太陽光でCO2から高純度の「ギ酸」を生成する光触媒が開発される 水素社会の実現に前進!
東京工業大学は5月16日、可視光線(太陽光線)をエネルギー源にしてCO2からギ酸を高純度でつくることができる光触媒の開発に成功したと発表しました。
では、まずギ酸の説明から始めましょう!
ギ酸の化学式はHCOOHですね。
みなさんは、この化学式を見て、何か気がつきませんか?
そう、H+CO+OHになっています。つまり、ギ酸を適切な触媒を使って分解すると、H2(水素分子)+CO2(二酸化炭素)になります。
そこで、ギ酸は、現在、水素社会実現の観点から、とても注目されています。
どういうことか少し詳しく説明しましょう!
実は水素社会に欠かせない水素を貯蔵・輸送するのはとても難しいです。例えば、水素を貯蔵・輸送するためには、一旦、水素を液化する必要がありますが、そのためには、-250℃ほどまで、水素を冷やさなければなりません。
しかし、ギ酸ならば、常温で液体で、なんなら、私でも、瓶に詰めて、貯めたり、持ち運べます!
というわけで、現在、ギ酸は、水素社会に欠かせない水素を貯蔵・運搬するための手段としてとても注目されているのです。
で、今回、開発された光触媒は、α型酸水酸化鉄(α-FeOOH)を材料にし、常温・常圧下で、可視光線(太陽光線)をエネルギー源にして、CO2からこのギ酸を高純度(選択率80%~90%)で生成することを可能にします。ちなみに、α型酸水酸化鉄は、鉄さびの主成分で、土壌に豊富に含まれています。
それにしても、これまで、この手の光触媒には、銀やコバルトといった希少で高価な金属が使われることが多かったのですが、α型酸水酸化鉄が使われているということは、今回の研究成果は、コストや経済安全保障という観点からも、とても優れているということになりますね。
研究チームは、これからさまざまな工夫をして、この触媒の性能UPに頑張っていきたいとしています。
ところで、新電力大手イーレックスが、4月6日から、山梨県にある「富士吉田水素発電所」において100%水素を使った実証運転を開始しました。発電出力は320kWです。
いよいよ水素社会の実現向けた動きが本格的に始まった感じです。
これからも環境関連のテクノロジーの最新の動向を解りやすく楽しくお伝えしていきたいと思います!