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〈短歌〉わたくしの誕生知らせた黒電話昭和平成令和経て死す

昨年だったと思うが、実家の黒電話が死んだ。
年代物で、家族の誰も、いつからあるのか正確には覚えていなかった。
ピンクと白のキルティングでできた猫フェイスのカバーにくるまれていたのだが、歳を重ねすぎて猫の目玉のビーズが取れ、代わりに黒油性ペンで両目が書き込まれていた。
カバーは父のタバコの匂いが染み込んでいて臭かった。
古いね、恥ずかしいね、プッシュホンに変えるか、などと脅されながら、けなげにも耐え、ウン十年生き続けてくれた。

表題歌は、きっと私の誕生という記念すべきニュースを、家で待っていた家族に伝えてくれたのであろうな、と想像して詠んだ短歌。

今はプッシュホン(ダイアル式じゃなくてね)の、白い新しい子がいるのだが、たまに先代黒電話がなつかしくなる。

また、ダイアルをじいこじいこ回してみたい。


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