花島さんはゲーム業界出身なのに、B向けXRをやっているのはなぜなんですか?また、いつ頃決めたことなんでしょう?

(花島)起業した決め手と、ゲームじゃなくB向けでやることになった決め手が被っている部分があるので、合わせて話しますね。

まず大事なところでいうと、競争の熾烈化によって過酷になっていたゲーム制作の現場に、「このまま居続けられるのか?」と疑問を感じていたということがありました。
それで僕は、「もっとじっくり時間をかけてモノづくりに向き合える環境に行こう!」と決めて、2017年くらいに別のゲーム会社に転職して、そこでは新規事業として始まるVR開発の事業責任者を担当することになりました。その会社にはいろんな企業さんからVR開発に関する相談が来てて、出張してVR体験会をやりに行くっていう機会がいくつかあったんです。そしたら、ゲーム業界で働いてるうちは絶対話す機会ないだろうっていういろんな業種・業界の企業さんとお話ができて。そこでVRに対して「いろんな産業や企業との触媒になれる技術なんだな」っていう魅力を感じたんですよね。僕は基本的に新しいものや変化していくことが好きだし喜びを感じるので、そこでなんか「合うな」って感じていました。

で、後にそこで創業メンバーと出会って、産業向けにVRのソフトウェア開発をしていました。そこで驚いたのが、ゲーム開発的な「気持ちのいいインタラクション」や「わかりやすいUI/UX」が産業向けソフトウェアには全く存在していなくて、どれも必要最低限の無味乾燥なものばかりだったことなんです。自分たちにとって当たり前の実装をしているだけなのに、産業領域のお客様が喜んでくれているのが強く実感できていて、もっとこの領域に自分たちの力を貢献させていくべきなんじゃないかってチームのみんなで話していたんです。
ですがゲーム会社にいるとやっぱり「数年先に価値を生み出すためのチャレンジ」って後回しにされてしまいがちで、自分らがどんなに「この領域にはこういう価値があります」「この計画で目標売り上げ達成できます」っていうのを提示しても蹴られる時は蹴られちゃうんです。それで「最終決裁権」って大事だなぁと思って。
つまり、ゲーム作りのマインドはゲーム以外を作るところですごい役に立つやんっていう考えと、それに同意してくれる仲間がすでに確立していたので、最終的に必要だった決裁権を手に入れるために独立して、ダフトクラフトができたっていう感じです。

(オオタ)なるほど。今2018年に創業してから4年目の年を過ごしているわけですが、4年を振り返ってみてどう感じていますか?

(花島)まずは素朴な感想にはなっちゃうんですけど、やっぱ創業からいろんな会社とコラボレーションさせてもらえて楽しかったですよ。僕らがしっかり最後までものを作り切るっていうところで信頼してくれているパートナーさんもいるし、そのために色々無茶したりはしてるんだけども、そこも含めて認めてもらえたりしているのでよかったなと。
ただ、この4年間ずっと壁になっていたのは予算と期間でした。POC案件だとどうしてもそのふたつが厳しくなってしまう。「予算は出すから期間は1ヶ月で」とか「期間はゆるくていいけどこの予算で」っていう何かしらの制限がついてきてしまうので、作りたいものを存分に作るっていうことはほぼできなくて、いつも実装には優先順位をつけたり、時にはこれは諦めましょうっていうのを決めたりしながら作ってきましたね。理想としては、XRでユーザーに感動体験を届けたいし、もっともっとXRの可能性を感じてもらいたい。そのためにも開発には十分な余裕が欲しい。だけど現実としては「期間の中でできる限り頑張ったんですね」っていう感想を超えるのはすごく難しいっていうのが、僕らにとってはジレンマなわけです。きっとSANRIO Virtual Fesの製作陣も同じジレンマを感じていたと思いますよ。

ただこれからはXRのPOC時代は終わると言われていて、本導入に参画する業界・企業が増えていきます。うちもこれから1件、建設現場で本導入される長期のシステム開発案件が控えているから、ジレンマの言い訳が利かないときこそ力をしっかり見せていくこと、目の前にあるプロジェクトをしっかり成功させるっていうことを着実にやっていきたいなと思っています。

みんなのXR屋さん


(オオタ)ここまでをまとめると、ダフトクラフトはゲーム業界で培った開発手法や技術を持っていて、テクノロジーの変遷やそれに連携する経済・市場の変化は、ゲーム史的な視点から見ているところがあると。そしてそれらのスキルがゲーム以外の産業で役立つのではないか?と感じていて、今はB向けのXRシステムを開発することが多い、といったところですね。

もうひとつダフトという会社を理解する上で大事になると思う点が、ダフトがSNSや展示会、プレゼン資料などの中で自分たちのことを名乗る時にしばしば「XRの駆け込み寺」という言葉を使う点だと思います。このワードにはどんな思いがこもっているのでしょう?

(花島)「駆け込み寺」って使ってますね。今はもういないんですが、元いたメンバーの子がつけてくれた言葉でした。
僕が創業時からずっと頭の中で意識しているのは、「働く上で、いつでも話しかけてもいいよって言ってくれるマネージャーと、仕事はバリバリできるけど話しかけんなオーラがすごいマネージャーだったら、絶対話しかけやすいマネージャーの方がいいよな」っていうイメージ。
社会人やったことある人だったら多分誰もがイメージできると思うんですけど、「どんなに悪い報告だとしても、一旦自分の作業の手を止めて顔をこちらの方に向けて、1回ちゃんと聞いてくれる」のってすごい安心できるんですよね。だから単にその「マネージャー」の部分を「会社」に置き換えて、いつでも話しかけやすい会社でいたいなぁと思うわけです。
逆に話しかけんなオーラがすごい会社っていうのは、例えば何か相談事を話しても「回答は機密保持契約を締結した後にさせていただきます」「問題の定義が出来上がってから出直してきてください」ってなって、話が次に進まないじゃないですか。でもそれはそれでプロフェッショナルなイメージで、必ずしも悪いイメージになるわけではなくて。ただダフトのブランディングをどっちにしていこうか、って考えた時に、テクノロジーのとっつきにくい部分をわかりやすく噛み砕いて教えてあげられる、話しかけやすい方の会社にしたいと思いましたね。

(オオタ)うーん。とはいえ、私たちにとっても「問題の定義ができているお客さん」の方がありがたかったりしません?あれもこれもわからない状態で来られても、私たちが助けてあげられる範囲には限界がありますし……。

(花島)それはそう。本当の駆け込み寺みたいに誰でも彼でも受け入れられるわけじゃないし、あとは聞くだけ聞いてどっか行かれちゃうってのも正直困っちゃうところではあります。だけど、だからといって、XR開発への全ての門戸がいろんな条件によって閉ざされているのもどうなのかなと思うんです。むかし大手企業に勤めてる飲み仲間が言ってたのが、「予算が二桁億円いかないお客さんはまず話もしません」っていうことで、どんなにやりたいことや計画が決まってても予算が足りてなければそこで足切りされることがあるんですよ。
それを聞いて、「これやってみたい」「これについて理解したい」って関心を持って来てくれている人を門前払いすることはできるだけしたくないなと思ったんです。

(オオタ)それはつらい。

(花島)そう。でもこれは「お客さん」と「ダフト」を入れ替えても全く同じことが言えて、大手企業にアプローチしよう思ったら、相手に合わせて自分のサイズも大きく見せる必要があったりするんですよね。ダフトも創業時は「ちょっと自分達を良く見せる」べきかどうか考えたりしたんですけど、ダフトはIPOを目指してるわけでもないし、どこかに株を渡しているわけでもない。無理して自分らを大きく見せようとするよりも自分らだけの良さを尖らせていく方がいいし、そうしてきてよかったんじゃないかなと思ってます。

話は戻って、予算も技術も決まってません、だけどわからないものに対して「知りたい」「試してみたい」って思ってるんですっていう人がいたら、課題をまずちゃんと聞いて、最適なソリューションをわかりやすく伝えてあげたいんですよね。なんなら、たとえ結果的にXRじゃなくてもよかったわ〜ってなったとしても、そのことすらちゃんと伝えてあげようねっていうのがダフトの方針なのかなと思います。

(オオタ)そうなると、最近少しリニューアルしたダフトのビジョンにとても近い話になりますね。1人1人が自分だけの感性を持って、そこからどんどん創意工夫が生まれていく社会にしたいっていう。そういう社会を作っていきたいから、「私これが気になるんです」「私これを試してみたいんです」っていう、感性にしたがって何かを創り出そうとしている人が目の前に現れた時、できる限り無条件に受け入れたいと思っている、という繋がりですね。

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ダフトクラフトのミッション・ビジョン・クレド(行動指針)

(花島)そういうふうに繋がりますね。門戸を開けておきたいっていうところに関してはそんな感じ。
もう一個その「駆け込み寺」っていうところで気にしているのは、むしろ技術が一般に広がってからのところ。スマホなんかもそうだったけど、初期はテックギークが持つものだったのが、いろんな大手企業が参入していくことによって急激に一般に広がりましたよね。そうなると必ず「置いてけぼりになる人」が発生すると思っていて、その人たちが気軽に「教えてよ!」って聞きにこれる場所になりたいなと思ってたりします。

僕がすごいなと思ったのは、メルカリさんが百貨店で場所を借りて、机と椅子を並べて、メルカリの梱包の仕方とか出品の仕方をレクチャーするってやつ。「スマホで商品の写真を撮ってみましょう」っていうところから順番に教えてくれるんですよね。たまたま通りかかったら、おばあちゃんがレクチャーを聞きながら、スマホをいろいろ使いながら、実践してみてるわけです。自分たちのやってるサービスの魅力とかやり方をこんなに丁寧に相手目線で教えてくれるIT企業、他にあるか?って。素晴らしいなと思いました。

昔は町の電気屋さんがあって、電気にまつわるものはとりあえずそこに相談しに行ったら色々教えてもらえた。そういう存在って今では少なくなってしまったけど、僕が近所で出かける先々でちょろっとiPhoneのLiDARフォトグラメトリを見せたりするたびに、「花島さんこれ見てもらえる?」「花島さん詳しいんやろ!」って、顔合わせるたびにいろんなこと教えてもらいたがる人に出会う。だからまたそういう町の電気屋さんみたいな、あったかくて親近感があって、なんでも相談できるXR屋さんになれたらいいんじゃないかなと思うんです。

(オオタ)XRは今でこそまだ “未来的なもの”として認識されている部分が多いですが、5年・10年以内にはほぼ確実に今日のスマートフォンのような “当たり前のもの” になる技術だと思います。2021年の今日にも、2031年の未来にも、皆さんの「XRで困ったことがあった時に思い出す会社リスト」の一番トップにダフトクラフトが存在できていたらいいですね。

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今回はダフトクラフトをXR業界全体から俯瞰し、どの様な地点に立っているのか?その地点からどのように価値をもたらしていきたいのか?について語りました。

「私と社長」インタビュー企画は今回で完結です。
Stay Smallという経営方針、チームワークのリアル、XR業界での立ち位置という3つのテーマからダフトクラフトのことをより良く知っていただけたら幸いです!

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