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詩「ペイント」



有り余った感情を
それぞれの色にして
壁に叩きつける
先人が描いた見事な絵の上に
稚拙な色を塗り重ねて行く

行き過ぎる人達は愚行を見て見ぬ振りをする
ごらん
これが退化だ

子供達は目の前の子供を笑わせることに必死になる
小難しい事なんて何も考えちゃいない
大人達は顔にも
何色も色を重ねて
素顔を見せようとはしない
本気で笑っていないから
仕事場のパソコンよりも先に
人間がフリーズした
心は簡単に修理ができない

ペイントされた壁の前で
子供達がピースサインをする
ピース
ピース
ピースのポーズ
遠くで山鳩が一定のリズムでうたをうたう
子供達は顔を見合わせて声に出して笑う
純粋なもの達は寄り添えるし
関われる
私は その様子をスマホで録画して拡大する
何か
とても大事な事を思い出しかけたが
忘れてしまった

私は
都合の良いシーンだけをトリミングして
一つの作品にした
それを単純な大人達がSNSで絶賛した
「ブラボー!」
良いとこどりの切り抜きなんて嘘みたい
だけど
都合の悪いところだけをペイントして
私の血肉にすることにした

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