【俺の日本語ラップ#01】 stillichimiya / Hell Train 【日本語ラップバーまで26日】
どんもどんもー!
僕です、テイクビーツです!
昨日の怒りの記事から、今回は打って変わって音楽についてのお話です!しかもみんな大好き日本語ラップ!
DJの癖に音楽についてほとんど話さないことで有名な僕ですが、今回は日本語ラップについてお話していこうと思います。
なぜかといえば、この5月27日の金曜に福岡は雑餉隈にあるイベントバー『エデン 福岡』様をお借りして『日本語ラップバー』なるイベントを開催するからでございます!
■イベントバー『エデン 福岡』のTwitterはこちら
このイベントは、新旧の日本語ラップを日本語ラップ好きが紹介しながら、あらゆる年代の日本語ラップに触れ、俺の/私の心を支えた日本語ラップやパンチライン、想い出の曲を語らうピースな場であります!
ということで、今回から開催日までの間に出来うる限り僕自身の好きな日本語ラップ曲を数回に分けて、ここで語っていこうと思います。
今回はその第一回でございます。
ということでその記念すべき第一回に紹介する曲はコレ!
『 stillichimiya / Hell Train 』だ!
もう曲の始まりのMr.麿の「次はぁ~終点~、地獄~地獄~、どちらのお客様も二度とは戻れませんのでぇ、ご注意くださいぃ~(ニヤリ)」から最高である!
stillichimiya(スティルイチミヤ)は、山梨県一宮町を中心に活動するラップグループ、彼らの2014年のアルバム『死んだらどうなる』収録の楽曲が今回紹介する『Hell Train』である。
アートワークも最高で、ところどころに入るアイキャッチ的な各ラッパーのカットは横尾忠則のデザインを引用(サンプリング)している。
しかもこのMVのロケ地の一部は青森県は恐山!
恐山と横尾忠則というキーワードが出てくれば、自然と浮かび上がるのは寺山修司であり、彼の歌集・映画『田園に死す』である(横尾は寺山の『書を捨てよ 町へ出よう』の表紙イラストや、当時の唐十郎に代表されるのアングラ演劇のポスター、ビジュアルデザインなどを手掛けていた)。
このMVでは、Hell Trainの車掌を演じているミスター麿氏が、途中でイタコが降霊術をするときの動作を行うが、これこそ東北地方のイタコ文化を描いた『田園に死す』へのオマージュに他ならない。
これだけでもどんだけ情報量があるのやら……といった具合だが、まぁそんなことは知っても知らなくても楽しめるのが、このstillichimiyaワールドである。
人生で絶対に忘れてはならないこと
人間どんな風に生きたって自由だ!
フリーターもニートも、専業主婦もバリキャリ女子も、起業しようが正社員でいようが、それは人それぞれの価値観で勝手に生きればいい。
その人生の中に幸せも後悔もあるだろう、時として苦労も充実も押し寄せてくる。しかし!人生には絶対に忘れちゃいけないことが、ひとつだけある!
それは、我々は絶対に死ぬことである。
誰もが最初から分かっていながらも、みんなが眼を背けたい残酷で不条理な事実=死。
この死についてTell Train、地獄列車というギミックを使ってこうも陽気で、ハイテンションで、面白くてカッコいい、そして聞けば聞くほどに深いリリックで畳みかけてくる日本語ラップがあっただろうか?
この曲、実は仏教ラップである
例えば、この曲のリリックにこんなのがある(※カッコ内はそのリリックのラッパーの名前)。
・地獄に生まれて初めは産声、俺もお前も汚ねぇ悪党――(田我流)
・生命活動、ご苦労、この世はあの世、浮世、常世(とこよ)、すべて地獄の路線上――(MMM / ※常世:永久に変わらない世界、神の領域のこと、主に死後の世界の例え)
・本来、死んでもいい人間など一人もいない、あの世から見ればこの世こそ地獄である――(曲中セリフ/MMM)
曲中でこの地獄列車は、生きている人間をあの世へ運ぶものとして歌われているが、各ラッパーのリリックの中では今まさに自分たちが生きている世界が地獄そのものである、と言ったニュアンスの内容が飛び交う。
これは実はかなり仏教的な価値観の本質を突いている。
日常でもよく目にする「四苦八苦」という言葉があるが、これは仏教に基本概念である。
人生には四つの大きな苦しみがある。
生きること、老いること、病にかかり、必ずいつか死ぬこと。つまり「生老病死」である。
さらにそこに四つの生きる上での苦しみが加わる。
・求不得苦(ぐふとっく)
地位や名誉が手に入らず、物欲や経済的な満足が得られないこと
・怨憎会苦(おんぞうえく)
恨みや憎しみを抱く相手と出会う苦しみ
・愛別離苦(あいべつりく)
家族、友人、愛する人と別れなければならない苦しみ
・五蘊盛苦(ごうんじょうく)
心を思うようにコントロールできずに苦しむこと
我々に生きる世界の全ての八つの苦しみを「四苦八苦」と表現する見事な四文字熟語であるが、まさに言い得て妙と感心しつつ、思い当たる節があり過ぎて、ドンヨリしてくるぜ。
このような人生の苦しみは生涯終わることがなく、死ぬまで続き逃れられない。「それが人生のデフォルト設定、仕様なんですよ~」をお釈迦さまが朗らかな笑顔で仰っています。つまりは「人生はいつまでも思い通りにならない、一切皆苦(いっさいかいく)」なのだと。
それを日本語ラップという形で、畳みかけて僕らの脳内に叩き込んでくる「Hell Train」は人生の苦しみを思い出させると同時に、その地獄の中でも世界を笑い飛ばす気持ちを思い出させてくれる、サイコーな仏教RAPである!
だからこそ今「Hell Train」を聴け!
ここで、もう一度この曲のタイトルを見てほしい。
「"Hell" Train」である。決して "Heaven(天国)" ではない。
ここにいるstillichimiyaのメンバーも、いま現代社会を生きる我々も当たり前だが、みな聖人ではなく、おそらくほとんどの人は愚民のはずで(ヒドい言い方してゴメンね)、この記事を書いている僕も死んだら絶対に地獄行きだと正直思う。
欲深く毎日の生活を送り、その中で些細なトラブルや争いに心血を注ぎ、苦汁を舐め、辛酸を啜りながらも懸命に生きている。だからこその人生であり、その苦しみが分かるからこそ、この曲の描く "地獄" が痛くそして笑えるほど刺さるのだ。
結局、僕らはいつか必ず死ぬ。
それが30年後の老年かもしれないし、来週かもだし、今日この記事を書き終わって外に散歩に出たら、プリウスミサイルの餌食になるかもしれない。そんなことは誰にも分からない。
まさに――
キリキリマイ、現代人、地獄忘れがち。繋がってます!そこの脇道!――(Big Ben)
である。
これまで書いてきたように、この世は明らかに "地獄" である。人生が天国に近いなどと思ったことはほとんどない(そんな"瞬間"はあったが)。
だからこそ、塞ぎ込んではいられないのだ。
そんな暇はないし勿体ない。
そんな気持ちを思わず湧かせくれるこの『Hell Train』を是非とも、あなたの人生の傍に置いて爆聴(ばくちょう)してみてはいかがでしょうか!?
とにかくカワイイstillichimiya
最後に、このstillichimiyaがいかに可愛くて、カッコよくて、イケてるオジサンたちなのかを語りたい。
といっても文を綴るよりも先に見て、感じてほしい(書く側として、それはええんか?とも思うが)!同アルバム『死んだらどうなる』から『ズンドコ節』のMVである。
もうこのメンツ、このドリフオマージュの遊び心である。
(僕もそうだから、あえていうが)いい歳こいたオジサンが集まって、この遊び心たっぷりに曲を作り、ラップし、MVで演じる姿が最高に可愛くて、カッコイイじゃありませんか!
この記事からstillichimiyaへ興味を持たれた方々は、是非とも彼らの拠点である「スタジオ石」Youtubeチャンネルをチェックするべし!
さらに彼らがDJを務めるYBS山梨放送のラジオ番組「困ッタ人たち」も是非!
もうこの30年もの間、経済的にも政治的にも衰退と困窮化が止まらない我が国・日本で、さらにこの2年間のパンデミックで政府への不信感も増すなか(もうずっと不信ですが 汗)、そんな地獄の現代社会の中で、
このまま地獄でどんちゃん騒ぎ――(田我流)
のススメ、人生の楽しみ方を教えてくれる彼らに触れてみては、いかがでしょーか?