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「愛」のお菓子箱を味わう「この世界からは出ていくけれど」

<SF73歩目>
キム・チョヨプさんの短篇集。この作品も読後感は素晴らしかった。とてもいい作品です。

この世界からは出ていくけれど
キム・チョヨプ (著), カシワイ (イラスト), カン・バンファ (翻訳), ユン・ジヨン (翻訳)
早川書房

「73歩目」は、キム・チョヨプさんの新作の短篇集でやはり「いいね!」です。特に「最後のライオニ」と「キャビン方程式」は素晴らしい。「プレスシャドー」「古の協約」もグレートです。おススメ

裏表紙に「社会の多数派とそうなれない者とが理解と共存を試みる、彼女たちの選択」と書かれてあり、思わず手に取りました。

キム・チョヨプさんの「自分が属していた世界から他の世界へと旅立ったり、そうして旅立っていく人を見守る話」との言葉のとおり、SFの技法を使って丁寧に描いている。

「わたしたちが光の速さで進めないなら」(早川書房)同様に、お隣の大韓民国のキラキラする「愛(love)」のお菓子箱(SF短篇集)です。

それぞれの個人が、キムさんの言葉で言うと「感覚バブル」という泡の中に閉じ込められていて、人間が見たり聞いたりできる狭い範囲の光と音、等々「ホンモノの現実」と思って生きている。

でも、実際には数万通りの「現実」の一つかもしれないという仮説に基づいて描かれた。素晴らしい。

キム・チョヨプさんの新作の短篇集でやはり「いいね!」です。特に「最後のライオニ」と「キャビン方程式」は素晴らしい。
そしてキムさんらしい「プレスシャドー」「古の協約」もグレートです。おススメ

「最後のライオニ」
設定、最後のオチも目新しくない。
しかし、読ませてくれる。読後に心の奥底に残る。ここにキムさんの才能があると感じた。
とても良い作品になっています。

「クローン」で繋いできた不死社会が原因不明のウィルスで滅びる。その中で、処分されるはずの「クローン」とメンテナンスなく残された機械と共演する。

キム・チョヨプさんの作品に全て流れていますが、人間(ここでは機械も)を見つめる目がとてもやさしい。
何度も読み返したくなるきらめく作品です。

「キャビン方程式」
姉妹だけど、姉妹だからこそ、周囲は「同じ」で見るが「違う」のも事実。
そして、姉妹でそれぞれの道を歩む中で、姉は他人よりも数十倍遅い時間で生きることになる。

お互いに「愛している」けど、普通に「いらだち」が押さえられない。
その中で、この「オチ」は素晴らしい。
関係ないのですが、韓国のこの観覧車に乗ってみたいと思いました。

キムさんの著作はいつの間にか、全て読んだ。
今後も刊行されるたびに読む作家の一人。
何よりも、「愛(love)」に包まれる感覚で、読後感が素晴らしい。

次作を待ち望んでいます。

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