11.11の狂騒曲に変調、中国「独身の日」セールに景気減速の影
中国の「独身の日」、通称「光棍節(こうこんせつ)」は、毎年11月11日に開催される世界最大級のショッピングイベントです。
この日は、単なる独身者の祝日から、グローバル経済に影響を与える一大商戦へと進化を遂げましたが、今年はかなりこれまでとは様相が異なるようです。
独身の日の起源と進化
1990年代、中国の大学生たちが始めた独身者パーティーが、この記念日の起源とされています。11月11日(11.11)の日付が、独身(シングル)を象徴する「1」を4つ並べることから選ばれました。
当初は、独身者同士の出会いの場や自分へのご褒美、独身者へプレゼントを想定するなどで買い物をする日として認識されていましたが、2009年にアリババグループがこの日を商機と捉え、大規模なオンラインセールを開始したことで、その様相は一変しました。
これは、以下に記載する11月開催の大規模セール群の中国版と言っても過言ではありません。
アメリカの「ブラックフライデー」:感謝祭の翌日に行われる大規模セール。
アメリカの「サイバーマンデー」:ブラックフライデーに続くオンラインショッピングの日。
インドの「ディワリ」:光の祭りとして知られるが、近年は大規模なショッピングシーズンとしても注目されている。
成長の歴史
中国ブランドの確立
独身の日セールでは、中国ブランドの躍進が目立ちます。家電部門ではミデアとハイアールが上位を占め、化粧品や育児用品でも国産ブランドが人気を集めています。
グローバル化して海外展開
独身の日の影響は中国国内にとどまりません。日本をはじめ、シンガポール、タイなど他のアジア諸国・地域でも独身の日商戦が行われるようになりました。日本では2015年にソフトバンクグループが「いい買物の日」として導入しています。
一気に立ち上がり、ライブコマースの急成長を牽引
独身の日の経済効果は驚異的です。2018年には、アリババグループだけで約3兆5000億円の売上を記録しました。2017年には、セール開始からわずか2分で約1,130億円の取引が成立し、2時間で総取引額の約半数を超えるという驚異的なペースで売上が伸びました。
近年、独身の日セールの新たなトレンドとしてライブコマースが注目を集めました。2020年には、アリババの「タオバオライブ」で約3億人が視聴し、取引総額が前年同期比100%増を記録しました。
そして迎えた2024年
中国は経済成長が鈍化し、消費者信頼感が低下しています。特に不動産市場の問題や失業率の上昇が影響し、多くの家庭が支出を抑える傾向にあります。このような背景の中で、独身の日の商戦は例年とは異なる様相を呈しています。
以前のような盛り上がりや「爆買い」の勢いは失われて、消費者は必要最小限の購入に留め、「最安値」をキーワードに慎重な買い物をする傾向が強まっています。
特に若年層の消費意欲の低下が顕著です。かつて「月光族」と呼ばれ、毎月の給料を使い切る傾向にあった中国の若者たちですが、現在は高い失業率に直面しています。16歳から24歳の失業率は17.6%と高止まりしており、これが若者の消費行動に大きく影響しているようです。
課題と展望
信頼性の担保やゴミ問題が課題
急激に市場を拡大し収縮という急激な変化の中、歪みが出ていることが課題となっています。
偽造安売りの横行:一部の販売者が安い物に心惹かれる消費者をターゲットに事前に価格を引き上げておき、セール期間中に引き下げるという偽造安売りを行っています。
物流の混乱:大量廉価の注文が短期間に集中することで、配送システムに大きな負荷がかかり、物流の混乱を引き起こしています
膨大なごみの発生:商品の梱包材による大量のごみが発生し、一方でそこにコストをかけない売るだけ売ったらやりっぱなしの商売が、環境問題の一因となっています
格安ECへの移行
昨今の傾向として、中国系ECでは、2023年7月に日本参入したTemuが躍進し、2024年1月の日本での月間利用者数が1550万人を突破しました。また、SHEINもファッションを中心とするECサイトとして成功し、2023年には世界のショッピングアプリダウンロード数ランキングで首位を獲得しました。
Amazonも中国発格安ECの台頭によるシェア低下を危惧し、自社の強みである配送ネットワークや品質管理を活かしつつ、低価格ブランドの拡充など価格競争力の向上にも注力しています。
今後の展開
消費者は景気減速に伴って高額商品や贅沢品から、より実用的でコストパフォーマンスの良い商品へとシフトしています。
特に生活必需品や家庭用品が好まれ、ブランドへの忠誠心よりも価格重視の傾向が強まっています。この変化は、企業がマーケティング戦略を見直す必要性を示唆しています。
また、低価格商品が市場を破壊することを危惧した対応なども一部では報じられています。
構造的な不況となるとちょっとやそっとでどうこうならないとは思いますが、出来れば、この時期は景気よくセールをして年末を迎えるという流れが戻るといいなあと思います。
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軽佻浮薄だがバカではない
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