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「呼量を減らす」「CXを高める」第一歩の作業とはーーモニタリングの目的を再考する
久々の更新となってしまいました。
あまりにも慌ただしくバタバタしておりました。
で、この間に「コールセンター白書2024」を何とか発刊したのですが、予想はしてましたが、コールセンターの人手不足はさらに加速しているようで、それはオペレータだけでなくSVの不足も深刻化しているみたいです。
人手不足対策=自動化
SVの件はまたちょっと別に書くとして、オペレータの離職予防については、モチベーション向上施策よりも、「自動化(自己解決)の促進」に思いっきり振り切りつつある気配も感じます。
チャットボットの導入率は調査開始以来、はじめて過半数に達し、ボイスボットはまださほど導入されていないものの、導入意欲は高いままです。
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人が配置出来ない以上、入電を抑制したいという思いは十分に理解しますが、その前提条件として「CX/CSは低下させない」ということがあることは言うまでもありません。単に窓口を減らす/隠すだけでは、さらに深刻な問題を生むだけです。
ちなみにコールセンターの「応答率」ってのは、母数がPBXへの着信数なので、いわゆる「話中」はカウントされてません。つまり、応答率95%でも、外線を絞って話中率が高い可能性もあるってことで。この意味でも、応答率は見せかけの接続品質指標なのです。
で、最近、改めて思ったんですが、「解決できるセルフサービス」を開発・改善する取り組みの第一歩として「No(目的が達成できなかった/要望を承れなかった案件)の検証」が必要だな、と再認識したのです。
「Web見て電話したんだけど」のモニタリング
このデータにあるように、すでに言い古されていますが、消費者の多くはコールセンターに電話する前にWebサイトを調べています。つまり、自己解決できないから電話しているわけで、電話を減らすにはWebで解決できるコンテンツやサービスを展開すればいいわけなんですよ。
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すでに実践している会社も多いと思うんですが、改めて訴求したいのは、「Web見て電話したんだけど」「ホームページ見て〜」「サイト見て〜」という発言を含んだコールを対象とした徹底的なモニタリングと、把握・分析です。
あったり前じゃん、と思うかもなんですが、取材しててこの話が出たこと、ほとんどないんです。というか、たぶん、多くはやってません。コンタクトリーズンの把握と分析くらいはやってるかもしれませんが(それでも「白書」では実施率半分くらいですが)、ここでいいたいのは、それだけではありません。
コールを減らすためにチャットボットやFAQを強化するというのはまぁ、かなり実施している企業が増えています。最近、弊誌の掲載事例もホントにこればっかりです。
ただ、それ以前の「コンタクトの動機」を洗い出す作業が不足していると感じます。
コンタクトリーズンの把握と分析はもちろんなんですが、用件そのものではなく、「Webで解決できない案件とその理由」を知ることが、サービスやプロダクトのペインポイント(痛点)をつぶす取り組みのエビデンスであり、CXを高める根本になるはずなんですよね。
「目的が達成できなかったコール」こそが真の宝
昔、まだチャットボットとかがなかった時代、モニタリングの取材をしてて、「モニタリングの対象に、“申し訳ございませんが承ることができません”“ご対応が難しいです”という、(顧客の)目的が達成できなかった案件のみを抽出するモニタリングこそ、コールセンターの価値を高める」と教わったことがあります。
オペレータの対応品質をチェックするのではなく、自社ソリューションやプロダクト、サービス、あるいはデリバリープロセス、あるいはセンターの仕組み(ナレッジなど)のクオリティをチェックするモニタリングというわけです。当時は、「このモニタリングはSVではなく、ビジネス視点をもっている(はず)のセンター長がやるべき」という意見もありました。
これ、すっごい有効で重要な取り組みと思って記事を書きましたが、残念ながらあまり普及しなかった考え方だったと記憶しています。
本当の意味で呼量を減らすならば、これにならい、「ネットで解決できなかった案件」を徹底的に調べるべきです。
それがFAQやチャットボットのクオリティが低いから、という理由だけというのは、これは僕の勘ですがさほど多くないと思います。おそらく、それ以前の問題です。
昔は、「承れません」つまり、「No」のコールを抽出するのも結構、大変でしたが、いまは音声認識&生成AIがあります。「ネット見たんだけど」「Web見て」という言葉を自動検索して抽出するのは、そこまで大変ではないと思います。
これ、ぜひちゃんとやってみてもらえないかなー。あるいは、「ウチやってる!」という運営企業、「こんなのずーっと提案している」といるITベンダーさん、ぜひ意見交換しましょう。事例とか提案ソリューションが集まれば、本誌で記事にします(^^)