#小説
枯れない花を抱いて歩く
緑の細い茎を水中に浸し、ハサミを持つ手に力を入れる。わずかな抵抗は一瞬で崩れ先端からニセンチほどが皿の底に落ちた。声を出さずに三秒数える間、斜めの切り口が水を吸い上げる様を想像する。
茎から花びらのように見える青色のガクへ。手まりのようなアジサイの、花だと思っていた部分は装飾花と呼ぶのだといつもの花屋さんが教えてくれた。本物よりもお飾りのほうが華やかだなんて。やがて水は、ガクの中心に慎ましやか
近くて遠い、あなたと私。【#クリスマス金曜トワイライト】
私があなたを意識し出して、もうすぐ2度目の冬がきます。叶わぬ恋、ということは分かっていました。想い人のいるあなたが私に振り向いてくれる可能性なんて、万に一つもありはしないという事も。
それでも。
私は賭けてみたかったのです。あなたが私に振り向いてくれる、その万に一つ。いえ、億に一つの可能性に。
◇・◇・◇・◇
あなたの想い人が、私たちの勤める会社のビル1階で働いているのは知っていました。「