道路交通法は歩行者保護の考え方がベースにあるという。なぜなの?
今回は道路交通法の策定時の考え方などをひもといてみた。
|歩行者と車では最初から勝負にならない
歩行者には、幼児から高齢者までおり、さらには身体に障害のある人などもいる。
一方、車の運転者はというと、一定の要件を満たし運転することが許可(運転免許)された人であり、二輪であれ大型トラックであれ「鉄の塊」を動かし道路の大部分を占領しながら走行している。
そして両者による事故が発生すると、結果は目に見えている。
道路交通法は、交通の安全と円滑などを目的としていることから、交通の安全を確保するために、勝負にならない歩行者を保護することを基本理念としたという。
現行の道路交通法の立案作業に従事した内海倫(元交通局長、元人事院総裁)の著書「道交法とつきあう法」に歩行者優先とした理由について以下のような記述をしている。
|業務上の注意義務
車の運転者にとって、歩行者優先というのは、腹ただしい時もあるかもしれない。
歩行者の急な飛び出し、横断歩道のないところでの横断などにより万が一交通事故が発生すると、歩行者側にも過失はあるものの、車側は重い責任を問われることになる。
車を運転する人は、自動車運転という業務を行う場合には事故を起こさないように安全に運転する注意義務があるのだ。
そして、車を運転中に過失によって、人をケガをさせた場合「過失運転致傷罪」という犯罪になり、また人を死亡させた場合は、「過失運転致死罪」となる。
飲酒運転など一定の危険運転行為等により人を死傷させた場合には危険運転致死傷罪に問われることになる。
一方で歩行者がルールをまもらなかった場合には、自分を危険にさらすことになるので、罰則以上の罰を受ける結果になる。
また民事上の損害賠償請求等においても、歩行者側も過失相殺され実質的に賠償額が減額されるというペナルティを受けることになる。
|対歩行者事故の状況
歩行者と車(人対車)の交通事故の発生状況を見ると
平成5年中は39,444件で、全事故件数の307、930件に占める割合は12.8%
である。
なお、この中には、車側の過失(法例違反)と合わせて歩行者側にも何らかの法令違反のある事故もある。
歩行中(第1当事者・第2当事者)の死傷者数は8,164人であり約2割の死傷者に法令違反があるという。
|おわりに
現在の道路交通法は、歩行者の保護・優先を基本理念としている。
そして良識ある運転者は、それは当然もしくは仕方がないと思うでしょう。
しかし世の中そういう運転者だけではない、事実SNSでは「道路交通法が間違っている」などと書いてる人もいる。
でも、自動車は鉄の塊であり一歩間違えば走る凶器と化するのである。
車と歩行者は、同じ立場で比較できないほど、歩行者は弱い存在なのであり、カタキ同士にはなりえないでしよう。