2024年 メタルコアベストアルバム20選(後編)
どうもです。
2024年の総まとめ的な記事、第2弾。
最終的に「2024年 ベスト音楽総まとめ」にも反映される「2024年 メタルコアベストアルバム20選」です。後編分の10枚を紹介していきますが、前編は以下になりますので、未読の方はこちらから確認お願いします!
改めて選定基準も記載しておくと以下の通り。
#11『HYPERVIOLENCE』/ Windwaker
2ndフルアルバム。前作『Love Language』までボーカルを務めたWill Kingが脱退し、その後すぐに嘗てのギタリストLiam Guinaneがボーカルとして再加入。シンセ担当のConnor Robinsも加入し、新体制では初のアルバム。新体制以降(2022年11月~)のシングル6曲を含む全13曲を収録。
"ハイパーポップメタル"を自ら掲げる様になった彼等。昨今のトレンドでもあるハイパーポップの因子は確かに感じますが、革新性を問われると意見が分かれるかもしれません。ただ間違いなくWindwaker節は健在です。抜群のセンスを活かした余りにもキャッチーなメロディが溢れ、シンガロングしたくなる中毒性の鬼。デジタル感の強い派手で分厚いシンセが鳴り、エネルギッシュで予測不可能な曲展開の中で、それを成し遂げています。そして、Vo. Liamが魅せる多彩なボーカルワークも本当にエグイ。伸びやかなクリーン以外にも存在感を遺憾なく発揮しており、ブルータルなスクリーム、ヒップホップのフロウ、自らグルーヴも生み出して、常に楽曲の中心を担っています。ボーカルエフェクトが良い意味で耳に引っ掛かるのもグッド。ライブセトリの様なアルバム構成も素晴らしく、幅広い音色の数々や展開美を備えているので、是非お気に入りの楽曲を見つけて欲しいです。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.1「Infinity」、Tr.2「SIRENS」、Tr.3「Fractured State of Mind」、Tr.5「The Wall」、Tr.9「Vertigo」、Tr.10「Hypnotised」、Tr.12「Tabula Rasa」
#12『Dreamscape//Kaleidoscope』/ Crystalview
2nd EP。3年ほど音沙汰が無かったんですが、今年再始動!先行リリースされたシングル2曲を含む全7曲を収録。
キラキラとしたFuture Bassをベースにした雰囲気で、Future Bass特有の複雑でユニークなグルーヴに、プログレッシヴ・メタルコアのDjentyなリフやドラマ性を見事に融合させたスタイルが唯一無二。スペーシーでビビッドなシンセサウンドと、オートチューン越しにセンチメンタルを伝える艶やかな歌声はハイパーポップの影響も色濃く感じさせます。浮遊感を十分に効かせた繊細美麗なメロディ、泣きと緩急を織り交ぜていく開放的な曲展開も絶妙で、先の歌声からは想像できないスクリームが迫ってくるギャップも堪らないです。Tr.1とTr.6に関しては、Tr.7「「.Luna:://Blossom.」」を分割及びアレンジした構成を成しており、神秘性を放つ女性のデジタルボイスも相まってSF映画を見てる様な物語体験ができる1枚でした。そんな映画として捉えた時のピークは新録Tr.5「_Kaleidoscope:」。本当にヤバすぎて笑顔が絶えなかったですね。ジャケットイラストも2024年ベスト。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.2「:.aurora)」、Tr.5「_Kaleidoscope:」、Tr.7「.Luna:://Blossom.」
#13『Odyssey』/ Sable Hills
3rdアルバム。2023年6月に加入したGt/Vo. Wataruを迎えた新体制では初。何度かの延期を経て、ドイツの名門レーベル「Arising Empire」からリリース。2023年以降のシングルに新録5曲(内inst2曲)を加えた全11曲を収録。
国産トップ名盤。延期の都合上、シングルカットが多くなりましたが無問題。それだけ何度でも聴きたくなる要素に溢れていました。メタルの伝統美をモダンな表現に再解釈していくスタイルは健在で、根底にある鉄クサくて熱いメロディ重視志向の独自性は他の追随を許さない凄みすら感じます。メロディアスで躍動感溢れるギタープレイを際立たせたまま、ボーカルが重なっていく瞬間が堪らなく好き。Gt/Vo. Wataruもイケボで美しさを添えつつ、全体の重厚感を底上げしてくれました。爆裂タイトなドラムによるグルーヴキープがあってこそ成し得る、フック満載の曲構成の巧さにも舌を巻くレベルで、Tr.4「Battle Cry」とTr.5「A New Chapter」は特に秀逸。どの楽曲もライブを想定して制作された熱を感じるのも彼等の魅力ですね。アルバムを締め括るTr.10「Forever」⇒Tr.11「Tokyo」も泣ける程に素晴らしかった…。琴の音色や日本語詞もですが、初めて聴くのに知っている、遺伝子レベルで日本人に刻まれたエモーショナルな和メロに滾りまくり。日本を大切にしながら世界へ羽ばたいていく彼らの大躍進が今後も楽しみで仕方ないです。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.2「Odyssey」、Tr.4「Battle Cry」、Tr.5「A New Chapter」、Tr.8「No Turning Back」、Tr.9「Bad King」、Tr.11「Tokyo」
#14『Second Shadow』/ Inertia
待望のデビューフルアルバム。まとまった音源は2022年のEP『Memoria』ぶり。2024年にリリースされたシングル4曲を含む全13曲を収録。
今年もデビューアルバムと幾つか出逢う事ができましたが、彼等はガチで期待の星。先行シングルで抱いた期待を優に超えてきた名盤でした。現行のBad Omensを彷彿させる、どこかセンチメンタルで幽玄な雰囲気が常に漂っていながらも、コントラストをより激しく表現してる印象ですね。ヘヴィな熱量と冷たい温度感を両立させており、耽美でありながらキャッチーなメロディが映える構成が目立ちます。やはりグッドメロディは正義。普段は落ち着いたトーンと甘いマスクで、気付いたらスイッチが入ったかの様に牙を剥き出しにしてくるアグレッシブさも兼ね備えており、メタルコアである事を誇示する様なブレイクダウンの破壊力は本当に魅力的。ボーカルもスムースで伸びやかなクリーンと、野太く強烈なスクリームを器用に使い分けており、どの楽曲でも存在感抜群。Tr.3やTr.9が顕著ですが、美しいタッピングやDjentyなリフなど技巧派な一面も偶に魅せてくれるのもツボ。総じて、抜群のメロディセンスと、独自の絶妙な美意識やバランス感がしっかり窺える1枚でした。Tr.11「Too Far Gone」は特に名曲ですよ。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.3「Dying To Let You Go」、Tr.4「Static」、Tr.8「Second Shadow」、Tr.9「The Seeds That You Never Sow」、Tr.11「Too Far Gone」
#15『DMNS』/ Alleviate
待望のデビューアルバム。Clean Vo. Timo(Our Mirage)、Shout Vo. Marius(Breakdown's at Tiffany's)、 Gt. Ramon(The Evolutionist)、Gt. Marc(We Are Perspectives)、 Dr. Yunus(Time, The Valuator)のメンバーで2020年に結成。2023年以降のシングルに新録2曲を加えた全10曲を収録。
昨今の新録少ない問題をも吹き飛ばす良曲揃いで、最初と最後に完璧な新録曲を持ってきた処からも、只ならぬ熱量や覚悟を感じて痺れた1枚。個々人のバンドで磨かれたセンスやスキルが融合する事で、王道を貫き通した厚みと、アプローチの幅広さを兼ね備えてます。技術力に裏打ちされた骨太で重厚なサウンドと、有り余るエネルギーから創り出されたアグレッシブなグルーヴ。ダークでメランコリックな雰囲気かと思えば、光が差し込む様なメロディアスパートで滲み出すエモーショナル成分…これがしっかりキャッチーなので心を掴んで離さないんですよね。シンセの量感や、サビ入り差分、裏メロの存在感、畳み掛けるタイミングなども緻密に練られている印象。ブレイクダウンも強烈かつ多彩でニューメタルコアやデスコアに傾倒する芸当も魅せてくれました。あとは何と言っても、極悪スクリームとメロウなクリーンによるコントラストの牽引力は凄まじい限りです。"人生での最悪の瞬間にこそ自身の強さを見出し、乗り越えよう"と、リリックに込められたメッセージもコ〇ナ禍に結成された彼ららしいモノだったと思います。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.1「DMNS」、Tr.2「Trying to Survive」、Tr.6「Alive」、Tr.7「Better」、Tr.9「Within Worlds」、Tr.10「My Demise」
#16『ARE YOU AFRAID?』/ Chaosbay
4thアルバム。2022年ベストアルバムにも選出した前作『2222』から2年ぶりのリリース。2024年にリリースされたシングル5曲に、新録6曲を加えた全11曲を収録。
今回も名盤。キャッチーでメロディアスな構成力はやはり秀でており、如何にして耳に脳に心にメロディを焼き付けるかを徹底しているなと思います。シルキーで伸びやかな歌声を持つGt/Vo. Jan Listingの存在感と牽引力は改めて圧倒的ですし、それを盛り立てる美しいコーラスや、ダイナミクスと繊細さを持ち合わせたサウンドも特徴的。展開に頼らずとも、ごく自然とスケール大きくドラマ性を帯びているのが本当に素晴らしい。フィーチャリングゲストを呼んだTr.6, Tr.8, Tr.10も、お互いがお互いを引き立てる申し分無いクオリティでした。プログレ系フレーズや、サイバーチックなシンセ、太く歪んだパワフルなリフは前作同様の嬉しい要素。Tr.5「PSYCHO」の終盤が顕著でしたが、演奏のみのパートを設ける事で楽曲前後をクールかつシームレスに繋げてくれるのも良かったですね。コンセプトアルバムだった前作よりも、幅広いトピックを取り上げ、時に真っ直ぐに、時に哲学的に想いが綴られた歌詞にも是非注目してみて欲しいです。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.1「ARE YOU AFRAID?」、Tr.2「MANIAC IN THE MIRROR」、Tr.4「EYE FOR AN EYE」、Tr.6「DON'T KILL ME」、Tr.7「FROM SOLDER TO PROPHET TO SINNER」、Tr.10「PHANTOM HEART」
#17『Hope & Hell』/ Our Hollow, Our Home
4thアルバム。2023年2月にGt/Vo. Tobias Young以外が脱退し、その後すぐにオーディションにて、新Vo. Gaz King(ex-From Sorrow To Serenity)、Gt. James、Ba. Matt、Dr. Kiernanを迎えた新体制初のアルバム。ですが、2024年7月に解散の発表をした為、本作がキャリア最後のアルバムとなりました。2024年にリリースされたシングルに、新録5曲を含めた全10曲を収録。
名盤とさせてください。正直、最高傑作だった前作『Burn In The Flood』でやり切った、もう限界かもしれないと感じさせる節もあった1枚ではありました。ただそれでも、OHOH節全開の美メロを奏で歌う、ツインボーカルスタイルの真骨頂を魅せつけられると、やっぱり最高だよと思わずにはいられなくて。新Vo. Gazの瞬発力高い系のスクリームに合わせて、絶妙のタイミングで差し込まれるGt/Vo. Tobiasのクリーンは、他には代え難い胸に迫る熱さがありました。要素的には、壮大なオーケストラサウンドに包まれたかと思えば、近未来的インダストリアルシンセを用いたり、時にハードコア由来のドライブ感溢れるリフが出たり、メロデス味のあるクサメロ満載で疾走したり、と雑食+逆行する形ではありましたが、全てを一新する事無くクラシカルなメタルコアの血を巡らせながら、初期からずっと貫いてきた泣きとキャッチーさが巧みな構成の中で織り込まれていたと思います。そして、内省的で悲しく、もがき苦しんでいるのが伝わってくる詞が多く、解散理由も踏まえると涙を禁じ得なかったです。本作に限らずGt/Vo. Tobiasの書く詞が好きでした。最高の音楽を沢山有難う。またどこかで逢えたら逢いましょう。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.2「Hope & Hell」、Tr.3「Burial Season」、Tr.4「Veil Walker」、Tr.5「Lifeline」、Tr.7「The Worst in Me」、Tr.9「Grave Warden」
#18『Make Them Suffer』/ Make Them Suffer
5thアルバムにして、セルフタイトルアルバム。2022年にKey/Vo. Alex Reade(ex-Drown This City)が加入してリリースしたリード曲「Doomswitch」以降のシングルに、新録6曲を加えた全11曲を収録。
個人的には過去イチMake Them Sufferにハマれた1枚。うねる様なヘヴィリフは重量感を伴いながらドライブ感も打ち出し、不敵で不気味なグルーヴで蹂躙。そこに緊張感と近未来感のあるシンセ/キーボードの豊かな音色が美しく彩られていく、重層的で洗練されたサウンドが特徴的。特にテクニカルなドラムとリフの組み合わせには、メンバーの飽くなき探究心がある事を再認識させられる程のクオリティで、聴き込むほどに新たな側面が見えてくるなと思います。Key/Vo. Readeの美声が醸し出す雰囲気と存在感は抜群。Vo. Harmanisもローからハイまでスクリームは獰猛で、メロシャウトにクリーンまで変幻自在。2人が生むコントラストと調和は唯一無二です。基本的にダイナミックかつアグレッシブでありながら、絶妙な塩梅で魅惑的なメロディに傾いてくる楽曲が多く、曲構成は比較的ありがちではあるのだけれど、それを補って余りあるフックの強さと破壊力が今の彼等に惹かれる理由かも。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.4「Doomswitch」、Tr.5「Mana God」、Tr.6「Epitaph」、Tr.8「Venusian Blues」、Tr.9「Ghost of Me」、Tr.11「Small Town Syndrome」
#19『Paradox』/ Invert Hourglass
記念すべき1stフルアルバム。1st EPをリリースしてから僅か1年半でフルアルバムを完成させる素晴らしさよ…。2023年から2024年にかけてリリースされたシングルに、新録5曲(内inst1曲)を加えた全10曲を収録。
1st EPから更に進化を遂げました。前半6曲はアグレッシブに攻め立て、残り後半ではスケール感を増してエモーショナルに、ライブセトリの様な構成にも大満足です。独創的なリズムと強靭すぎるグルーヴが常に楽曲の核を成し、時に誰も手が付けられない程ダイナミックに猛進し、時に胸に迫る美しく叙情的なメロディを奏でていくスタイル。冷たく輝いたリフセンスと、アトモスフェリックなエレクトロサウンドを駆使して生まれる浮遊感とアンビエント感も魅力的。感情を表に出し力強く叫び続けるボーカルの牽引力も凄まじいモノがあります。流麗なインストTr.7⇒表題曲「Paradox」の流れはもはや映画的なサウンドスケープで、引き込まれたら最後、そのままバンド史上最も叙情的なTr.10「Sunset become the Lenz」へ至る流れも非常にドラマティックでした。衝動的な勢いがちゃんと演奏技術と美しく融合し、自然と世界観が浮かび上がってくるのが本当に素晴らしい。未来が楽しみです。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.2「Blind」、Tr.3「HumanErrorException」、Tr.4「Past memories (feat. RAF)」、Tr.5「Peacebreak」、Tr.8「Paradox」、Tr.10「Sunset become the Lenz」
#20『Living in the Static』/ Livealie
元Oceans Ate AlaskaのVo. James Harrison率いる、ニューヨークを拠点にイギリス、アメリカ、ポルトガルの出身のメンバーが揃ったバンド。待望のデビューアルバム。2019年にリリースされた「Death Blooms」以降のシングルに新録3曲(内inst2曲)を加えた全11曲を収録。恐らくアルバム収録に当たり、昔のシングルは新たにミックス・マスタリングしている気がします。
ずっと楽しみにしていたアルバム。11曲中8曲もシングルカットされてしまうのは正直驚きでしたが、どれもハズレ無しの名曲揃いです。基本的には陰鬱としたモノクロめいた雰囲気が渦巻く、アンビエント系プログレッシヴ・メタルコアをプレイ。躍動感あるグルーヴィーなリフから、儚さを漂わせるプログレリフまで多彩にこなす一方で、浮遊感のあるメロディとのギャップも強烈。非常に奥行きを感じさせるトラックが多い印象です。後は何と言っても、Vo. Harrisonのボーカルワークは圧巻。地を這う様なローから、引っ搔く様なアクセントを残すハイまで、彼の独特のアグレッシブさには鬼気迫るモノがありますね。対を成すBa/Vo. Jordanのクリーンとのコントラストも、先述した雰囲気だからこそ美しく映えているなと。ドラマ性が強い楽曲も擁しており、Tr.10はマスターピースと呼ぶに相応しい完成度なので必聴です。Vo. Harrisonはシーン全体で見ても稀有なボーカルなので、帰還を果たしてくれて良かったと、改めてそう思える名盤でした。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.2「Whirlpools」、Tr.5「Casting Shadows」、Tr.6「VHS」、Tr.8「Disciples」、Tr.9「Honestly, This is the Death of Me」、Tr.10「A Liar at Best」
#総評
今年は本当に大豊作でした。数年前に20選入りしたバンドが再び名盤を打ち出してくれたり、待望のデビューアルバムが無事に名盤級だったり、本当に凄かった。惜しくも選出できなかったアルバムも沢山あるので…。名曲を含んでいるだけだと難しく、シングルカット多すぎ問題もある為、通しで何度も聴いて全体的な世界観や構成、聴き心地なども考慮して選出している事を察して頂けると幸いです。
作品以外だと、来日公演が更に増えて想い出が沢山できました。別途ライブ総まとめ記事は出す予定なのでピックアップすると、ERRA、FLOYA、We Came As Romansが特に印象に残っています。ERRAは再来日するし、来年も来日公演は本当に楽しみですね。
とゆーことで、ここまでお読みくださり、ありがとうございました!今年もこうして記事を書くことができた事にも感謝しています。バンドが素晴らしい作品をリリースしてくれたお蔭であり、これまで私の音楽記事を読んでくださった貴方の支えが本当に励みになっています。今後とも楽しい音楽ライフをお過ごしください。来年もよろしくお願いいたします。ではまた!