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2023年 メタルコアベストアルバム20選(前編)

 どうもです。

 2023年の総まとめ的な記事、第2弾。
最終的に「2023年 ベスト音楽総まとめ」にも反映される「2023年 メタルコアベストアルバム20選」です。因みに選定基準として厳しめに以下の事を気にしています。例年と違うのは、今年は国内バンドも(別途記事にせず)この20選の対象にしました。これにより合計枚数は昨年(海外20枚+国内5枚)より減る結果となりました。

・(当たり前ですが)今年リリースされた作品
・毎週書いていた記事で紹介済みのアルバム・EPから選出
・いわゆるハズレ曲が1曲もない
・収録曲の中で聴く回数に偏りが少ない
・リリース月だけでなく年間通して聴いていた
・繰り返し聴くことが多かった
※ここでの”メタルコア”はタイトル付けの為で広義の方と捉えてください(細かいジャンルはそれぞれ記載)

 ということで早速、完全主観で選び尽くした20枚から、前編分の10枚を紹介していきます。


#1『The Reaping of Eternity』/ Graviton

【1/6 リリース】【プログレッシヴ・デスコア【無所属】

 オーストラリア出身のデスコアバンドBabirusaのVo.Rheese PetersとGt.Tate Senhenn、Dr. Rangi Barnes、アメリカミズーリ出身のプログレッシヴ・デスコアプロジェクトLost ConduitのGt.Drew Kluggerによるプロジェクト。昨年始動してから、待望のデビューアルバム。全9曲。
 2022年時点にも紹介しており、好みドンピシャだったバンド。デスコアをベースにオリエンタルで煌びやかな響きをブレンドしていった様なスタイルで、極悪さと美麗さを完璧に両立しているなと思います。変態的な超絶テクが溢れたフレーズはDjent的影響を確かに感じさせ、細かくエディットされた強靭かつ整合性溢れるDjentyな刻みの数々には魅了されるばかりでした。それにより生まれる激しさやグルーヴはデスコア寄りにちゃんと仕上がっている印象を受けるのは、ボーカルワークの牽引力のお陰でもあるなと。本当にボーカルがタフで音域幅エグイのも好きです。そんな感じでジャケットイラスト通りの宇宙スケールで贈られる圧倒的な仕上がりを魅せた1枚でした。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.3「Archon I: Expulse」, Tr.4「Begging The Heavens」, Tr.8「World of Fear」


#2『A Mind Waiting To Die』/ Graphic Nature

【2/17 リリース】【ニューメタルコア【Rude Records】

 UKケント出身。こちらも待望のデビューアルバム。昨年7月以降コンスタントにリリースされていた楽曲を含む、全13曲。
 飽和状態になってきたニューメタルコアシーンに一石を投じる衝撃作でした。期待を越えて大きく跳ねてくれた名盤。インダストリアル要素を大きく取り込み、リズミカルなうねりを武器にしたグルーヴィーなニューメタルコアをプレイ。尺も3分前後でコンパクトな楽曲が多く、だれる前に綺麗に終わらせる良い意味での潔さも良し。エネルギッシュで狂気じみたスクリームも刺さりますし、それにアジャストしたかの様な狂気的で異質なサウンドとスリルに満ちた雰囲気が魅力的。リズムチェンジや展開などマニアックではあるんですが、カオスになりすぎないのが個人的に好きですね。まさかのピアノが入った雰囲気良しのTr.12「A Twin」からアルバムを締めくくるTr.13「The Downpour」への流れは意欲的で美しかったので必聴。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.3「Into The Dark」, Tr.4「Killing Floor」, Tr.6「White Noise」, Tr.10「Headstone」


#3『SEX & SAX』/ Shrezzers

【2/17 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア【Gentlepunks Inc.】

 ロシアはサンクトペテルブルク出身。1年の延期を経てリリースされた2ndアルバム。前作『Relationships』からは実に4年ぶりとなり、2019年の来日ツアー後から新たにペルー出身のVo. Diego Silvaが加入した新体制初のアルバムとなりました。全14曲。
 1stよりエモーショナル寄りなメロディが増えた印象ですが、1st好きな人は漏れなく好きであろうShrezzers節はしっかりと効いているので気付いたら好きになっていた1枚でした。ポップでオシャレでセクシーな独自のプログレッシヴメタルコアをプレイする中で、絶妙な彩りを加えるサックスの音色は健在。絶妙なバランスを持って取り入れられてます。今作では、国内外から総勢7名がフィーチャーリングゲストとして参加しているのも特徴的で、バラエティ豊かな楽曲がラインナップされてましたね。国内からはPaleduskのVo.KaitoがTr.2「Tabidachi」で参加しており、非常にアグレッシブな仕上がりになっています。新Vo. Diego Silvaは伸びやかで艶のある歌唱が素晴らしいなと思いましたので、新体制で再来日してくれるのを楽しみにしてます。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Tabidachi」, Tr.4「Gambit」, Tr.6「Temperatura」, Tr.11「p7ay3rs」, Tr.12「Phoenix」


#4『Heavener』/ Invent Animate

【3/17 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア【UNFD】

 アメリカはテキサス州ポート・ネチズを拠点に活動。前作『Greyview』からは約3年ぶりとなる、4thアルバム。昨年からリリースしてきた「Shade Astray」以降の楽曲を含む、全11曲。
 昔から大好きなバンドなんですが、新作が出る度に前作は越えれないだろうと云う幻想を打ち破ってくるの本当に何…。新領域に到達した今作は、死や苦痛、不安など前作よりテーマが重い事もあり、ダークで力強い重圧さを隅々から感じる1枚でした。幽玄で神秘的、そして荘厳で浮遊感を感じるサウンドスケープは景色が浮かび上がる程の立体感と奥行きを演出。その中で光り輝く超絶技巧の数々も相変わらず見事と云う他ないです。一方で、急転直下のブレイクダウンやエモーショナルなメロディも際立ち、Marcusの叫びも相まって心が揺さぶられますね。病で祖父を亡くした彼は、その悲しみと向き合うまでの物語をTr.11「Elysium」で歌っており、このトラックでアルバムを締めくくる事で、最終的には希望を残してくれました。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.4「Without a Whisper」, Tr.5「False Meridian」, Tr.7「Immolation of Night」, Tr.9「Void Surfacing」, Tr.11「Elysium」


#5『The Shattering』/ Knosis

【3/22 リリース】【エクスペリメンタル・メタル【無所属】

 元Crystal LakeのVo.Ryoと、音楽プロダクションチームThe Hideout Studios(Survive Said The ProphetのVo.Yosh、Made in MeのDr.Daikiによるチーム)によるエクスペリメンタル・メタルプロジェクトのデビューEP。
 Tr.1「星砕」が今年1月にリリースされ、帰還を果たしたRyoさん。好きな音楽を追究しつつ、エクストリームメタルの最先端に立とうとする意志がやはり感じられて、良い意味で変わってないなと感動しました。彼がインスパイアされてきた音楽やゲームなどあらゆるモノを好きな様にブレンドし、感情表現も剥き出しで、メタルコアと云う枠に囚われない新しい形で昇華させた1枚だったと思います。インダストリアルでノイジーなサウンドの波が押し寄せてきたかと思えば、スペーシーな浮遊感を漂わせるTr.1「星砕」。ヒップホップ的なノリとダークでヘヴィなサウンドが鳴り響き、Ryoさんのアグレッシブ迫力満点のスクリームを味わえるTr.2「忌鬼」、親しみやすいパワフルな変拍子の押しや緊張感とニューメタル味が堪らないTr.3「狂火」、どれもライブでは更に化けて、聞けば聞くほど虜になる楽曲達でした。来年も新曲楽しみですし、沢山ライブ遊びにいきたいと思います。

★特にオススメするTrack
 ⇒全部!!!


#6『Burn in the Flood(Deluxe)』/ Our Hollow, Our Home

【4/7 リリース】【メロディックメタルコア】【Arising Empire】

 UKサウサンプトン出身。2021年にリリースした3rdアルバム『Burn in the Flood』に昨年からリリースしてきた新曲5曲を加えたDeluxe ver. 昨年はメンバー交代を経て復活したものの、今年2月にGt/Vo. Tobias Young以外のメンバーが脱退する事が発表され、旧体制ではコレが最後の作品となりました。
 突然の発表でショックだったんですが、13年とキャリアも長いですし、新曲はどれもOHOH節全開だったので、やり切ったのかなとも思います。3rdアルバムは2021年ベストアルバムとして選出した大好きな1枚で、改めて全曲聴いてみてもメタルコア史に残すべき最高傑作。ツインリードギターが紡ぐ熱く美しいメロディ、ダイナミックでドラマティックな構成、ラップメタルを通過した野太くアグレッシブなスクリーム、そこに交錯するは圧倒的にキャッチーな美メロで贈るクリーン。独自のスタイルを確立させ、もう右に出る者はいない処まで登り詰めました。脱退発表時にリリースされたTr.15「Miles > Motion」からは"That someday These things will go to plan"と云うリリックからもTobiasが気持ちを切り替えようとしているのが汲み取れ、実際に新体制をすぐに整え新曲「Downpour」までリリースしてくれました。これからも彼らの活躍が楽しみです。

★特にオススメするTrack
 ⇒新曲となったTr.12「Shatterdome」~Tr.16「Monochrome」


#7『Reflection Room』/ Headwreck

【4/7 リリース】【ニューメタルコア【無所属】

 オーストラリアはブリスベン南部出身。2年ぶりとなる、2nd EP。昨年からリリースしてきた3曲を含む、全6曲。
 非常にユニークなスタイルのメタルコアをプレイするバンドで、一度聴くと絶対にクセになる中毒性の高い1枚でした。ニューメタルコアらしい極悪な一面と、プログレッシヴ・メタルコアらしいお洒落な一面に奥行きと浮遊感を持たせつつ上手く昇華させた印象。エッジの効いた多彩なサウンドを随所に取り入れていく独特のセンスと創造力が武器で、本当に飽きが来ないです。パンチがあるのに胃もたれしない謎の色気みたいなモノも放っており、ツインボーカルの美麗コントラストもソレに一役買っている気がします。コンパクトにまとめられた曲構成でリピートしやすいんですが、Tr.6「Why Wont' t You?」はラストを飾るに相応しい、壮大さとエモーショナルな香りもしっかりあるので、確かな満足感をもたらしてくれるはずです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Shiver」, Tr.2「Poseidon」, Tr.6「Why Wont' t You?」


#8『Between Death and Dreams』/ Brand of Sacrifice

【4/21 リリース】【ブルータルデスメタル/デスコア】【Blood Blast Distribution】

 カナダはトロントを拠点に活動。昨年リリースした「Exodus」と今年リリースした「Dynasty」と含む全4曲のEP。
 前2曲から臨場感のあるシネマティックな展開を更に追究してる事が窺えると共に、その期待を裏切らない最高の1枚でした。ハードコア由来のグルーヴ感とブルータルでストロングなデスコア要素がやはり根底にあって極悪過激なのに、どこか未来的で神秘的な世界観が常に維持されています。キャリアに裏付けされた演奏技術、アイデア力やセンスの賜物でしょう。特筆すべきVo.Kyleのクリーン解禁は、前身バンドであるThe Afterimageを踏まえると受け入れるのは容易で、寧ろ荘厳で美しい女性コーラスやメロディアスなフレーズとの相性を考えると賞賛に値する判断だったと思います。勿論、多彩で厚みのあるパワフルスクリームも健在。楽器隊のテクニカルなフレーズを綺麗に乗りこなしつつも時に牽引力が凄まじく、ブレイクダウンでは遺憾なくソレを発揮しています。バンドとしてこのシーンの最前線にいるにも関わらず、そこに留まる事を潔しとしない姿勢の表れを感じた名盤でした。
 最新曲『Purge』で新たにNuclear Blast Recordsとの契約したのも、元々傘下だったので必然的な流れでしたね。あとは来日を待つのみ…っ!

★特にオススメするTrack
 ⇒全部!!!


#9『Leaving.And Beginning』/ Invert Hourglass

【4/29 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア】【無所属】

 新潟を拠点に活動。記念すべき1st EP。本作のEP名は、前身バンドであるCurse of my hands時代からの脱却、そしてInvert Hourglassとしての新たなる一歩を踏み出すというコンセプトから名付けられたそうです。昨年12月にリリースした、Laika(Curse of my handsの元メンバーも在籍)とのスプリットEP『Search for Hope, In this Chaos』の2曲も収録した全5曲。
 2021年から注目株だったバンドなので遂にまとまった作品が出た事がまず嬉しい。浮遊感に満ちた空間系サウンドを維持しながらも、グルーヴィーでスピード感のあるアグレッシヴな展開が魅力的で、しっかり落差のあるブレイクダウンも搭載されているので、静と動のコントラストも抜群。MVと共に新規曲となったTr.5「Curse of my hands」も力強く叫び続けるアツいボーカルワークと共に、思わず拳掲げてシンガロングしたくなるパートに移行するドラマティックな1曲となっており、最後まで決して気の抜けない展開に引き込まれます。どこか切なげな印象を与えるくれるピアノによる装飾も美しく、美的センスも大いにあり。全体通して、ストーリー性とスケール感のある名盤だったと思います。来年こそはライブを見たい…!!

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Berserker」, Tr.5「Curse of my hands」


#10『The Death We Seek』/ Currents

【5/5 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア【SharpTone Records】

 アメリカはコネチカット州フェアフィールド出身。前作『The Way It Ends』から約3年ぶりとなった、3rdアルバム。昨年からリリースしてきたシングルを含む、全10曲。
 間違いなく名盤。今年のベスト盤であると共に、彼らのキャリア的にもベスト盤だと思います。パンデミックが齎した社会的分断による憎悪や苦痛などを歌い、最終的には希望を感じさせる全体的にストーリー性を大事にした1枚でした。ダークなだけじゃない深層心理に訴えかける奇妙かつ壮大なサウンドスケープは、Currents独特の混沌としたオケの質感や雰囲気を更に追究した結果かと。Gt. Chris自らがボーカルミックスした初めてのアルバムであったので、ボーカルも雰囲気を形成する一つの要素として寄せていった印象も受けました。逆に、Vo. Brianの音域の広さには過去イチで愕然とすると云うか、クリーン時の存在感はより映える様に仕上がってますね。忘れてはいけないのは、Tr.10「Guide Us Home」のリリックに癌を患ってしまったGt. Ryan Castaldiを想わせる節もあった事。そーゆー意味でも重く、だからこそ希望を見出さずにはいられないグッとくる1枚だったなと思います。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Living In Tragedy」, Tr.4「So Alone」, Tr.7「Vengeance」, Tr.9「Remember Me」, Tr.10「Guide Us Home」


 とゆーことで、ここまでお読みくださってありがとうございました。まずは前半10枚、いかがだったでしょうか。残りの10枚は以下より、すぐにでもチェックお願いします!!


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