2024年 メタルコアベストアルバム20選(前編)
どうもです。
2024年の総まとめ的な記事、第2弾。
最終的に「2024年 ベスト音楽総まとめ」にも反映される「2024年 メタルコアベストアルバム20選」です。国内外問わず完全主観で選んでおり、因みに選定基準として昨年と同様で厳しめに以下の事を気にしています。まずは、前編分の10枚をどうぞー。(2023年はこちら)
#1『Wither//Without』/ If I Were You
通算6枚目となるアルバム。5thアルバムからは実に約3年半ぶり。2022年にリリースされた「Wither」以降のシングルを含む全8曲を収録。
活動歴約13年のベテランですが、初期からずっと変わらない安心・安定・信頼のIf I Were Youらしい様式美を未だ貫き通しており、"最高"に尽きます。美麗なストリングスとピアノ、アンビエント要素、交錯するツインボーカル、叙情性に溢れたメロディなどを自在に組み合わせる絶妙なバランス感覚はどれも匠の域に達していて。何も変わってないかと言われると、そうではなく、初めて耳にするシンセの音色が印象的だったり、ニューメタルコアのグルーヴに影響を恐らく受けていたりなど、新しい一面も感じられて嬉しかったです。ブッチギリで好きな曲はアルバムを締めくくるTr.8「Drift」。漂う雰囲気やビート、エモーショナル加減、ブレイクダウン、ドラマティックな展開、どこを取っても特にIf I Were You節が効いており、これからも自分達の信念や美意識を貫くんだ、という気概すら感じましたね。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.1「Downfall」、Tr.4「Fallen」、Tr.7「Cursed」、Tr.8「Drift」
#2『The Devil Exists』/ Before I Turn
4thアルバム。2023年に約2年ぶりにリリースを果たした「Oxytocin」を含む、全7曲を収録。曲数的にはEPかもしれません。
初期から大きくは変わっていない独自の世界観を更に壮大なスケールへと拡張し、シネマティックなサウンドを多く取り入れた1枚。Tr.1「Beginning My Descent to Hell」から既にその凄みを感じられるはずです。Tr.5「Under the Vermillion Sun」の神々しさと禍々しさを兼ね備えた儀式的な雰囲気も余りに奇妙。アトモスフェリックでアンビエントなサウンドを軸に、アラビアンテイストなグルーヴは変わらず、よりディープでホラー寄りの不気味さを演出。緩急強弱が激しいメロディは身毛がよだつ程で、恐ろしさがあるのにどこか美しさを感じずにはいられませんでした。このメロディがドラマティックな展開をより際立たせていますね。Djentらしいユニゾンにも溢れ、リフも強烈、急加速するブラストビート、不協和音を織り交ぜたブレイクダウンなど引き出しも多彩。Vo. Alexのスクリームはこの勢いに負けない凶悪性を孕んでいるので、これまた恐ろしい。基本的にミドルテンポなのもあって、情報量と併せて全7曲とは思えない満足感がありました。Tr.7⇒Tr.1の流れも秀逸で思わず無限リピートしたくなるギミックも気に入っています。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.1「Beginning My Descent to Hell」、Tr.3「Reanimate」、Tr.5「Under the Vermillion Sun」
#3『Paramount』/ Hallow Sanctum
待望のデビューEP。レコーディングとミックス、マスタリングは先に選出した、同郷のIf I Were YouのDr/Vo. Randyが担当。2023年よりリリースされた「Mania」以降のシングルに新録3曲を加えた全6曲を収録。
先行シングルで抱いた期待に応えてくれた上に、非常に自分好みの1枚に仕上がっており大満足。If I Were You直系のシンフォニック・アンビエントを基調にしたメタルコアを徹底的にプレイする彼ら。開幕早々、どこか荘厳な雰囲気も醸し出しており、奥行きある美しいサウンドスケープに誘われますね。その一方で、独自の魅力としては、ソロでスクリームとクリーンの両方をこなすボーカルの存在感でしょう。特にデスコアボーカルに見られるハイピッチ・スクリームを喚き散らかしており、抜け感の良さも抜群。他にも
冷たく硬いリフから、ダンサブルでメタリックなリフ、更には叙情性に溢れたリフまで、テクニカルで多彩なリフが一つ一つ劇的で堪らないです。特にピアノの音色と泣きのギターソロを搭載したTr.5とTr.6は、エンディング感も見事に演出しており、通しで聴いた時の満足感も十分すぎる完成度です。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.1「Looking Glass」、Tr.5「Paramount」、Tr.6「Ethereal」
#4『Yume』/ FLOYA
元Time, The ValuatorのボーカルPhil Bayerと、元ALAZKAのギタリストMarv Wilderによるバンド、待望の1stアルバム。2022年にリリースしたデビューシングル「Wonders」以降の9曲に表題曲「Yume」を加えた全10曲収録。
2人がタッグを組んで活動していた事が嬉しかったし、Vo. Philに関しては前身バンドの頃から大好きで、当時心身の不調で脱退したと聞いていたので、また綺麗な歌声を聴けて感動でした。ポップロックをポストハードコア的に再解釈し、モダンに昇華したスタイルがやはり魅力的だなと思います。民族楽器系からエレクトロ系まで多彩なサウンドによる装飾や、テクニカルだけども耳馴染みの良いメロディは前身バンドの経験が活かされていると云うか。どこかロマンティックな世界観の中での、煌びやかで透明感のあるリフ、胸を刺す内省的な歌詞とエモーショナルなメロディ、ドラマティックな展開美、蕩ける様な情感に溢れる美しきハイトーンボーカル、どれも惚れ惚れしますね。唯一の新録Tr.10「Yume」もシンガロングが胸に迫るバラードでアルバムを暖かく包み込んでくれています。9月1日の来日公演も観に行く事ができて、正に夢のような時間を過ごせた幸せな想い出となりました。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.1「Stay」、Tr.2「Willows」、Tr.4「Drift」、Tr.6「Weaver」、Tr.8「Florescent」
#5『Everything You Wanted』/ If Not For Me
2年ぶり2ndアルバム。先行シングルに新録4曲を加えた全10曲を収録。1stアルバム『Eulogy』は2022年ベストアルバムにも選出しましたが、本作も堂々の名盤でした。
前作と比べ、プログレッシヴ要素が減ったものの、卓越したメロディセンスとメリハリの効いた展開美を活かしてメロディック路線へと舵を切った様に感じた1枚。特にサビの良さは折り紙付きで、そこに至るまでのグルーヴとヘヴィネスを感じる運びも見事。メロディを引き立たせる、エレクトロミックスなアレンジも巧みで、奥行き感を完全に掌握したなと感じる程です。そして、メロディを更にキャッチーに仕上げているのはやはりVo. Patrick。哀愁漂うクリーンと、太く沈み込むスクリームをソロでこなす歌声には相変わらず驚かされました。強烈なブレイクダウン搭載したTr.4「Demons」とTr.8「The Weight」が本作の中でも特にメタルコアナンバーですが、アルバムを締めるTr.10「Tragedy」が最もヘヴィでお気に入り。繰り返される悲劇に対して変化を起こさない無関心さを嘆いた悲痛な叫びが突き刺さる…。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.1「Feel Me Now」、Tr.2「Blameless」、Tr.4「Demons」、Tr.5「I Don't Wanna Be Here」、Tr.6「Everything You Wanted」、Tr.10「Tragedy」
#6『CURE』/ ERRA
6thアルバム。新生ERRA完成形だと思っていた前作のセルフタイトルアルバムから、約3年ぶり。2023年8月にリリースされた「Pale Iris」以降のシングルに新録8曲を加えた全12曲を収録。
スルメ名盤すぎました。前作以上に、自分達のコントロールできる領域を拡張した様に感じましたね。強烈に耳に残るメロディアスなギターリフと徹底的に練られた強靭なグルーヴを軸に、プログレ要素はアクセントとして鮮やかに散りばめられ、躍動感やスケール感が底上げされた印象です。全体通して、深みあるアンビエントな雰囲気も一貫されており、本当に聴き心地が破格。Tr.3やTr.4は古参にも嬉しいDjent系の快感に色気もプラスされ、Tr.5やTr.8などモダンなインダストリアル要素を取り入れた脈打つサウンドも新鮮でした。後半はメロディアスな展開が多く、Gt/Vo. Jesseも蕩けるハイトーンボイスから、叙情性溢れる切ない歌声まで幅広く披露し、別格の心地良さを提供。Vo. JTとのハーモニーも只々美しく、ドラマティックに映えますね。彼ら独自の技術力や美意識などがあったからこそ成し得た領域だなと、改めて納得せずにはいられない1枚に盛大な拍手を贈りたいです。今年2月の来日公演も最高でした…来年もまた観れるのガチで楽しみです。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.1「Cure」、Tr.3「Idle Wild」、Tr.5「Slow Sour Bleed」、Tr.8「Past Life Persona」、Tr.11「Pale Iris」、Tr.12「Wave」
#7『The Black』/ Imminence
5thアルバム。前作『Heaven in Hiding』から約2年半ぶり。2023年からリリースが続いたシングルに、新録6曲を加えた全12曲を収録。アルバムリリースの度に、人気も加速している気がしますね。
Imminence史上最高傑作であり、ジャケ写・タイトル通り、彼等史上最もダークでヘヴィな1枚でした。暗闇の中を果て無く彷徨う様な光景を想起させるサウンドスケープと心を鷲掴みにする流麗なメロディライン、感情を揺さぶるドラマティックな展開が織り成す没入感は、更に進化を遂げた印象。凍てつく荘厳な雰囲気が漂うストリングスの音色が際立ち、温度感や重量感に徹底された一貫性を感じましたね。強烈なアタック感あるリフやブラストビートは新録曲でも特徴的で、Tr.6とTr.8は度肝を抜かれるはず。ずっと緊張感が蔓延っており、息つく暇もない。そして表題曲Tr.11「The Black」はVo. Bergの独壇場とでも言うべきでしょうか。魅惑的なクリーンから狂気的なスクリームまで、甘美なヴァイオリンソロも併せて、恍惚とした時間に引き込まれます。通しで約1時間、まるで映画を1本観終わったかの様な、心の奥深くまで響く体験ができた稀有な作品に感謝…。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.2「Desolation」、Tr.3「Heaven Shall Burn」、Tr.5「Death by a Thousand Cuts」、Tr.6「Come What May」、Tr.8「The Call of the Void」Tr.11「The Black」
#8『HEX』/ Another Now
2ndフルアルバム。2023年以降リリースしてきたシングル5曲を含む、全15曲を収録。2021年ベストにも選出したデビューアルバム『OMNI』で既に独自のサウンドを確立した彼らですが、本作も期待を超える名盤でした。
インダストリアルメタルに、ヨーロッパ圏らしいテクノやハウス辺りをブレンドしたメタルコアスタイルで、本作は更にサイバーパンク系のシンセウェーブ要素が特徴的。併せて、デスコアやニューメタルコアっぽいアプローチが垣間見えたのも新鮮でした。他にもTr.1やTr.10は完全に和風なサウンドとメロディだし、inst Tr.7では宇宙空間を彷彿とさせる幻想的なサウンドスケープが拡がっており、世界を旅する様な気分も味わえたなと。inst曲は全て存在感を放ちつつも、次曲への期待感を高めてくれたのでアルバムを通しで聴きたくなると思います。そして、アルバム締め括るTr.15「HORIZONS_」の完成度は圧巻。壮大な雰囲気の中、激しく美しくアグレッシブに展開を重ね、ツインボーカルによるエモーショナルメロディで胸を刺されるはず。次のステップを見据えた決意なども感じる、素晴らしい1枚でした。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.2「DAYDREAMER」、Tr.5「BREATHE.」、Tr.6「HEX」、Tr.8「WOULD IT KILL YOU?」、Tr.10「SORRY」、Tr.15「HORIZONS_」
#9『Starfire』/ Darko US
3rdアルバム。2ndアルバム『Oni』からは2年、EP『Dethmask Pt.2』からは僅か1年半ぶりと相変わらず異常な制作スピードで、2023年以降リリースしてきたシングルを含む、計71分で全19曲収録の大作となりました。
今年の超名盤。彼等のアルバムだと本作が一番好き。インダストリアルな質感と不気味なサイケデリック感を組み合わせ、フューチャリスティックな銀河系スタイルで独自の小宇宙を創り上げた1枚。そんなサウンドスケープに加え、Darkoらしい様々なコア系ジャンルを接続させたブルータルなヘヴィネスを確かに感じさせる創意工夫が凝らされていました。更に、Djentyな刻みと、神聖なエモーショナルパートが増えたのも嬉しいポイント。ゲストも豪華で、Tr.3はVo. Marc Zelli(Paleface Swiss)によるアグレッシブなラップ、Tr.13はVo. David Simonich(Signs of the Swarm)による凶悪至極のブレイクダウン、 Tr.15はScarlxrdによるトラップメタルスタイルに終盤のストリングスアレンジ等、刺激盛り沢山。Tr.9やTr.12、Tr.16など、どこか不気味なのにロマンティックなムードに仕上げ、トランス状態へと導く様なアプローチも今作の特徴だったと思います。そこからの解放を試みてか、丁度良いタイミングでアンビエントミュージック的なトラックが織り込まれているのも、通し聴きの民としては好印象。来年以降もきっと聴きまくる。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.2「Distant World」、Tr.3「Death Charge」、Tr.4「5D」、Tr.5「Rampage」、Tr.8「Chrome Moon」、Tr.9「Bunny shit」、Tr.12「Mech Control」、Tr.13「Green Machine」、Tr.16「Shanghai」
#10『HYPERMETAL』/ Earthists.
1st EP。3rdアルバム『Have A Good Cult』からは約2年ぶり。昨年からリリースされたシングル「HYPERHELL」や「ACIDGLINT」などに新録2曲を加えた全6曲を収録。
彼等の音楽的ルーツを元に、バンド独自の解釈でヘヴィミュージックのスタイルを新たに確立し提唱している「HYPERMETAL」を堂々とタイトルにした1枚。ここからも本作への自信が窺えると云うか、遂に前作以上にコンセプトが完成に至ったなと感じました。実際、どれも一聴しただけでEarthists.だ!と確信できる独自性と独創性に溢れています。鍵盤を筆頭にユニークでデザイン性に優れた多彩で遊び心あるサウンドメイク、ボカロやアニソンの系譜も感じる疾走感あるキャッチーなメロディ、テクニカルなフレーズを織り交ぜながら限界まで濃縮し畳み掛けてくる展開。これらを詰め込みつつも、プログレバンドらしい屈強なグルーヴを維持しているのが本当に偉大。Vo.Yuiの異常ハイピッチメロシャウトの存在感は抜群だし、Gt/Vo.Yutoのクリーンも爽やか。本作をリリースしてからライブの盛り上がりも本当にヤバくて、バンドとして新たな風穴が開けた年でした。来年は更にデカくなる。
★特にオススメするTrack
⇒Tr.3「SHAPERBREAKER」が頭一つ抜けてるけど、ガチで全部!!!
とゆーことで、ここまでお読みくださってありがとうございました。まずは前半10枚、いかがだったでしょうか。残りの10枚は以下より、すぐにでもチェックお願いします!!