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年越しと水餃子

うちの実家、特に父方では、大晦日から正月にかけては水餃子を食べる習慣があった。
親族一同で集まり、皮から餃子を大量に作って茹でて食べる。これがなかなか小さい頃は楽しくて、いとこに会える楽しみと相まって非常に楽しみなイベントだった。

(モランボンの餃子の皮は一番美味しい。僕の中の揺るがない真実であった)


ゆえに我が家では餃子というと焼き餃子ではなく水餃子であり、キャベツでなく白菜であり、家族みんなで沢山食べるものなのだ。

今年の年越し

今年の年末は仕事の面で色々とうまくいかなかった。思うように進まない苛立ちや焦燥を抱えたままの2023年を締めくくる形となる。

そして年末最後の出勤日、職場で例の感染症が流行ってしまった。
自身が感染していないと言い切れない状況で、高齢の両親がいる実家に帰れるわけもない。
症状が出るとしたら1日後か2日後か、そんな状況だった。
被害を最小限にするために嫁と子を向こうの実家に帰すことにした。僕が家族に感染させる前に、避難させる作戦である。

作戦はうまく行ったのか、向こうでの症状発現報告はなかった。
しかし肝心の自分も結局感染しなかった。1/2の現在もピンピンしている。

今となっては結局、すべては取り越し苦労であったようだ。

1人の年越し

今日までの人生で、誰かと過ごさない年越しは初めての体験だった。故に僕は、想像以上の苦痛に苛まれることになる。

僕自身が孤独を孤独と認識することはなかったものの、明らかに活力がなく、今までやろうと決めていた全ての遊びや暇つぶしに、関心が向かなくなってしまった。

自分自身は1人の時間や静かな夜が好きだと思っていたが、いざ賑やかな日常から切り離されると、予想以上に精神にダメージを与えるようだ。

そんな中の緊急地震速報であった。2011年の恐怖が思い出される。寒い中の避難は辛いどころか、大きく命に関わる。こんなことが正月に訪れるとは……

しばらく無気力のまま過ごした後、このままでは良くないと思い、困った時の万能な解決策に頼ることにする。
全ての思考を止めて、自分の世界に没頭できる。ルーチンワークのはじまりである。

水餃子のレシピ

〈餃子の皮〉
薄力粉 100g
強力粉 100g
水       100ml
塩       ひとつまみ
x2,x3して適量を用いる

〈餃子の餡〉
豚ひき肉    500g
白菜 小      半切したもの
ニラ          一把
長ネギ       1本
生姜          1,2かけ
ニンニク    4,5かけ
ウェイパー  大さじ1-2
しょうゆ    ひと回し


〈餡の作り方〉


①白菜を切る。
一枚一枚取り外したのち重ねて一塊にする。その状態から繊維方向に包丁を入れてゆく。幅はおそらく6,7mm程度。
90度回転させてまた6,7mm幅で切ると、小さめのさいの目切りした状態になる。

大きいボウルがなければ直接鍋に入れてしまえば良い。
このまま最後まで行く。
茹でるのもこの鍋にすると、洗い物が実質1つ減る。



※この工程が非常に重要。間違ってフードプロセッサーを使ったりすると、理想とかけ離れた食べ物が出来上がる。そんなことをしているようでは、美味しい餃子のためにこれだけの手間暇をかけた意味がなくなる。なんのための白菜か、なんのための自家製か、その意味は、丁寧にこの工程を経ない限りはわからない。
とにかくフードプロセッサーなんてものは使わないこと。ブンブンチョッパーも使わないこと。美味しい水餃子までの道のりは甘くない。

②ニラを適当に切る。同じようなサイズにするのが望ましい。結果これも6,7mm幅に切ってゆく。コツは研ぎたての包丁を使うこと。

③長ネギも適当に切る。食感担当ではなく香味野菜と考えているので、サイズはそこそこ細かければ良いと思う。ここはこだわりポイントではない。

④全てを混ぜ合わせる。
同時に塩(分量外)を少々まわしかける。おそらく実家では水抜きのためにやる工程だが、体感としてはここは熱心に水を抜かない方が食感が生きてきて美味しい気がする。そのため、この後の野菜をグイグイ絞る工程は行わない

⑤生姜を刻む。
皮を剥いたのち、包丁で薄めに適当にスライスする。ポテトチップスのよう。

薄さはバラバラで良い。どうせわからない。

その後、束ねた生姜スライスをドミノ倒しのようにして千切りにする。

この状態も他の料理で見かける。針生姜?

ここから90度回転させて、もう一度細かく切る。そうすると、比較的粒度の揃ったみじん切りの完成である。

香り付けに使う時って、すりおろすのと、刻むのと。
どっちがいいんでしょうね。答えを持たないまま進む。


⑥ニンニクを刻む
皮がついたまま包丁の腹で潰すと、皮が外れて中身が潰れる。
潰した状態で千切りにして、90度回転させてまた切ると同じようにみじん切りが出来上がる。

潰した状態
ニンニクの香りを使う料理のときは、この状態で入れ、あとで取り出すということをしている。
刻むとすごく香りが立つ。まあまあ強烈である。

⑦ひき肉を諸々と混ぜる
ひき肉を野菜と別のボウルに入れて、ウェイパーや醤油、生姜、ニンニクと合わせる。
味の均質化を目的としているため、この段階でウェイパーを入れている。野菜が入った状態で混ぜるよりも均一に味が入りやすい。
オプションでここでごま油を入れるとなかなか美味しい。

ウェイパー乗せ
いきなり混ぜる前に、手の温度でウェイパーをこねて、ぐちゃぐちゃと細かくしておくとよい。
これはウェイパーの塊が口に入る失敗を経た男からの、心のこもったアドバイスである。
混ぜ合わせ後
ひき肉は塩分がある状態で練ると粘り気がでる。
なぜかは知らない。味の影響もわからない。一応練る。


⑧全てを混ぜ合わせる。
野菜と肉をしっかりと混ぜてゆく。
野菜に④の工程で塩をふったため水が出ているが、これは捨てなくても肉に吸収される。
そもそもこれは旨みと思っているので、捨てたりはしない。
別の対処として片栗粉をいれるとかがあるようだが、効果が不明なのでやらない。

この時点での色合いで味のバランスがわかる。
口に入れた瞬間、「肉!」なのか「野菜か…」なのか。
当然、前者が望ましい。
この写真はやや肉成分が足りない。肉を足すとよい。


⑨餡は完成。
包む時にはポイントがある。
材料を残さず使い切りたい人は、この時点で餡を平らに均した上で、匙で大体n等分した切り込みを入れると良い。たとえば皮を100枚でやるのなら、「4等分して1ブロックあたり25個の餃子をつつむ」のような予測をたてながら包める。

別のやり方として、手が汚れにくくなる方法として、ホイップクリームのように小さい穴の空いた袋に入れる方法がある。今回は皮を伸ばしながら包む工程を行う都合上、こちらを採用した。
袋はある程度の頑丈さが要求される。その点でアイラップは優秀である。ジップロックのフリーザーバッグなどもつかえるかもしれない。


〈皮の作り方〉


①薄力粉と強力粉を混ぜ合わせる。そこに塩を入れる。

ただの粉である


②水を数回に分けて混ぜながら回し入れてゆく。菜箸を使うと混ぜやすく、手を汚さなくて済む。ゴールはボソボソしたダマがたくさんできるようになるまで。

③手を使ってこねてゆく。ある程度まとまるまで長い道のりになる。
頑張って壁面にのこっている粉を混ぜ込みながら、やがて粘り気のある一つの塊になるまで混ぜ続ける。

ここから


これくらい滑らかになる


④何分か、何十分か、適当に寝かせる。
寝かせるとはつまり水分を均質に行き渡らせる効果があるのだろうか?

⑤寝かせた生地を切り分ける。目安としては10gで皮1枚分らしい。正直よくわからない。何個かの棒状の塊にわけて、その塊をいくつに切り分ければ程よいか、餃子を包みつつ適宜生地サイズを調節すると良い。

棒を数本作り、その棒から皮1つ分を切り出す。使ってない皮(棒)には乾燥予防にラップをかける。


⑥皮を伸ばしてゆく。塊を手のひらで潰して3,4cm程度にしたら、一家に一本ある麺棒で伸ばす。ポイントは、一気に伸ばそうとしないこと。左手で30度ほどずつ回しながら、ちょびっとずつ、生地面積の70%ほどを奥に向けて伸ばすのを繰り返す。
これはやるうちに意味がわかるので、まずは手を動かそう。

汚れず、十分な強度があり、軽く、扱いやすい。
ラップはもはや麺棒の上位互換である。

⑦餡を包む。
生地の中央に適量の餡を乗せて、包んでゆく。水餃子は皮が美味しい食べ物である。一見奇妙な包み方が美味しかったりするのが水餃子の面白いところ。
上手に包もうとするのも結構だが、変わった形にしてみて食感の差を楽しむのも楽しい。
皮自体は市販のものにくらべ遥かによく伸びるので、やりたい放題できる。

餡は袋にいれて搾り出すのが割とやりやすい
水をつけて皮同士を密着させる。うち粉を用意する。
餃子を並べるスペースを確保する。


〈調理する〉

①十分量のお湯を沸かし、そこに餃子を投入する。
1人で食べる時には、せいぜい7,8個ずつ茹でるのが好ましいのではないかと思う。
鍋底にくっつかず、生焼けにならず、お湯の中で餃子がぐるぐる舞うくらいがちょうど良い。
火が通ってくるとぷっくりと膨らんでくる。
このぷっくり感を目安にして、もう食べて良いと思っている。経験的には火が通っている。

入れてすぐの見た目。シワの感じ。
火が通りつつある。ぷっくりしている。
餃子が浮いてきて、そろそろかなとワクワクする。

②食べる。
別のさらに餃子を移して、つけだれを用意して食べる。
醤油と酢を1対1で合わせたもので食べるのが実家流である。僕自身もその食べ方が一番美味しいと思うのでそれで食べている。同じ食べ方をしている人は、いったいどれほどいるのだろうか。
適切な下味と、豚肉の比率、そして野菜の切り方を間違えなければ、これよりも美味しい水餃子はないのだと言い切れる絶品が出来上がる。
これを知ると、店で出てくるフードプロセッサー餃子なんてものは、今後一生作り笑顔で食べることになる。

市販のものより皮の強度が高く、破けにくい。
皮の味はうどんのように濃くて美味しい。
変化球としてひだを作らず包んだが、悪くなかった。
酢醤油のみで食べる。
今回、皮の薄さで見た目が変わることを発見した。
向かって左が薄め、右が厚めである。
こうしてみると世間の水餃子はかなり皮がゴツいのか。
これよりも遥かに皺が少ないよね。興味深い。


まとめ

美味しい水餃子をたべた。
餃子つくりはご褒美付きの究極のルーチンワークである。
キャベツの焼き餃子しか食べたことのない人たちに、一人でも多くに届けたいレシピ。

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