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児童生徒によるいじめの認知状況(R5年度)

今回は、児童生徒によるいじめの認知件数等について、文部科学省の行った調査結果に基づいて記載します。


|いじめに関する調査対象

文部科学省の「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査について」の中で「いじめ」について調査を行っている.。

この調査の対象は
国公私立小・中・高・特別支援学校、都道府県教育委員会、 市町村教育委員会
である。

|いじめの認知件数

小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は732,568件(前年度681,948件)であり、前年度から50,620件(7.4%)増加している。児童生徒1,000人当たりの認知件数は57.9件であり前年度の53.3件よりも増加している。

出典:文部科学省調査結果報告書より

H25年度以降の学校別のいじめ認知件数の推移は下図のような状況にある。特に小学校でのいじめが右肩上がりで増加しており、全体のいじめ件数をも引き上げている。
前回、同調査の中で、小学校で暴力行為が増加している旨を記載したが、いじめについても同様の傾向があるのだ!

出典:文部科学省調査結果報告書より

いじめを認知した学校数は30、213校であり前年度の29,842校よりも増加している状況にあり、全学校数に占める割合は83.6%(前年度82.1%)である。

出典:文部科学省調査結果報告書より

学校種別でのいじめを認知した学校数は下図のとおりである。

出典:文部科学省調査結果報告書より

|いじめ解消状況の推移

いじめの現在の状況として「解消しているもの」の割合は77.5%(前年度77.1%)である(下図参照)。

出典:文部科学省調査結果報告書より

|いじめの発見のきっかけ

いじめの発見のきっかけは
・「アンケート調査など学校の取組により発見」50.3%(前年度51.4%)と最も多い
・「本人からの訴え」19.4%(前年度19.2%)
・「当該児童生徒(本人)の保護者からの訴え」12.8%(前年度11.8%)
「学級担任が発見」9.2%(前年度9.6%)
である。

なおいじめられた児童生徒の相談状況は、「学級担任に相談」が81.9%(前年度82.2%)と最も多い。

|いじめの態様

○ 小・中学校及び特別支援学校においては、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」最も多く、続いて「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする」ものが多い。
○  高等学校においては、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が最も多く、続いて「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」が多くなっている。
○  「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる。」の件数は全体で24,678件で、引き続き増加傾向にある。

|いじめの重大事態

○  重大事態の発生件数は、1,306件(前年度919件)。うち、いじめ防止対策推進法第28条第1項第1号に規定するものは648件(前年度445件)であり、同項第2号に規定するものは864件(前年度616件)である。
○  文部科学省では、いじめ防止対策推進法第28条第1項のいじめの重大事態への対応について、学校の設置者及び学校における法、基本方針等に則った適切な調査の実施に資するため、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を平成29年3月に策定し、令和6年8月に改訂を行った。

なお、いじめ防止対策推進法第28条第1項に規定する「重大事態」の発生件数の推移は下図のとおりであるが、いずれも増加してる点は注目すべきである。

出典:文部科学省調査結果報告書より

いじめ重大事態の1,000人当たり発生件数を都道府県別にみると、全国平均は0.10件であるが、最多は鳥取県が0.32件、次いで兵庫県が0.24件となている。
なお最小は、群馬県、福井県、愛媛県がいずれも0.01件になっている。

出典:文部科学省調査結果報告書より

|学校において認知したいじめの件数

いじめの1,000人当たり認知件数は全国平均で57.9件である。
これを都道府県別にみたものが、下図のとおりであり、最多が山形県117.7件、次いで山梨県が102.3件、北海道が101.4件である。
一方最小は、長崎県の17.9件、愛媛県の18.0件と続く。

出典:文部科学省調査結果報告書より

|背景について

調査結果の中で文部科学省は、増加の背景等について次のようなコメントを記載している。

「増加の背景として、いじめ防止対策推進法におけるいじめの定義やいじめの積極的な認知に対する理解が広がったことや、アンケートや教育相談の充実などによる児童生徒に対する見取りの精緻化、SNS等のネット上のいじめの積極的な認知が進んだことなどが考えられる。」

しかし、いじめ防止対策推進法は2013年公布された法律で、すでに10年。
いじめの定義、いじめの認知の理解・・・って?
確かにSNS等のネット上のいじめの増加など、従来にないいじめの手段が増えたとは思うが、小中高いずれでも
「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」
がダントツに多く、かつ増加しているという調査結果を見ると果たしてそうなのでしょうか?

|おわりに

いじめの認知状況の概要は以上のとおりであるが、必要により子細は文部科学省のデータにて確認してください。

今回の調査では「いじめによる重大事態」の発生件数が、いじめ防止対策推進法第28条第1項第1号および2号事案ともに増加している状況あることは特出すべきものだ。

いじめがなか無くならない、むしろ増加していることから、背景等をしっかり分析して学校・家庭等が連携のもとに子供達に安全・安心な学校生活が享受できるようにしていただきたい。

参考資料:
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査:文部科学省

文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査について」
https://www.mext.go.jp/content/20241031-mxt_jidou02-100002753_1_2.pdf