豆と桜のコンポート
昨日は4月1日でした。
「この日だけは嘘をついても許される」
エイプリルフールとして知られていますが、
そんな意気地もユーモアセンスもないのでしょう、毎度つきそびれている気がします。
四月一日という苗字は、わたぬきさんと読むと、着物を着るようになってから知りました。
昔は一着の着物を大切に着回し、
夏になれば裏地を取り、秋になればまた裏地をつけ、冬には間に綿を入れ、
そして春にその綿を抜いて、というふうに大事に着ていたとか。
遠い昔の昨日は、家族みんなの着物の綿を抜く日でもあったようです。
四月に入り、雨風の時期を越えて、爽やかな暖かさが巡ってきました。
心がへこたれ気味な時には、
むせかえるように咲き誇る満開の桜が怖いと感じることもありますが、
打ち付ける雨も逆風も乗り越えて健気に咲く桜の花々にはまた違った顔がある、とあらたに気づいた、今年の春。
朝日のやわらかな早朝に
桜を眺め、元気をもらいながら歩き
駅前でコーヒーを一杯ゆっくり飲んで、
その時に浮かんだ思いつきに
帰ってからさっそくとりかかることにしました。
いつもおいしい野菜の届く
ゆい自然農園さんの紫花豆。
800m以上の高地に育つ豆だそうです。
水につけたままで、
甘く煮ようか、ピュレにしようか迷っていたのですが、
朝の駅前で思いついた この豆の魅力のあれこれを楽しむことに。
一日水につけて戻した豆を鍋に移し
ゆでこぼしたあと、やわらかくなるまで1時間ほど煮ます。
半分は、食後のおやつに。
煮豆でも、あんこでもなく、
桜風味のシロップでことこと、コンポートにしてみました。
豆のコンポートは、
しょうがと八角の香りにするのが好きで、
桜の風味と豆は、
花の塩漬けの塩を活かした料理の方に向くことが多く、
シロップ煮での組み合わせは、初めて。
これも大好物の、あんこなしの生八つ橋の皮を添えて、
煮たりんごと共に、くるくる巻いて頂きました。
生八つ橋の皮は、
日本中のおいしいお菓子がギュッ!と集まった、
デパートなどの諸国銘菓のコーナーに必ずあります。
もちろんその地に赴いて頂くのが一番でしょうが、
まるで、どこでもドアの向こう側のように、
いつか行きたかった場所のあの味に
いくつも手が届く幸せ。
たとえ忙しくても、ここを素通りするのはなかなか至難の業です。
抹茶の皮はこの豆をまき、ニッキの方は、りんごの甘煮を。
りんごと生八つ橋の組み合わせも、ニッキがいい働きをしてくれて、なかなか手が止まりません。
あんでなくコンポートだから、巻いて楽しく頂けます。
桜の塩気が甘味を際立たせてくれて、おいしく出来ました。
残りは紫花豆のカレー風味炒めに仕立てました。
ゆでた豆があれば、ほんとうに簡単です。
クミンシードを炒め、玉ねぎのみじん切りも加えでさらに良く炒めて
トマトがあればきざんで一緒にじっくり炒めると、さらにカレーらしい感じになります。
シナモン、クローブを振って(スパイス類がなければカレー粉でも。)
玉ねぎをしっかり炒めたら、ゆでた豆を入れ、さらに炒め、
全体がなじんだらブイヨンをひたひたに注いで5分ほど煮ます。
パプリカ、アスパラも加え
火が通ったら塩胡椒で調味します。
仕上げに新玉ねぎ、パクチーをきざんで和えます。
スパイシーな味わいとゴロゴロした食感。
雑穀ご飯ともよく合います。
このカレー煮込みで、ブロッコリースプラウトやレタスなどと一緒にラップサンドも。
これはイケアで買った冷凍の薄焼きパンを温めたもの。
豆は、世界中に数多あって、
トマトと煮たり、かたまり肉と根菜とをブイヨンスープで煮込んだり、蒸してサラダにも。
また、スパイシーにしてクスクスとあわせたり、砂糖と少しのしょうゆで煮豆にしたり、
ピラフのような炊き込みご飯にも、つぶしてハーブ入りのピュレやスープにも。
あわせる素材や調味料、スパイスで可能性がここまで広がると、
なんだか食べ歩きの旅でもしているような面白味があるのです。
それに太りにくいのも嬉しいところ。
紫花豆はカルシウムや鉄分も豊富な優等生。
やせたい方にも、心穏やかにいたい方にも、おすすめです。
本来、極めて面倒くさがりの私。
その背を、今日は桜が後押ししてくれたような気もしています。
昨日も桜並木を歩きながら、
春に気持ちが浮き立つのは、なぜだろうと思っていました。
新芽、つぼみ、開花、満開、風雨に耐える姿、
そして花吹雪。
それぞれの姿から、
もろもろ足りないところの多い私へ
勇気や希望のちからを幾重にも降り注いでくれている、と言うのも小さくない理由かもしれません。
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