米国政府のアクセシビリティ政策 その2(DOE OSEP)
文科省 OSEPが進める教育における情報のUD
日本だと文科省にあたるDOE(Department of Education)のセッションでは、OSEP(Office of Special Education Programs)が、ゼロ歳児から21歳までの障害のある児童生徒への教育プログラムに、ICTやAT利用をどう進めるか話していた。OSEPが進めているプログラムは、ETechM2と呼ばれる。 Educational Technology Media and Materials Program のことである。日本では特殊教育というと、特別支援学校や特別支援学級のことを指すが、欧米ではインクルーシブ教育が基本なので、これらのプログラムは一般の学校で行われているものを指す。この中では、ETechM2の目的として、以下のような内容が挙げられていた。
1、 テクノロジーを開発し、デモし、利用することを推進し
2、 教室内での教育効果を高めるようデザインされた教育活動を支援し
3、 教室内での使用に適したキャプションやビデオ解説のサポートを提供し4、 障害のある子供たちにアクセシブルな教材をタイムリーに提供する
この目的を達成するために、OSEPは、次の7つの技術分野に投資しているという。
1,アクセシブルな教育素材
2,技術の研究と開発
3,音声解説とキャプション
4,高等教育機関で人事準備プログラムにおける技術利用
5,学校のシステムで支援と教育技術を利用
6,幼児期からのSTEM教育(science, technology, engineering and mathematics)
7,技術の実装と統合
それらを実現するために、例えばアクセシブルな電子書籍を提供するためのリソースとしてBookShare(書籍をアクセシブルにする民間組織 今では出版社が直接UDなデータを提供する。130万タイトル以上を保有)や、NIMAS(米国の教科書アクセスセンター)などが挙げられており、インクルーシブな教育センター(CITES)、アクセシブルメディアセンター(NCAM)などが利用できるとしている。米国では国を挙げて、特殊教育においてテクノロジーを活用することを推奨しているのである。障害のある子どもが一般の教室でみんなと一緒に授業を受けるために、テクノロジーをどんどん使おうとしているのだ。もし教科書や書籍がアクセシブルであれば、視覚障害やディスレキシアなど読書障害の子どもが本を読める。教室の講義にリアルタイム字幕やビデオ解説がつけば、聴覚障害や母国語の異なる児童にとって授業の把握が格段に楽になる。支援技術をきちんと学んだ教師がいることで、多様な子どもたちの学びの質は向上するのである。
日本でもようやくGIGAスクール構想で児童一人一人にPCやタブレットが配布されるようになった。障害のある児童も、教科書はそれなりにアクセシブルになった。だが、学校によって、教科書によって、アクセスの方法は一律ではなく、教師の負担も多いと聞く。支援技術に詳しい教師の育成も課題である。もちろん欧米でも万全とはいえないのだが、OSEPのこのような発表を聞いていると、日本の文科省も、例えば発達障害の児童に対し、ICT利用に関する事例を紹介しているようだが、これを学校の先生が学ぶ場は地域やオンラインで存在するのだろうか?現場の声を聞いてみたい気がする。