MSX総選挙・ゲーム編3 黎明期を彩った傑作たち
MSX総選挙特集の最後を飾るのはMSX1黎明期を支えてくれた傑作たち。MSX40周年の今こそ、その魅力を追って行きたいと思います。
①ハイドライド(T&Eソフト)1985年3月
MSX初のキラータイトルともいえる作品です。全く新しいゲームの出現に多くのユーザーが魅了され、パソコン雑誌のランキング上位を1年以上独占した怪物ソフトになりました。MSX版は後発の移植でしたが、プログラム技術の向上により完成度が高くなっています。ROM版では世界初のパスワードセーブ方式を実装するなど、T&Eソフトの技術力や研究姿勢の高さが伺えますね。
アクションRPGの草分けになるにも関わらず、驚異的な完成度を誇るゲームでした。現在世界中で遊ばれているARPGというジャンルは、全てここから出発したと言っても過言ではないと思います。ハイドライドは海外では日本ほど知名度がないようなのですが、以前米国のゲーマーに「ゼルダの伝説のご先祖だよ」と説明したら凄く納得してくれました。
僕は当時ドルアーガの塔の移植を熱望していましたが、MSXの師匠に
「こっちの方がドルアーガよりRPGとしてはすげえぞ!」
と勧められて夢中になってプレイしていました。ドルアーガの塔も傑作なのですが、ハイドライドにはお仕着せの物語でなくプレイヤーが想像する「余白」のようなものが残されていたのです。しかし前回イースで紹介したように、その後の日本のRPGはビジュアル中心の演出が売れ筋となっていき、ハイドライドシリーズもその波に抗うことは出来ませんでした。
だとしてもこの作品の栄光は、永遠に色あせることはないと思うのです。ありがとうハイドライド!
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★★★
ゲームシステム ★★★★★
操作性 ★★★★★
BGM ★★★
ランキング王者度 ★★★★★
豆知識😲ROM版でスピード5だと全然別のゲームに。
②ぶた丸パンツ(HAL研究所) 1983年12月
ハル研究所はマイコンの時代からの老舗で、周辺機器やMSXではHALNOTEといったお堅いイメージのメーカです。しかし何故か初期のゲームは胡散臭い作品が多く、半ば伝説化しているのがこの「ぶた丸パンツ君」なのでした。MSXユーザーの中には「ハル研の代表作」と断言する人もいるくらいの名(迷)作です。
ストーリーはマニュアルによると
「主人公は子豚のぶた丸!?いじわるな『雷のパンツ君』が落とす卵をどんどん受け止めて、赤い卵なら投げ返してやっつけよう!」
書いてて僕の方がおかしくなってきそうなイカレっぷりです🤣
ゲームはいかにも黎明期の1画面固定クリア型のアクション。脱力系のサウンドと主人公のぶた丸君の狂ったアクションに洗脳されてくると、なぜかテンションがあがってしまいます。
後半になると黒い凶悪な面をしたパックマンもどきが巨大化して襲ってくるようになります。コイツを余裕でかわせるようになればあなたも一流プレイヤーの仲間入りですよ。
このパックマンもどきは正式名称「ちりとりオジサン」というのですが、オジサン要素が1ミリもない裏主人公とも言えるべき存在です。とにかくこの狂気は見て頂くのが手っ取り早いので、未プレイの方は後半の動画をどうぞ!
実はぶた丸パンツは世界中で発売されたワールドワイドなゲームなんです。有志のコレクションによるとエジプトで発売されたものもあったとか。中央の青いカートリッジのBUTAMARU PANTSがエジプトのものだそう。集めた方は凄いなあ。
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★
ゲームシステム ★★★
操作性 ★★★★★
BGM ★★★
トリップ度 ★★★★★
一言😁作者は不明なんですが、岩田聡さんだったらいいなあ。
③ボスコニアン(ナムコ)1984年7月
かつてのナムコのゲーセン作品は絶対的ブランドでありました。その中でファミコンには移植されなかったMSXタイトルがラリーXとこのボスコニアンです。
驚異の8方向任意スクロールを実装。BGMはないですが、不気味な人工音声が雰囲気を盛り上げます。移植を伝説のプログラマー深谷正一さんが担当されたそうですね。
面クリアー型のシューティングでパワーアップもない地味な部類ですが、敵スパイ機やアラートモード、巨大レーダーなどの独創的なギミックが満載。ギャラクシアンからよりSF的な世界に進化しています。
ナムコのMSX1タイトルはコナミの作品のように度肝を抜く内容というわけではないですが、手堅くまとまった良移植が多いと思います(ドルアーガの塔を除く😁)
ボスコニアンは1988年に古代祐三先生のBGMを引っ提げたX68000版が出ています。あの大宇宙をイメージした雄大なサウンドが羨ましかったですね。MSXの復刻版ディスクNGで採用してほしかったと残念だったことを思い出します。
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★★
ゲームシステム ★★★★
操作性 ★★★★★
BGM ★★★
ブラストオフ度 ★★★★
豆知識😉連射パットがあると攻略が楽
④ザイゾログ(タイトー) 1984年
タイトーのMSX1作品はゲーセン移植が中心でしたが、その中でも異質なMSXオリジナルゲームがこのザイゾログです。
自機のボールを操作してオレンジの四角形の上を通過するという単純明快なルールですが、地面に高低があるところがミソ。マーブルマッドネスの2D視点版と言えば解りやすいでしょうか。自爆が敵を攻撃する唯一の手段で、面クリア時に一機追加というのが戦略性を高めています。
後に開発はコンパイルが行っていたと知って納得しました。コンパイルは他社名義でMSX版ロードランナーやテグザーなどを開発してます。他にもアクアポリスSOSやクルセーダーといった、隠れたオリジナルの名作も制作してるんですよ。
ザイゾログは無機質で統一された近未来的なグラフィックとBGMに、戦略性の高いゲームシステムを併せ持つという隠れた名作です。このゲームがあまり認知されていないのはMSXマガジンなどに広告が少なかったという理由もあるんだとか。今こそ多くの人に知って貰いたい作品です。ただエディットモードがあればもっとよかったですね。
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★★★
ゲームシステム ★★★★
操作性 ★★★★★
BGM ★★★★
自爆快感度 ★★★★
一言😁ナムコのモトスが出た時コレの続編かと思いました。
⑤頑張れトラックボーイ・ペイロード(ソニー)1985年11月
ソニーはハードとソフトを両方供給してくれたメーカーでした。初期のタイトルはロードランナーに代表されるアップルなどの米国からの移植が目玉でしたが、その中で異色のMSXオリジナルゲームがこのペイロードです。
ゲームは「さすらいのトラック野郎になり日本縦断をしながら全国に荷物を配送する」という極めて独創的な内容。日本中の都道府県を再現している巨大なマップが特徴で、トラック野郎の旅の気分を存分に味わうことが出来ました。
全ての車が左側通行で信号を遵守、法的速度60kmで走行するという妙なリアルさがあります。ちなみに渋滞も発生して解消されるまで全く動けなくなることも。そんな中で逆走しながら時速100kmでカットんでると、お約束のパトカーが・・・スピード違反は速度により減点と罰金額が違うなど変に作り込んでいます。
そんなペイロードが印象深いのは「オトナを感じさせる危険な香り」
ドライバーのパワーアップアイテムに「おさけ」がある。
マニュアルによると主人公の鉄は「気は少し荒いけど、安全運転でマナーもいい。」そうなんですが・・・
ねずみとりが都会にしかない。というか田舎には信号すらない。
秋田のMSXユーザーが「青森は都会なのに秋田は田舎、許せん。」と怒ってました。ちなみに「ねずみとり」はレーダーで回避できます。
ターボを2個装着すると最高速252kmで高速では一切捕まらない。それどころかパトカーは真後ろにつかれない限り捕まりません。このテクニックを駆使するのがゲームのキモ。いいのかよ!
このゲームの攻略法は過積載で大きく稼ぎ、疲労はねむけざまし(ドライブインで売っている謎の薬)で一発解消。ターボ改造でスピード違反しまくってレーダーでネズミ取りは華麗に回避・・・という危険なスタイルになります。この作品を世界的企業のソニーが発売していたというのがMSXの偉大さじゃないでしょうか。任天堂さんでは絶対発売不可ですよ!
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★★★
ゲームシステム ★★★★
操作性 ★★★
BGM ★★★
犯罪の香り度 ★★★★
豆知識😁「いっぱいのコーヒーがあなたにひとときのきゅうそくをくれる。」嘘です。コーヒーはほとんど役に立ちません。やっぱり覚醒○、ねむけざましで一発解消!
⑥スキーコマンド(カシオ)1984年
カシオもハードとソフトを両方供給してくれたメーカーでした。どちらもB級の雰囲気をかもしだしていましたけど💦その中でスキーコマンドはオリジナリティのある良作だと思います。
内容は疑似3Dシューティング。スキーで滑走して障害物を避けつつ敵兵を単発ライフルで狙撃していきます。後半ヘリコプターが出現し、これをジャンプしながら発砲して撃墜するのが快感です。クリアすると敵基地をパラシュート降下で破壊するボーナス面が登場。このアニメは一見の価値ありですよ。
カシオのゲームは当時クソゲー呼ばわりされることも多かったかもしれません。しかし操作性が劣悪だとかゲームとして破綻していると言うことはありません。独特の味があってついプレイしてしまうんですよ。急に駄菓子屋さんのお菓子を食べたくなるような、不思議な魅力があるのがカシオのMSX作品でした。
ちなみにPV-2000というMSXと同性能のカシオのホビーパソコン用が原作のようです。縦スクロールSTGでこれを3D風にリメイクしたのがMSX版みたいですね。内容は独自の3D面とカッコいいBGMがあってボーナス面はMSXと同じ。こちらも出して欲しかったなあ。スキーコマンド・リベンジとか言って。
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★★
ゲームシステム ★★★
操作性 ★★★★
BGM ★★★
ぺぽぽぽ♪度 ★★★
一言😁X-MENのサイクロップスを見た時「スキーコマンドのパクりだ!」と思いました。
⑦アルカザール(ポニー)1985年
ポニーキャニオンも黎明期から多くのMSX1ゲームを供給してくれました。ソニーとは別ルートで洋ゲーの移植をしてくれたのは嬉しかったですね。特にアクティビジョン社の良質のアクションは名作ばかりでした。その中でもアルカザールは侮れないゲーム性と完成度を持つMSXの隠れた名作の一つです。
ゲームシステムは大雑把に言うとメタルギアのステルス要素を極限まで煮詰めた感じ。メタルギアは敵兵を殺戮するのではなく、避けることで潜入作戦独特の雰囲気を演出していました。しかしアルカザールは演出してではなく「敵に発見されない」というゲームシステムを前面に押し出しているのが特徴です。
敵が銃の音に反応して主人公を追うのはメタルギアと同じですが、プレイヤーの見れない隣の部屋からも向かってくるのがミソ。逆に敵も移動の時に音を出したり足跡がついたりします。そのため敵の状況を推理することでき、より戦略的にゲームを楽しむことが出来ます。
難易度はレベルによって変化。最高の4になると殆どのモンスターが主人公より速くなる上、しつこいほど追いかけてきます。体力も最低値になるので開始直後に瞬殺されることもしばしば。
イヤホンをつけて最高レベルでプレイすると、文字通り「見つかったら即死」という究極の緊張感が味わえますよ。BGM?そんなものは飾りです。基本的に逃げ回って振り切った方が効率的なのですが、そういう時に限って部屋全体が落とし穴だったりして即死します(敵を落とすことも可能)。
ゲームデザイナーは相当のサドっ気があると見て間違いないですね。しかし悔しくて再プレイすること請け合いです。
僕は16時間連続でプレイしてレベル4をクリアーしました。親が法事で家を空けていた間隙をついてのプレイでしたが、イヤホンをつけて奇声を上げる僕に弟は恐ろしくて近寄れなかったらしいです。
お勧めの攻略ページ。アルカザールの魅力が満載
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★★
ゲームシステム ★★★★★
操作性 ★★★★★
BGM ★★★
牢番最強度 ★★★★
一言😁ティリリという牢番の足音が恐ろしくて耳から離れない。
⑧ライズアウト(アスキー)1984年
アスキーもMSXの発起人としてMSX1の発表直後から多くのタイトルを発売しています。当時のアスキーはその後のパソコンゲーム界の中心となる人材が揃っていて、思わぬ名作があったりします。このライズアウトはその後のゲームアーツの五代響さんの作品です。
ゲームは一言でいえば左右に撃つことができるロードランナーという感じ。テンポが良く壁を掘り進む爽快感があるのでロードランナーより好きという人も多いですね。このゲームがマイナーなのはMSX版ロードランナーの発売で、このゲームが生産中止になったからという噂があるんです。実際出回りは悪かったみたい。
ところが日本ではマイナーなライズアウトは何故かソ連で大人気だったんです。かなりの機種に移植されてるんですよ。この奇妙な現象は欧州や米国ではなくソ連だけだったらしいのですが、このことを調べてレポートしてみました。興味のある方は読んでみて下さい。
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★★
ゲームシステム ★★★★
操作性 ★★★★★
BGM ★★★★
ソ連で人気度 ★★★★
豆知識😉実は大坂城の地下が舞台
⑨魔法使いウィズ(ソニー)1986年5月21日
メガロムやMSX2ソフトの台頭の直前に発売されたMSX1の名作です。少ない32KBの容量にもかかわらず飽きさせないステージ構成に仕上がっています。楽しい魔法の演出や手ごわいボスキャラなどがテンポよく展開されるので、長く楽しめる作品だと思います。
アイコンであるウィズは僕にとって特別な存在で、初めてお小遣いを貯めて買ったソフトです。
ウィズ君は未熟な魔法使いですが、当時MSX見習いだった僕とシンクロしていました。結局しょぼいままのMSXユーザーなのですが「大魔法使いになれるかもしれない」という憧れをかなえてくれたゲームなんです。
そんなわけで前回徹底的に解説しました。何と魔法使いウィズの作者に38年の時を経てたどり着いたんですよ!
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★★★
ゲームシステム ★★★★
操作性 ★★★★
BGM ★★★★
想い出度 ★★★★★
豆知識🥰最強の敵はロケットパンチ
⑩アウトロイド(マジカルズゥ)1985年
「ロボットに支配された世界」と言う荒廃した近未来を舞台にしたARPG。抜群の硬派SFの情景を醸し出していました。ハイドライドと対照的な無機質なマップが印象的です。
メニュー画面がパソコンのディスプレイのように表示され、カーソルが高速で流れながら1文字ずつ文章を表示させていく演出がカッコよかったです。クライマックスは変形装置を集めたのち、飛行形態に変形して敵基地中枢へ殴り込みをかける場面。
ゲームはハイドライドに近いシステムですが、射撃やパーツ換装によるパワーアップがロボットバトルの雰囲気を盛り上げてくれました。
アーマードスーツXX-85のキメ台詞は「Ok」渋い!
子供向けのゲームが多かったMSXの中で異様だったのがこのアウトロイド。ボトムズそっくりの自機ロボットが話題になりますが、雰囲気はむしろ新造人間キャシャーンに近いと思います。両作品のファンだった僕は夢中でプレイしました。マニュアルからストーリーを抜粋するので雰囲気を感じてください。
ストーリー
2108年、第二の地球クォーンは滅亡した。東西両陣営の中央管制コンピュータが、突然戦闘を開始したためだった。
5週間にわたり地上を破壊し尽くした戦争を制したのは西側の中央管制コンピュータ「C.C.C」だった。
C.C.Cはそれまで管理していたロボットによる社会「アウトロイド」を作り、まるで女王バチのように工場でロボットを作り出し、クォーンを支配していった。
そして自分にとって最も危険であろうと思われる敵――すなわち、戦争に生き残ったほんの一握りの人類を総て抹殺する指令を出したのである。
人類の生き残りの1人であるラモン・オクダイラも例にもれずロボットに追われる身となった。
彼は一人アジトに身を隠し、残された唯一の武器アーマードスーツXX-85で果敢にロボット軍団に立ち向かった。
クォーンの人類を救うにはもはやC.C.Cを破壊する以外ない。
しかし、この感情さえ持った冷酷な悪魔は隠れ潜む人類を追い、容赦なく次々と襲いかかる。
人間が勝つか機械が勝つか、それは彼の勇気と知恵にかかっているのだ……
サイボーグMSXのおすすめマークほい!
グラフィック ★★★★
ゲームシステム ★★★★
操作性 ★★★★
BGM ★★★
世紀末度 ★★★★★
豆知識🥶最終決戦兵器は反陽子爆弾。「設置後30秒後に爆発する」とありますが実際は3秒で爆発。爆発に巻き込まれると即死します。
最後に・・・
いかがだったでしょうか?レビューを書いているうちにどのゲームもやりたくなってしまいましたよ。黎明期のゲームは他のゲームでは味わうことのできない魅力が詰まっていると思います。
またプレイした頃のみずみずしい感性が蘇ってくることも再確認できました。幼少期に多くのゲームに出会えたことは大きな財産だったと改めて感じるのでした。