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2020年、AIでCSはどう変わる?業界のトップランナーが語る未来予測【CS HACK#40 レポート】

CS HACKのコミュニティ発足から3周年の記念イベントとなった今回、「改めてこれからのCS、UXを考える会にしたい」という思いで考えたテーマが「AX」でした。

デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)は、皆さんも聞いたことがあると思います。「AX」は、そのAI版。「AI Transformation」、略してAXです。

今や、CS業界向けのカンファレンスでも専用エリアが設けられているほど、AI活用はCS、UXの向上に欠かせないものになりつつあります。

「AXはCSにどんな未来を見せてくれるのか?」

今回は、そんな疑問に答えてくれる、AX時代のトップランナー3名に集まっていただきました。

<ゲスト登壇者>

飯塚さん_note

外資系ソフトウェアベンダーにて15年以上にわたり、システムエンジニア・エバンジェリスト・コンサルタントなど様々な職種を通じてコンタクトセンターを中心とした顧客サービス業界に貢献。その多彩な経験を元に、大規模から中小規模まで、カスタマーサポートの設立から運用、ITのコンサルティングを行う。また、CX 分野のサービスデザインに注力し、企業における顧客価値向上に取り組む。業界誌への連載や講演を通じて、CXの重要性と価値を分かりやすく解説。 2017年6月、LINE株式会社にLINEカスタマーコネクト(現在はChat/Call APIに改称)の事業推進者として参画。 広告事業本部にて「カスタマーサクセス室」を設立し、ボイスイノベーション室 室長を経験した後、2019年7月より現職。

小田さん_note

1980年京都府生まれ。サイバーパトロール・インターネットのコールセンターBPOのイー・ガーディアン株式会社の創業メンバーとしてジョイン。2007年より取締役として営業部門、情報システム部門を統括。インターネットサービスやゲームアプリなどのコミュニティのモニタリング・パトロールや、コンタクトセンターサービスの提供などに従事。2017年10月にAIビジネス開発を支援するカラクリ株式会社のCEOに就任。

米山さん_note

2016年サイバーエージェント入社、2016年11月よりAIチャットボットサービス「AI Messenger」の事業責任者として従事。2019年8月より株式会社AI Shiftの代表取締役に就任。

<主催・司会>
カスタマーサポート エバンジェリスト
藤本 大輔

2019年は音声×AIに注目が集まった⁉より身近に、存在感を強めるAI

藤本:最初のトークテーマは「UXにおけるAIの存在をどう捉えているか」です。UXの向上は、CSにおいて常に重要なテーマですが、AIはUXにどのような影響を与え、どう入り込んでくるのでしょうか。

飯塚:CSの市場でAIの存在感が強まっているのは間違いありませんが、「ブレイクスルーはまだ先」だと感じています。ここで言うブレイクスルーは、AIが自動でユーザーに対応し、しかも人が対応する場合と満足度が変わらないレベルに到達することです。

今、CSにAIを取り入れるとなると「特化型」が多い。これは人間の代替にはなりません。ここからもっと汎用性が高まり、生活の中にAIが溶け込むようになってきたら、UXにおけるAIの存在はかなり大きくなってくると思います。

米山:AIを使ってUXを高めるにあたって考えるべき重要なポイントの1つが「人とAIの役割分担」です。現在は、自動化しやすいヒアリング部分をチャットボットに任せ、その結果を人が見て判断・対応する流れが主流です。この役割分担を最適化していくことが、AIを上手に取り入れることにつながるのかなと思います。

つい先日、スタバがAIを活用して店舗内の自動化に取り組んでいるというニュースがありましたが、その中でも「人の労働はなくさない」と言われていました。なぜなら、「いらっしゃいませ」「寒いですね」という一言がリピートにつながるからです。人とAI、それぞれがより得意な部分を見極め、専念できるようにしていくのが理想ですね。

▼【米国株動向】スターバックス、AIを活用し、顧客と従業員の満足度向上目指す
https://m.finance.yahoo.co.jp/news/detail/20191204-00000015-motleyfool-world

小田UX向上のためにAIを使うのは、もはや当たり前。あらゆるところで取り入れられているので、使わずに成長する、より高いUXを実現することはできません。「使うかどうか」や「必要なのか」ではなく、「どう使うか」を議論できるようになっていくべきだなと思っています。

藤本:ありがとうございます。続いて、よりAI活用のイメージが湧くよう具体例を聞いていければと思いますが、2019年のAI活用事例で注目していたものなどはありましたか?

小田:2019年は、音声まわりの技術のインパクトが大きかったですよね。Googleが発表した音声認識AIも話題になりましたし、身近なところで言うと、NHKの紅白歌合戦で美空ひばりさんの歌声が再現されたことも各所でニュースになりました。人間の言語に近しい音声認識、音声合成が出てきたのが印象的でした。

▼AI美空ひばりの歌
https://youtu.be/nOLuI7nPQWU

藤本:確かに、AI美空ひばりはめちゃくちゃ話題になりましたね。米山さんはどうでしょう?

米山:ゲームのCSで活用されている特化型Botの事例が面白かったですね。このBotは、「端末を変えるときのデータ移行」に特化していて。Botがデータ移行したいユーザーの状況(レベル、キャラなど)をヒアリングして、その内容をオペレーターにメールで送り、対応する。この問い合わせってゲームではめちゃくちゃ多いので、自動化できるとインパクトがあるんです。

こんな風に、特化型Botで自動化しやすく、インパクトも大きい部分を解決していく事例は面白いなと思います。今後もっと増えてきそうですよね。

飯塚:まさに話に挙がっていた音声×特化型AIの事例なのですが、2019年に店舗の電話予約などをAIがお手伝いするプロジェクトLINE AiCallを発表しました。都内の飲食店で実証実験して、これから実用化の段階ですが、このAIがすごいのは、「小気味いいやりとり」なんです。

藤本:LINE AiCallを使ったやり取りの音声を聞きましたけど、想像以上に自然な会話で驚きました。

飯塚:そのあたりは、数理的にやるのが難しい。でも、店員さんと話しているような体験を提供しようとチャレンジしましたね。

CS×AIの未来予測。どんな場面で、どう使われるようになる?

藤本:続いて「これからのAI活用」の話をしていければ。2020年、CSにおけるAIはどのように進化していくと思いますか?

米山:今までは独立して扱われていた技術やデータを組み合わせて、より高度に活用されていくのではないかと思っています。例えば、画像OCRとRPAを組み合わせるとか、Botが収集したデータを使って分析して行動予測、解約予測など。

藤本:ただ画像認識してテキストを抽出するだけじゃなく、そのデータをさらに分析に使ったりってことですね。飯塚さんは、どんな領域に注目されていますか?

飯塚:今後のAI活用でもっとも気になっているのは「パーソナライズ」です。汎用型になれず特化型のチャットボットが多い中で、個人に寄り添った回答ができるようになっていったら面白いなと。

その文脈で、「チャットコマース」に注目しています。単純なFAQじゃなく、その人の好みを加味したレコメンドなどができるようになれば、チャットボットを接客要員として見れますよね。

小田:私も今後「パーソナライズ」は鍵になりそうだなと思います。2020年の1年で、AIはパーソナライズされた回答者ができるようになるとも予想しています。レコメンドの機械学習とチャットボットが連携することで、実現していくだろうなと。

藤本:今までのチャットボットなら、質問Aに対して回答Aで答えれば正解で、それだけ。でも、もしベテランのオペレーターなら、「質問Aを聞く人は、回答Aに+αでこれも伝えるといい」みたいなことを考えて対応することがあると思います。チャットボットもそういうことができるようになるんですかね?

小田:なると思います。人の経験知をどれだけ形式知化できるかですよね。領域的には「予測学」や「エクスペクトロジー(期待学)」の範囲です。

AIで対応するにあたっての問題は、学習されていないデータが入ってきたときはどうするか。そこをCRMのようなデータによって文脈を把握して一定の予測ができるようになるのではないでしょうか。

藤本:ありがとうございます。ここで会場からの質問を取り上げたいのですが、「一問一答型チャットボットに対するFAQページ、シナリオ型チャットボットに対する入力フォーム、チェックリストという代替案があるなかで、なぜあえてチャットボットを選択するのか、その価値は何か?」と。チャットボット以外のやり方もある中で、あえてチャットボットを選ぶ理由ですね。

米山チャットボットは「人が介入できる」のが大きな違いです。ゆえに、ひとつのチャネルとして捉えられます。電話、メール、チャット、チャットボット、その並びにFAQは入らないですよね。

あとは、FAQやEFO、メールサポートみたいな既存の手段では救えなかった人を救える可能性がありますよね。最適なタイミングで最適なチャットボットがあることで、満足度が上がり、売上に繋がるとか。

小田:機能として見れば「チャットボットじゃなくてもできるよね」というのはその通り。ただ、FAQとチャットボットはそもそもの設計思想が違います。

FAQは、困ったときにユーザー自身が見に来て解決するもの。対してチャットボットは、カスタマージャーニーの中でのつまずきを防止するように設計していくもの。迷いそうなところに先回りして設置したり、ポップアップで話しかけたり。

どんなにFAQを作り込んでも、そこに来てもらえなければ何も起こらない。カスタマージャーニーベースで作り込めるチャットボットにしか無い価値があります。

想像以上に失敗ケースも多い?AXを成し遂げるために重要なこと

藤本:最後にですが、「実際AIを導入するにあたっての壁の乗り越え方」を聞いていこうと思います。

飯塚:AIに限った話ではありませんが、課題や目的が不明確で、手法ありきの導入は失敗率が高い。「とりあえずAIで何かしたい」から始まるものは、POC死したり、POCして導入に進んだけど上手くいかなかったりすることが多いです。

藤本:壁を乗り越えるには、課題や目的の明確化が大事?

飯塚:そうですね。「AIでこんなことしたい」という話を聞いていると、実はAIではない手段の方が簡単に実現できたり、逆に現状のAIにはできないことが必要だったり。

本当の課題は何か、解決方法としてAIがベストなのかを考え抜くのが、重要な第一歩なのかなと思います。

米山:課題設計が曖昧、責任者が曖昧、KPIが曖昧、完璧を求めすぎる、などはよくある失敗パターンですよね。

僕が特にもったいないと思うのは、KPIが曖昧なパターン。「目的に沿うKPIは何か」を突き詰めていないケースは多いです。

例えばチャットボットだと、Botの応答率、正解率をKPIにしがち。でも実際に大切なのは、「お問い合わせ全体の何割をBotで対応できたか」だったりします。

KPIが変われば、施策も変わるので、重要なKPIと達成までのロードマップを明確にしておくべきです。

小田:お二人が挙げていないところだと、AI導入がどれだけインパクトがあるのか、事前予測の大切さは伝えたいです。

当たり前に聞こえるかもしれませんが、意外と見落としがち。私もそれで失敗したケースがありました。「問い合わせへの回答をAIを使って一部を自動化したけど、想像以上にユーザーに使われなかった」みたいなことです。

このチャットボットは誰が使うのか、それは何人くらいいて、どれだけインパクトがあるのか。ここを精緻に予測して、効果を考えるようにすべきです。せっかく作ったのに誰にも使われないとか、切なすぎるので(笑)。

藤本:めちゃくちゃ重要になる観点が満載ですね。ありがとうございました!

パネルディスカッション後には質疑応答、交流会を行いました。
さらに今回は3周年を記念したクイズ大会も開催!○×クイズで盛り上がりました。

5周年、10周年と続けていけるよう、これからもCS HACKをよろしくお願いします!

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