見出し画像

自賠責保険~二つの請求方法について


|はじめに

加害者が任意保険に加入している場合には、一般的には被害者の過失割合が大きくない限り、相手方の任意保険会社が窓口になり、任意保険部分と自賠責部分を一括対応してくれて諸手続を進めてくれます。
また車同士の事故の場合には当事者双方の任意保険契約先の保険会社同士で協議をしながら自賠責保険の請求も含めて行ってくれいていると思います。

しかし、自賠責保険だけしか加入していないと、加害者の代わりとなって窓口役を担ってくれることはありません。
そのため、被害者は自己負担が発生した際には、その都度自ら請求手続を行う必要があります。

|自賠責保険の2つの請求方法

自賠責保険への請求方法としては、次の2つの方法が用意されています。

○一つは「被害者請求」です。

(筆者撮影)

被害者請求とは、自賠法第16条を根拠として、被害者が直接、加害者が加入する自賠責保険会社に請求を行う方法です。

(保険会社に対する損害賠償額の請求)
第十六条 第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。

治療費や休業損害、慰謝料等の傷害部分の請求や後遺障害が残存してしまった際の等級認定を求める請求等、それぞれについて被害者自身が資料を準備請求することになります。

結構面倒な手続きになります。
資料準備の手間がかかること、そのための知識を必要とします(デメリット)が、ある意味自分が納得のいく請求を行うことができます(メリット)。

○二つは「加害者請求」です。

(筆者撮影)

加害者請求は、加害者又は加害者が加入する任意保険会社が自賠責保険に請求を行う方法で、自賠法第15条をその根拠とします。

(保険金の請求)
第十五条 被保険者は、被害者に対する損害賠償額について自己が支払をした限度においてのみ、保険会社に対して保険金の支払を請求することができる。

一括対応により被害者に支払を行った任意保険会社は、この方法により、本来は自賠責保険が負担すべき一階部分損害金を求償しています。

また、後遺障害部分も一括対応時には同様の流れになることが多いです。
ただ、後遺障害については「事前認定」という手続きができるので、一般的には、任意保険会社が支払うべき額を算定する目安を得るために「事前認定」の手続きを講じます。

事前認定の申請を行う場合、任意保険会社が後遺障害診断書のほか等級申請に必要な資料を準備して、損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所に対して等級の伺い(事前申請)を行います。

こちらは、被害者請求の場合と比べて、必要書類を任意保険会社が準備してくれることで手間を省けるなどのメリットがありますが、被害者が直接関わらないことなどから申請内容が不透明であったり不十分になる可能性があります。

|被害者請求と加害者請求どちらがいいの?

前記のように「被害者請求」、「加害者請求」、それぞれに一長一短があります。いろいろなケースがありますが、次のケースでは「被害者請求」を行うとメリットがあります。

○加害者が任意保険に未加入

加害者が任意保険に未加入であり、資力も乏しいという場合には、被害者は加害者に直接請求しても支払いがされるか分からないし、自賠責保険の請求も確実になされるか不明でです。被害者が多額の自己負担を強いられる可能性があります。

この場合、自賠責保険に対して被害者請求を行うことで、傷害部分については上限120万円を、後遺障害の等級が認められた際には等級ごとに定められた金額を、それぞれ回収することができますよね。

(筆者作成)

○示談交渉が長引きそうな場合

加害者又は加害者側任意保険会社との示談交渉が長引いている場合、相手側からの支払いも滞り、被害者は自己負担期間が長くなる可能性があり経済的にも厳しくなってきます。

そのような場合、自賠責保険には、加害者や任意保険会社とのやり取りとは独立して請求が可能なので、自賠責保険の限度額内であればはやめに自己負担額を回収することができます。

○被害者の過失割合が大きい場合

以前に書きましたが、被害者の過失割合が大きい場合には、加害者側の任意保険会社が一括対応を拒否することがあります。https://note.com/cyo99/n/n8cf2c3c99ba7

それは実質的に加害者側と契約している自社の任意保険を使用することがないものと想定されるなどのためです。

その場合には、示談が完了するまで任意保険会社から支払われることは期待できません。したがって、被害者請求で対応していく方が良いです。


(筆者撮影)

○後遺障害等級の申請を行う場合

後遺障害等級の申請を行う際は、任意保険会社が一括対応をしているか否かにかかわらず被害者請求をすべきと思います。
相手の任意保険会社は、あくまで加害者側なので、事前認定においても被害者の後遺障害を立証するために積極的に動く立場にはないからです。

後遺障害分の損害額は、賠償金全体の中でも特に大きなウェートを占めるので、大変でも被害者請求により資料の準備等を行い申請すべきです。

私の家内が交通事故に遭い6ヶ月も入退院を繰り返した際も同様であり、相手側の任意保険会社は積極的な動きはなく、むしろ早く示談にしたいというような仕草が見え見えで、「後遺障害の申請をしても認定は厳しい」とさえ言ってきました。
そこで神経が麻痺していることなどを疎明する資料を整えて被害者申請を行ったところ後遺障害が認定され賠償金を得ることができました。

|被害者請求の請求期限(時効)

自賠法第19条では、請求を行うことができる期間について「損害及び保有者を知った時から3年」と定められています。これにより、具体的には各費目の請求期限は次のようになります。

傷害部分 : 事故日の翌日から起算して3年後
遺障害部分 : 症状固定日の翌日から起算して3年
☆死亡に関する保険金 : 死亡日の翌日から起算して3年
なお、平成22年3月31日以前に発生した交通事故の場合は、各費目とも「2年」となるので注意が必要です。

|今回のまとめ

被害者請求と加害者請求について概略的に記載しました。それぞれメリット、デメリットがあり、またケース・バイ・ケースですが、基本的な知識は多少有していないと対応ができませんよね。
そういう機会はあって欲しくないですが、多少は学んでおきましょう。

次回は「ひき逃げ事故」などの被害に遭った場合の政府保障事業について書きますね。

<追加>

自転車の区分で使える「普通自転車」、「電動アシスト自転車」を使用する場合には自転車保険に加入ヘルメットを着用を!
https://www.jtsa.or.jp/



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集