【続いてる写経 968日め】〜文化の違いを痛感した『パラレル・マザーズ』
スペインの巨匠、ペドロ・アルモドバル監督の『パラレル・マザーズ』を観てきました。
映画評に、「意外な展開が待ち受けている」と書かれていたので期待していたのですが、確かに意外な展開ではありました。
ちょっと期待した「意外」ではなく、「あれっ?」って感じの意外性です。
ストーリーは、ペネロペ・クルス演じるカメラマンのジャニスが撮影を通じて知り合った法人類学者のアルトゥロと、曽祖父の遺骨発掘調査を相談するうちに親しくなり、彼の子どもを身籠ることから始まります。
ジャニスは無事赤ちゃんを出産したものの、肌の色の違いから、アルトゥロに「自分の子どもとは思えない」と言われてしまうのです。
気になったジャニスはDNA鑑定を依頼し、結果他人であることが証明されてしまいます。どうやら病院の同室だったアナの赤ちゃんと、取り違えられていたのでした。
赤ちゃんの取り違えというと、是枝裕和監督の『そして父になる』を思い出します。こっちの話は病院への訴訟をどうするか、実際子どもをどちらが育てるかなど、極めて現実的な内容が主軸となりストーリーが展開していきました。
が、『パラレル・マザーズ』においては、この赤ちゃん取り違え問題、それよりはずっと”あっさり”とした感覚で描かれ、早々に決着するのです。
真実を知った時のジャニスの動揺は描かれますが、決着が”意外”。
そして、ジャニスの娘の本当の母であるアナとの関係も”意外”。
この感覚がスペイン人気質なのかしら?
ちょっと感情移入はし難いところでした。
実は映画のテーマは赤ちゃんの取り違えではなく、ジャニスが長年希望していた故郷の村の発掘のほうだったのです。
映画の後半ではこの発掘調査がメインとなっていきます。
ジャニスの曽祖父はスペイン内戦時の虐殺され、村の外れに埋められたことが祖母から伝わっていました。村に住む女性たちの長年の夢は、この埋葬地の発掘し、祖先の遺体を発見することだったのです。
この調査を切望していた女性陣が、発掘調査が終わった埋葬場所へと現れるシーンを観て、監督が描きたかったのはこれかと、わかりました。
とてもそのシーンが力強くて美しい。女性のもつ強さを表していました。
様々な時代に生きた、様々な生き方の女性たち。
惨劇があった時代でも、子どもたちの生命を守り育ててきた女性たちがいたからこそ、今がある。
女性たちへの礼賛映画とみました。
というわけで、赤ちゃん取り違えによるサスペンス風味や心理的葛藤は、映画の釣りでした。そこを期待すると肩透かしをくらいます。
ワタシもあれっとなったけど、スペインの黒歴史を学べたし、ペネロペはどんなシーンでも美しくてうっとりしたので、ヨシとします。