見出し画像

いねむり運転はリスキーだ!

陽だまりの中でいねむりは気持ちがいいですね。
でもどうでしょう、車を運転中だったら・・・。
疲れている、寝不足だ、眠気をともなう薬を飲んだなどで眠気を発生することがあります。車を運転中に発生する眠気は大きなリスクを負うことになります。


|いねむり運転

いねむり運転とは、車などを運転中に寝てしまい、そのまま走行してしまうことをいいます。
ほんの数秒間、うとうとするいわゆる「仮睡」の状態やもっと長い時間眠ってしまう場合もあります。
そのためいねむり運転を原因とした交通事故も多く、また重大な事故につながることもあるのです。

ひと言にいねむり運転といってもその背景にある原因等はいろいろ
例えば
・車を長時間運転している場合
・前夜の睡眠不足
・眠気をもよおす可能性のある薬を飲んだ
・長時間勤務や休息不足
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)
・数日間にわたる疲労の積み重ね
などがよく上げられます
これらにより眠気をもよおしたり、集中力を欠いたりします。

|道路交通法の「過労運転等の禁止」

道交法66条の「過労運転等の禁止」の規定は、

(過労運転等の禁止)
第六十六条 何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
(罰則 第百十七条の二第一項第三号、第百十七条の二の二第一項第七号

と定められています。
条文にあるように「過労運転等の影響」により「正常な運転ができないおそれがある状態」で車を運転する行為を禁止しています。

もちろん交通事故を発生させた場合にその原因が過労によるいねむり運転の場合には、交通事故の原因・過失となり、「自動車運転死傷処罰法」の罰則が適用されます。また併せて道路交通法第66条違反として立件されることもあります。

ときどき過労運転、いねむり運転は事故を起こさなければ罰則が適用されないというように記載されたサイトやSNSの記事をみかけますが、この規定は、交通事故を発生させなくても違反は成立し処罰対象になります。
例えば、
・いねむりしながらふらふらと中央線をまたぎながら蛇行運転をしている、
・眠気のあまり信号を見落として交差点に進入してしまい交差道路を通行する車両等の進行を妨げた
などの状況がある場合には、「正常な運転ができないおそれがある状態」と判断されて道交法違反として検挙されることがあります。

|いねむり運転の危険性

いねむり運転で集中力を欠いたり、うとうとしてしまうと・・・、車は鉄のカタマリなので、まさに走る凶器に化してしまいます。

例えば、時速40kmで走る車は1秒間に約11m進むので、5秒程度うとうとして集中力や意識を欠いてしまうと、なんと55mも進んでしまうのです。
その間に、前方の横断歩道を横断中の歩行者がいたり、交差点の信号が赤になったら・・・結果は容易に想像つきますよね。

本来は避けられるはずの危険を、いねむりという行為によって回避することができなくなってしまい、結果として交通事故を発生させることがあります。

また、街路樹や人家の塀等に車をぶつけてしまうような自損事故も発生しています。
高速道路のように、時速80km/h以上の速度を出していると、1秒間に22m以上も走ってしまうので、数秒のいねむりが想定しない大事故を誘発させることになるのです。

いねむり運転は、死亡事故や重傷事故などの重大事故につながる割合も高く、高速道路におけるいねむり運転の死亡重傷率は、他の要因の4倍以上高いともいわれています。

|いねむり運転の起きやすい時間帯

時間帯別では、深夜の午前0時~早朝、そして午後2時~午後4時に多く発生しています。
夜間であること、周りが暗いこと、日中の疲れなどの影響などがあると考えられています。
また、昼食後の午後1時~午後4時頃に眠気を感じる割合が高いともいわれています。

|いねむりのメカニズム

医学的には、いねむりは脳の覚醒水準の低下が原因であるといわれています。
そしてその背景にあるのは、多くが疲労の蓄積や目から入る刺激の低下などによって発生するといわれています。
具体的には、身体疲労や睡眠不足、長距離運転による疲労、満腹感や血糖値の低下、夜間などライトの照射範囲以外が暗い状態が連続している、同じような景色を見続けることによる刺激の低下などが上げられています。

脳の覚醒水準が低下すると、集中力や判断力も大きく低下していきます。
そのため無意識のうちに運転操作が雑になる、ハンドルやブレーキ操作に正確さを欠く、信号や標識を見落とすなどの状態が生じます。
こうした状態を見逃してしまうと、いねむり運転に陥って重大な事故を引起こす危険性が高まります。

出典:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会報告書」

|過労の兆候を認識しよう

運転中になんとなくぼんやりしてしまうなど疲労がたまってきたときに生じる兆候いねむり運転の兆候と捉えて、眠気防止の対策をしましょう。

主な兆候としては
○ 目が疲れる(ショボショボする、視界がチラつく、目の奥に痛みを感じるなど)
○ 自然に目に手を当ててこすりようになる
○ あくびやまばたきの回数が増える
○ 頭が重くなったり、頭痛を感じる
○ 周囲に対する目配りができない(ぼ~と前を見ているだけで、隣の車線や後方の車両に気づかない、遅れるようになってきた)
○ 信号の色が目に入らない、信号が変わったことに気がつくのが遅くれてきたなど)
○ 無意識に前方の車両に接近しすぎたり、信号で停止した前の車に対応するのが遅れて追突しそうになった
など
このような状態を感じたら、そのまま運転を続けることは危険です。

|眠気の対処方法

では車を運転中に眠気を感じたらどうしたらよいでしょうか?
眠気の程度にもよりますが、基本的にはいねむり運転はその原因が過労であったり薬の影響であるなどで、正常な運転ができないおそれがある場合には運転をしてはいけないとされています(道交法第66条)。

運転中なら運転を中止し、また、運転する前、体調の悪いときや疲れを感じているとき、睡眠不足、副作用で眠気をもよおす薬を飲んだ場合などの時は運転を差し控えなければなりません。

運転中に眠気を感じたときの対処法としてはいろいろいわれていますが、眠気を感じたときや感じる前に以下の方法を試してみてください。

○ 軽い疲れを感じたら休憩をとる
○ 長時間のドライブでは、できれば1時間に1回は休憩をとる
高速道路では単調な運転が多いことから、サービスエリアが約50km毎に設けられているのでサービスエリア2カ所毎に休憩して車外で軽く身体を動かしてリフレッシュするとよい。
○ ガムなどを噛む、糖分の多く含まれた飲み物を飲む
ガムやコンブなどを噛み顎を動かすことで、脳の血管を拡張させて血行を良くし、脳の覚醒水準低下を防止する効果があるといわれている。
また、脳は糖分が不足して血糖値が下がると疲労を感じるので、糖分の多く含まれた飲み物を飲むようにするとよいともいわれている。
○ 食後すぐの運転は控える
食事直後は、体内の血液が胃腸に集中してしまうので、食後はすぐに運転せずに、場合によっては仮眠をとってから出発するようにする。
○ カフェインを摂取する
カフェインは眠気防止に有効だといわれている。近年眠気防止のためのドリンク類が市販されているが、糖分やビタミンB1なども含まれたものを選ぶと効果的である。
なお、栄養ドリンクなどにはアルコールが含まれている製品もあるので、よく確認して使用することが大切である。
○ 眠気防止装置(アラーム)等の活用
市販商品でいくつかの眠気防止装置等が販売されているので活用することも効果的である。

出典:Amazon

刺激で眠気を覚ますガムやダブレットなども併用して、しっかりと眠気を覚ますことが大事。しかしそれでも眠気がとれない場合には15~20分程度でよいので「駐車場など安全な場所に車を止めて仮眠する」ことが望ましい。

|SAS(睡眠時無呼吸症候群)

これは睡眠障害の一種で、睡眠中の呼吸が断続的に停止することにより、睡眠中に酸素不足に陥るというものです。
酸素不足のため熟睡することができず、その影響で日中でも強烈な眠気や集中力不足といった症状を引起こしてしまうのです。
日本人の成人の約3%がSASともいわれていますが、自覚している人が少ないので、実際の患者数はもっと多いともいわれています。

道路交通法では、運転免許の取得や更新時にSASも含む睡眠障害など一定の病気等に該当するかどうかを判断するために質問票に回答を求め、SASなどの疑いのあるドライバーは暫定的に免許の効力が停止されることがあります。

|おわりに

いねむり運転のメカニズムは複雑です。
しかし、いねむり運転は重大事故につながる可能性のあるリスクの高い運転です。
無理をして事故を起こしてから後悔しても遅いのです。
運転する人は平時から自分の健康や体調管理に努め、過労運転・いねむり運転を起こさないように注意しましょう。

参考資料
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03analysis/resourse/data/h25_2.pdf