読書感想文「喜嶋先生の静かな世界」森博嗣著
私はいちおう大卒です。
「いちおう」と書いたのは、そんなに意味はありません。こういう書き方をすると気を悪くされる方もいらっしゃるでしょうが、個人的見解です。お許しください。
話を続けます。私は大学を卒業しました。ただし、「通信制」の大学を卒業しました。通信制と言っても、全てがレポートという訳ではなく、スクーリングと言って大学まで行かないと取得できない単位もあります。大体、レポート提出して、合格点を貰えてもその後の筆記試験(大学で受けます)でパスしなければ、1単位すら取れないのです。無論、卒論もありました(酷いモノでしたが)。
ゼミやサークルなどは(多分)なく、顔見知りはいても、同級生なんてヒトはいませんでした。まぁ、当時の私の生活方針めいたものに問題があった可能性は「大」ですが。
これが、就職活動(悪夢でした)の時に大きな痛手となって返ってくるのですが、それはまた別の話です。
やっと読書の感想が書けます。「喜嶋先生の静かな世界」、「すべてがFになる」などで有名な森博嗣さんの作品です。
1人の勉強が大嫌いだった少年が、大学で恩師たる先生と出会い、学問の深遠さと研究の純粋さに目覚め、人生を歩んでいく自伝的小説です。
私は繰り返しますが、通信制の大学を卒業しました。ただ「大卒」の資格が欲しいだけで、単位を取り卒業しました。それが世間知らずの大きな勘違いだと後に気づきますが、それもまた別の話です。
時折、この本を読み返し「ああ、勉強したいなぁ」といつも思います。今からでもできない事はないでしょうが、今の私には仕事があり、自分で選んだ生活があります。残念ながら今のところ、そこに勉学に割ける時間は(お金も)ないようです。
まぁ、先のことはわかりませんが…。
本作の好きな箇所を2つ引用させていただきます。
「若い頃には滅多になかったことだ。それが、この頃はときどき空を見上げる。空はいつでもそこにあるから、それだけで少し安心できる。珍しいものが見えるわけではない。そんな当たり前のことに、少しだけ心を向けるようになったのも、この歳になってようやくのこと」
「学問には王道しかない。それは、考えれば考えるほど、人間の美しい生き方を言い表していると思う。美しいというのは、そういう姿勢を示す言葉だ。考えるだけで涙が出るほど、身震いするほど、ただただ美しい。楽しいのでもなく、純粋に美しいのだと感じる。そんな道が王道なのだ。(中略)どちらへ進むべきか迷ったときには、いつも『どちらが王道か』と僕は考えた。それは、おおむね、歩くのが難しい方、抵抗が強い方、厳しく辛い道の方だった。困難な方を選んでおけば、絶対に後悔することがない、ということを喜嶋先生は教えてくれたのだ」
ただ学ぶだけでなく「生きる」ことについても教えてくれる。そんな本です。