あたま空っぽで東近美の「重要文化財の秘密」を見たメモ
東京国立近代美術館で、重要文化財に指定された作品ばっかり見れる「重要文化財の秘密」という企画展が行われていたので見に行ったらめちゃくちゃ楽しかったという記事です。
ちなみにわたしは美術(特に日本の美術作品)の知識はそんな無いです。かろうじて義務教育で美術の教科書読んだかな〜ぐらいです。
せめてもの対策として山田五郎さんの「オトナの教養講座」で予習しましたが、そこで取り上げられていた作品解説はだいたいキャプションでカバーされてたので、事前知識ゼロで見に行ってもきっと楽しいと思います!
いつもと違うルート
東京国立近代美術館って入ってまっすぐ進んで右手のチケットカウンターでチケット見てもらってそのまま突き当たりの入り口に入るというのがお決まりのルートなのかなと思ってたんですが、今回はふだん出口として使ってる入り口すぐ右手のエレベータ前から入場するという構成になってました。
たぶんなんですけど、最初の部屋(狩野芳崖の不動明王の掛け軸がかかってた。たぶん後半で悲母観音になるのかな?)の次にいきなり横山大観の〈生々流転〉(40メートルの巻物)があったので、これの展示スペースを確保するためかな?と思いました。
巻物長い、超楽しい
巻物ってあんまり今まで見たことのない作品形態だったんですが、めっちゃ長い展示ケースに巻物がびょーーーんと伸ばされてて、みんながケースに張り付きながらじわ・・・じわ・・・と見ていく面白体験でした。
〈生々流転〉は全長40メートルの巻物というスーパー横長スペクタル作品で、草露が川になり海に流れて空に上がってゆくまでを描いた作品です。作品の手前のスペースに各パートの解説や見どころが説明されたパネルがあったので初見でも全然OK。
筆と墨だけでこんだけ描けちゃうんだすげ〜〜という感動がありました。
近くにあるものは濃く遠くにあるものはけぶって薄くという空間遠近法みのある表現とか、うっすいグレーのぼかしを画面全体にかけつつ一部だけに地の色を残すことで光表現をするとか、モノクロ一本でここまでやれるんだ〜という驚きがありました。
そして次の部屋でもまたしても巻物。
でも雰囲気はガラッと変わってスーパー派手派手カラフル巻物です!
今村紫紅の〈熱国之巻〉という、東南アジア〜インドを旅した時の体験をもとにした作品でした。
わたしが見に行った時は「朝」バージョンが展示されていました。
この作品は箔の使い方がめちゃくちゃ印象的でした。
川の水面に金箔のグラデがバチバチに貼られまくっており、朝日が水面に反射する、直視すると目が潰れそうな朝の海の雰囲気を出していました。朝日の反射光が金色というのが(日本の海や川の白っぽい眩しさじゃなくて)ぶわっと暑いアジアという感じ。ぬるくて暗くおだやかな水面を地平線から斜めに差してくる朝日がギラギラと照らしだすさまが頭に浮かびます。
ちなみに、発表当時は色使いが派手すぎるということでメタメタに不評だったらしいです。かわいそう。
美人画かわい〜
いろいろあった後にめっちゃ気になったのは鏑木清方の美人画。(写真NG)
https://www.momat.go.jp/ge/topics/am20221118/
これです。サムネで見ると線が見えにくいせいでぽやっとしちゃってよくわかんないんだけど、実物を見ると細いけどしっかりはっきりした線で描写されていて存在感がすごい。顔かわいい!お肌きれい!和服すてき!
線の感じとか、肌や服の服の感じとか、それぞれの要素が組み合わさった表現からその人固有のパーソナリティみたいなのが立ち上がってくるのがすごい。
地名をタイトルにしてる感じも、なんとなく今の「下北」「青山」「白金」みたいな、そういう街々のニュアンスを入れるおしゃれ感がある。○○系女子みたいなくくり、今の日本人も好きですよね。当時のニュアンスはよくわかんないですが…。
わかる〜〜という感じの屏風
次に気になったのは屏風絵です。
右から左に見ていくと、水車を回す船?みたいな無骨で素朴な生活描写から始まり
実は岩場に咲いた満開の桜の姿が見えてくるという風流な構成になっています。
他にも、源頼朝に呼ばれて馳せ参じる源義経という2枚組の屏風もありました。
こっちは余白の取り方がめちゃくちゃダイナミック。あと義経がえげつなくイケメンです。
コレクション展のほうにも屏風の作品がいくつかあったんですが、屏風ってふつうの絵画作品と違ってジグザグしてるから一度に全部を見ることができなくて、一枚一枚を順番に見ていくなかでストーリー展開が生まれるというのが面白い形式だなと思った。漫画のコマ割り的なセンスを感じる。
テンションがあがる日本の洋画
日本画の次は怒涛の西洋画コーナーです。
まずは東近美といえばの騎龍観音!
でかい!龍がめっちゃポップ!背景のドラマティックさも相まって特撮みがある。
龍に乗る観音さまというテーマ自体はよくあるやつらしいのだけど、それをゴリゴリの西洋画のタッチでやってやったぜ!という作品らしい。
ちなみに当時は炎上したそうです。そんで売れなかったらしい。かわいそう。
美術の教科書で見たことのある《鮭》は騎龍観音の向かい。
大きさ的にもだいたい新巻鮭のリアルサイズぐらいなのかな。切り身しか見たことないのでよく分からない。
この作品はあえてめっちゃ暗い部屋に置いて蝋燭の光とかで見たらしい。そういう鑑賞環境だとますますリアルに見えるのかもしれません。
あとキャプション読んでビビったのはこれ。
和田三造の《南風》、24歳の時の作品らしい。マジで????
めちゃかわいい生き物のみなさま
西洋画コーナーのすぐそばには彫刻・工芸コーナー。
高村光雲の《老猿》も教科書で見たことのある作品でテンションが上がる。
教科書だと全然サイズ感が分からないので、なんとなく木彫りのクマの置物みたいな、床の間にひょいっと置けるぐらいのサイズを想像していたんですが
岩に座ってるみたいな感じなんですけど、これで高さ1メートルぐらいあります。マジのボスザルのサイズ。でけー。
あと言われるまで気づかなかったんだけど、左手に毟った羽根を握ってる。鳥を獲ろうとしたけどギリギリのところで逃げられちゃったよチクショー、というシーンらしい。この渋くて鋭い感じの目線は飛んで逃げてゆく鳥の姿を追ってるのかと思うと途端に表情に人間っぽさを感じる。
あと猛禽類大好き人間としてめちゃくちゃ嬉しかったのがこの12匹の鷹と
鷲。
あとこれもテンション上がったカニノケンカ(重文)。
超絶リアルなカニ2匹が鉢にくっついている。
明治時代に作られたものの、当時は技術を見せつけるためのキワモノ的な扱いだったらしい。切ない。重要文化財に指定されたのは2000年代だそうです。
頭からっぽで見てもめちゃくちゃ楽しい!
本当はもっともっとたくさん作品があったんですが、写真の手持ちが尽きたのでいったん終わり。
青木繁の竜宮城みたいな作品とか、関根正二の夢の中みたいな不思議な作品とかもめっちゃ良かったです。作品点数はそこまで多くはないけど一個一個じっくり見ていくと無限に時間が吸われる。長くいた感覚はなかったんですが結局1時間半ぐらい滞在してました。
私が訪問したのは3月21日ですが、ここからいくつかの作品は展示変えがあるとのことなので、もう一回行っても良いかな〜という気持ち。悲母観音見てみたい気がする。
彫刻とか工芸作品は通期展示が多いですが、繊細な絵画作品なんかは展示できる期間に制限があることもあり、けっこう入れ替わるっぽいです。
物販もけっこう力が入っていて、鮭ポーチとか鮭キーホルダーとかいろいろ面白いアイテムが並んでました。
企画展を見た後にコレクション展も見たのですが、これもまたボリュームたっぷりで見応えがあって楽しかった!気が向いたら別途記事を書くかもしれません。
【追記】
勢いのまま書いたらめちゃくちゃ読みづらいなということに気づいたので、いま流行りのChatGPTちゃんに私の記事を読み込ませて、「プロの美術評論家みたいにリライトして!」とリクエストしてみました。
その結果、賢そうな雰囲気と引き換えにちょっとウソが混じりました。
どんなふうに書き換えられたのか気になる方はこちらの記事をどうぞ。
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