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”男の娘”はトランスジェンダーの夢を見るか? ブリジットの設定変更と東西オタクカルチャー比較
(タイトル画像出展:Trans Bridget Mod↓)
※ギルティギアシリーズのネタバレ及び、一部にトランス差別的な表現が含まれます。閲覧の際はご注意下さい。
こんにちは。烏丸百九です。
人気格闘ゲームシリーズ「ギルティギア」の最新作、「GUILTY GEAR -STRIVE-」にて約10年ぶりにシリーズに再登場したプレイキャラクターである「ブリジット」が、なんと男子からトランスジェンダー女性に設定変更されていたことがネットで話題になりました。
ブリジットのジェンダー・アイデンティティは、デビュー当時から複雑だった。このキャラクターは、同性の双子を不吉な兆候と見なす迷信に悩まされる、とあるイギリスの村に生まれた。そのため、同性の双子が生まれると、村では双子のどちらかを生贄にするか、追放することが義務づけられていた。それを避けるために、ブリジットの両親は彼人 [註:かのひと。ジェンダーニュートラルな三人称「they」の訳語] を女の子として、弟を男の子として育てた。成長した彼人は、いつか家族のもとに戻って、自分が(男性として)人生で成功できること、そして不運という迷信が杞憂であることを証明したいと思い、賞金稼ぎに手を染めたのである。
しかし『ギルティギア・イグゼクス』とその後継作品を通じて、ブリジットをトランスフォビア的・ゲイフォビア的な表現で使ったせいで、印象が悪くなってしまった。その "雑さ "が、最近の『ギルティギア』にブリジットを登場させることをためらわせることになったのかもしれない。2013年の『ギルティギア・ヴァストレイジ XT』(日本限定のパチンコゲーム)以来、このキャラクターは登場していなかった。
(ギルティギア・ストライブの発売後)
ファンがデータマイニングしたダイアログには、ゴールドルイス・ディキンソンとの会話も含まれており、彼が彼女を「女の子」と呼ぶと、彼女は悲しげに「訂正」して「自分は男の子」だと言った。この後、ブリジットとゴールドルイス、そしてカイ・キスクが、彼女が本当に欲しいものは何か、家族と大切なものを分かち合うことについて、何度か会話を交わすことになる。
しかし、中盤にさしかかると、2人はまたもや一触即発の状態になる。ゴールドルイスはブリジットをうっかり「お嬢ちゃん」と呼び、訂正して「お坊ちゃん」と呼ぶ。するとブリジットは(嬉しそうに)「ウチは女の子ですから」と言う。彼女は今、she/herの代名詞を使っているように見える。
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オタク界隈では所謂「男の娘」キャラの代表格と言われていたブリジットが、公然と自分を「女の子」と宣言したことに対し、ファンの間では賛否あるものの、概ね好意的に受け入れているようです。
しかし、これを「女装男子/男の娘は最早ポリコレのために容認されない」と解釈した一部のオタク層が、当てつけ気味に本件をバッシングする光景が見られました。
女装男子という存在が許されずトランス女性という事にしなければならない文化圏が多様性とか言ってるの見てるとめちゃくちゃ笑えるな
— もみじ(Momiji) (@momiji_manjyuu) August 9, 2022
「世界はヴィーガンが最先端、日本は遅れてる」
— 神奈いです (@kana_ides) August 13, 2022
「精進料理」
「世界はジェンダー多様性が最先端、日本は遅れてる」
「耽美、やおい、パタリロ、女装民族英雄、貴族同性愛」
男の娘の歴史を遡るとヤマトタケルあたりが始まりじゃないかと思う訳ですが、千年ちかく「女と見紛う」が美男子の枕詞で、能楽の女面とか歌舞伎の女形とか女性を演じることに価値の置かれる文化の産物なわけで。
— 司史生@停滞中 (@tsukasafumio) August 10, 2022
マッチョを称揚してきた欧米文化とその反動であるポリコレとは異質なのですな。
ゲームの男の娘キャラが海外でトランス女性扱いされてるの、「ここ(日本)ではあなたのお国より、性癖が もうちょっと複雑なの。性自認の不一致で片付けるなら いつでもできるけど、ポリコレはボクの国だけでほざいてなさいね」って言いたい。加藤登紀子の声で。
— えびふらい🔞単行本発売中 (@ebifly857) August 10, 2022
この論争を見てふと思ったのが、「LGBTQ」という「区別」にて「多様性」と定義する欧米のポリティカル・コレクトは、横柄な思想だなということです。
— スナッパーSK (@Snapper_SK) August 11, 2022
「男の娘」というのはそもそもBやTやQを超越した曖昧な存在、いうなれば「泥の文明」の産物で、それがわからないとは所詮「石の文明」だなと。 https://t.co/AeQ99qEANx
本noteでは、そもそもの問題として、海外において「女装男子/男の娘は最早「ポリコレ」のために海外では容認されない」というのは事実なのか、また「「ポリコレ」的な西洋文化よりも日本のオタクカルチャーの方が多様性に富み優れている」のは事実なのか、きちんと事実を検証した上で論じていきたいと思います。
1.「男の娘」はとっくに海外進出している
まず単なる事実として、ブリジットは「男の娘」キャラとして長年海外ファンにも受け入れられていたことがあります。彼女がトランスジェンダーに設定変更されたところで、今更その事実が動くことはありません。
次に、「男の娘」と言われる表象が、特に日本のオタクカルチャーの中でしか見られない現象については、所謂コミック市場の特殊性と、ゲームカルチャーとの違いで大体の説明が付くように思います。
オタクの皆さんが自慢するように、日本のコミック市場規模は世界最大です。2021年度のデータによれば、紙+電子の売上額は6759億円で、近年売上が低下傾向の紙コミックのみでも2087億円という巨大市場を形成しており、これはコミックを含めた全出版物市場の4割を占めているそうです。
公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所は2月25日、2021年のコミック市場規模を発表した。紙+電子市場(推定販売金額)は前年比10.3%増の6759億円と、3年連続で急成長し過去最大を更新した。紙+電子の出版市場全体におけるコミックのシェアは4割を超えた。
では、海外市場はどうなのでしょうか。アメコミ映画全盛の昨今、例えば北米では、コミック市場は拡大傾向にあると言われます。
しかし、確かに北米の紙コミック市場は20億ドルの売上があり、金額だけなら日本の紙コミックに匹敵しているのですが、一般書店だけで見ると、その売上の約76%が日本製コミックで占められていて、日本人になじみ深い所謂「スーパーヒーローコミック」のマーケットは全体の約6.5%しかないそうです。
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NPD BookScanによると、2021年のアメリカにおけるコミックおよびグラフィックノベル部門全体の販売量の76%以上を「マンガ」(日本製コミック)の売り上げが占めていました。
「マンガ」は 2021 年に 2,440 万部の総販売数を記録しました。米国での印刷版「マンガ」タイトルの販売は、2021 年の第 1 四半期、 2020 年の同時期と比較して、360 万部増加しました。
物価の違いから単純比較は出来ないとはいえ、北米を始め、日本のコミックは想像以上に海外で売れているのであって、当然ながらそこには我々になじみ深い「男の娘」キャラクターも多数登場しているはずです。彼人らが「ポリコレ」のために設定変更された例などあるのでしょうか?
更に言ってしまえば、市場の8割近くを占める強力なライバルである「マンガ」にアメコミ作家達が対抗しようとするならば、「マンガ」にない表現を目指すのは(市場原理的にも)当然の話であって、殆ど文化侵略レベルの出版攻勢をかけておいて、「海外には「男の娘」が登場しないから遅れている」とコメントするのは、いくら何でも傲慢が過ぎるというものでしょう。
※追記:上記の一部に事実誤認がありましたのでお詫びして訂正致します。
記事の公開当初、「一般書店」というのはアメリカン・コミックを中心的に販売する所謂コミックショップ(アメコミ専門店)の売上を含んでいるものであると誤解していたのですが、実際にはコミックショップでの販売数は統計に含まれておらず、よってアメリカン・コミックと漫画の販売比率を正確に表したものではないということです。また、定期刊行される所謂コミック本(日本における雑誌に相当)も当然含まれていません。
コミックショップでの売上を合算した、2021年のグラフィック・ノベルの売上割合は以下の通りです。「マンガ」は全体の43%を占めているものの、キッズ向けも含めると、総売上でアメコミを圧倒している、とまでは言えないのが分かるかと思います。
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とはいえ、「マンガ」表現への対抗という主張を変えるつもりはないのですが、全体的に誤解を招く記述であったことをお詫び致します。
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こうした「男の娘」キャラクターは海外では「Femboy」または「Trap」と呼ばれ、詳しくは後述しますが、海外のコミックファンの間でも(日本と同様に)ニッチなファンを得ることに成功しているようです。
また、ゲーム市場とコミック市場との違いも重要です。
2020年の調査に寄れば、世界のゲーム市場規模は推定20兆円以上であり、現在その規模はさらに拡大しています。アプリゲーム等も全て含んだ数字とはいえ、日本が最大の市場であるコミック市場とは文字通り「桁が違う」わけです。そしてその中で日本の国内マーケットはわずか2兆円であり、うち1.3兆円をスマホアプリの売り上げが占めています。たとえコミック市場の6700億円にアニメ市場の2兆4261億円を合算したとしても、到底海外のゲーム市場規模の巨大さには追いつけないのです。
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こうした状況下で、「ギルティギア」の制作者を含む日本のゲームクリエイターが「海外ユーザーを意識した」プロダクトをするのは当然の話であり、少数派の国内ユーザーではなく、様々な文化圏の集合体であるグローバル市場に挑戦するに当たって、「ポリコレ」を意識した作品作りをするのは、オタクが屡々主張する「マーケティングの大切さ」を考えれば、妥当な判断と言えるのではないでしょうか。
2.「Femboy」と「Trap」、そしてトランス差別
市場データの分析から、「女装男子/男の娘が最早「ポリコレ」のために海外では容認されない」のは嘘だと言えるにしても、「男の娘」的な表象が(やはり)あまりメジャーにならず、消費者に歓迎されないのだとしたら、「「ポリコレ」的な西洋文化よりも日本のオタクカルチャーの方が多様性に富み優れている」のは本当ではないでしょうか? 日本のオタク的アイディアが、何故そのまま海外で「素晴らしい多様性の表現だ」と言って貰えないのでしょうか?
アメリカ在住のフォロワーさんからの情報に寄れば、海外カルチャーでも「男の娘」的な表象が生み出されなかったわけではなく、そうしたキャラクターは度々登場しては注目を集めてきたそうです。代表的な例を幾つか教えて頂いたのでご紹介します。
a.バッグス・バニー
It's not just that Bugs Bunny likes to crossdress. Chuck Jones is on record as describing Bugs as a kind of trickster god. His crossdressing has a shamanic power. When Bugs crossdresses, he assumes power over his enemies. pic.twitter.com/HlLw1RaMYg
— Christianne Benedict (@doctor_morbius) March 31, 2021
映画「トランスジェンダーとハリウッド」でも取り上げられたように、ワーナー・ブラザーズのマスコットキャラクター・バッグス・バニーはアニメ内で頻繁に女装し、しかもしばしば「女の子」として扱われます。バニーが生み出されたのは1930年代であり、コミック版は40年代から出版開始、80年代にはゲイの権利拡大のためのアイコンとして扱われたこともあったようです。
b.ベンダー
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アメリカのヒットコメディアニメ「フューチュラマ」に登場するロボットのベンダーは、ギャグのために何度も女装姿を披露します。同アニメは1999年からスタートしており、アメリカのキッズには非常に有名な作品のようです。
c.エンジェル・ダスト
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エンジェル・ダストはアメリカの大人向けミュージカルアニメ「ハズビン・ホテル」のキャラクターで、見た目は女性に見えますが、歴とした男性でゲイの悪魔という設定です。本アニメはアメリカ人オタクの間では非常に高い評価を受けているとのこと。
このように、メジャーなカートゥーン作品でも「女装キャラ」あるいは「男の娘」と言えそうなキャラクターは昔から登場しており、またフェティシズムとして嫌われているというわけでもなさそうです。Pixivで「Femboy」「Trap」を検索すると、前者が16,388作品、後者が15,675作品となっており、殆どが日本の「マンガ」の二次創作とはいえ、英語圏で不人気な表現とまでは言い難いと思います。
それでも「Femboy」や「Trap」が「歓迎されない」背景には、やはり欧米の深刻なトランス差別の問題があります。特に「Trap」は、ワード自体がトランスジェンダー差別的だとして、redditなどの大手コミュニティサイトでは使用を禁じられています。
"トラップ"とは、トランスジェンダー女性や女装家、性別表現の慣習に従わない人々を、シスヘテロ男性が "意図的に騙してセックスさせる"と考えるカテゴリーで括ることです。
女装者やトランス女性は、この言葉に強い嫌悪感を示していますが、多くのシスパーソン、特にシス男性は、この言葉を「面白い冗談」だと感じて軽く扱い、使う権利を明確に主張しています。
ウィキペディアの寄稿者間の議論では、軽蔑的な用語をメインページに配置する必要があるかどうかについて、絶え間ない議論が行われてきました。ノートでは次のように記されています。
・「(「トラップ」は)当初は軽蔑的な意味で使用されていましたが、スラングが肯定的な意味を持つようになったことも認識する必要があると思います。たとえば、ギルティギアのキャラクター「ブリジット」は、多くのファンから愛情を込めてトラップと呼ばれることがよくあります。「トラップ」のまさにその考えは、トランスジェンダーの人が非常にうまく(シスとして)「合格」するため、その人は自分が物理的に女性に見えるものであると信じていることです。 そしてその人が強力な魅力を獲得したとき(ブリジット、または東洋の多くのトランスモデルのように)、それを参照したい人のための愛らしいジョークとして使用されます。ただカジュアルな場面では、それに対する普通の人の敵対的反応を認識していることを示しています。」 -Ty (2010 年 3 月 26 日)
・「その名前はトランスパーソンが人々をだますことを暗示しているので、軽蔑的です。」-Voidkom (2012 年 9 月 9 日)
ワードそのものの差別性を脇に置いても、「男の娘」にせよ「Femboy」にせよ「Trap」にせよ、「実は男”なのに”可愛い女の子の見た目をしている」キャラクターを指す用語である事は、大凡議論の余地がないのではないでしょうか。
前述した在米フォロワーさんの情報に寄りますと、「Femboy」はより包括的な用語として、男装女子も含むタームに一部では変化しつつあるようですが、それでもトランスパーソンに向けて使うのは失礼だそうです。まあ当然だと思います。
※追記:在米フォロワーさんから「Femboy」について注釈を頂きましたので、そのまま掲載致します。
「Femboy」とは、すべての女装者を指すのではなく、女装者の種類を指します。
英語では「crossdress」は女装と男装の両方を含んでいます。
「Femboy」や男の娘は、ほとんどが若く、かわいく、細身で、性別があいまいな人物です。
例の中では、エンジェル・ダストが一番「Femboy」に近い女装するキャラクターかもしれません。
でも、「女装者」(feminine crossdresser)には「Femboy」や男の娘だけではなくて、「ニューハーフ」やドラァグクイーンのキャラクターも含まれています。
「Femboy」の言葉は、(必ずしも当事者から忌避されているわけではなく)さまざまなトランスパーソンに受け入れられています。
女性らしさ(femininity)や女性らしい体格(feminine physique)を好む一部のトランス男性は、自らをフェミニンマン(フェムボーイ)と呼ぶかもしれません。
同じことが、ノンバイナリーの人たちにも言えます。 トランス女性や(AMAB)ノンバイナリー・トランスの中でも、「Femboy」というレッテルを使う理由があるかもしれません。完全に女性であるとは感じていない(ノンバイナリー、クィア)トランスパーソンや、パスすることに自信がないトランス女性の中には、代替アイデンティティとして「Femboy」を採用する人もいます。トランス女性として拒絶されるよりも、フルタイム女装家であるというファンタジーを受け入れるのです。
しかし、やはりトランスパーソン、特にトランス女性やトランスフェムには、本人が希望しない限り(こちらから)「Femboy」というレッテルは貼らないほうがいいと思います。
「トランスジェンダーとハリウッド」にも描かれたように、「男の娘」的なキャラクターはメディアの中で「(特にシスヘテロの)男性を誘惑する女装男子」として扱われ、笑い、悪徳、そして性的フェティシズムの象徴となってきました。
ここで行われているのは、(「オタク独自のファンタジー」などではない)現実に存在する性的マイノリティのカリカチュアであり、それが一部の人々を深く傷つけてきたからこそ、多様性を重んじる社会では「差別的だ」という声が大きく聞こえる(よってビジネス上も配慮せざるを得ない=「ポリコレ」)のであって、性的マイノリティの人生や、受ける差別に無関係なマジョリティの意見が「多様でなく一致している」のは、むしろ日本のような社会の方なのです。
歌舞伎は違うだろ。女性差別から生まれたものだろ。女歌舞伎が禁じられて男だけ残った。国技扱いの相撲はマッチョそのものだし、同時に女性差別の思想だ。 https://t.co/RHiRniOGBq
— 林 幸生(青谷三郎の本名垢) (@q9f0EEcv4DB1ND0) August 11, 2022
「男の娘フェチを含む日本の性癖は複雑で、性自認やポリコレで片付けるあなたの国は単純」という話だと思いますが読み方おかしいですか? あと日本以外の性癖は複雑じゃないんですか? https://t.co/MZQHVVbQxZ
— Mayo "SEN" Naito⚡ (@SEN1227) August 11, 2022
「Q」というのは、正にそういう「区別」なんてできない、という認識から使われるようになった(当然、クロスドレッサーを含む)概念だという話をしてるんですよね。 https://t.co/iPB7BnQ6DA
— Dr. RawheaD (@RawheaD) August 11, 2022
ポリコレ揶揄して多様性なんていらないから自分の好きなもの以外無い方がいいってことなら全く同意できなくても一貫性あるけど、そういう姿勢なのにどこよりも多様って称号は欲しいし他国の創作にどういうものがあるか調べるのもしたくないって本当に横着としか言いようがない
— wtc (@wapco14) August 15, 2022
「耽美、やおい、パタリロ、女装民族英雄、貴族同性愛」
— 柏木哲夫 (@tkore61) August 14, 2022
それらはフィクションの消費であって、その視点はマジョリティの立場にいる消費者のものではないのかな?
現実のLGBTQの当事者にとって自分らしく生きられる社会であるのかが問われるべきと思うのですが。 https://t.co/OpR0xJEIVm
消費者、つまり「お客様」気分で、自分らに合ったより良い消費物を求めている。そこに当事者性が見えないのですよね。
— 柏木哲夫 (@tkore61) August 14, 2022
(フィクションでマイノリティを扱ってはいけないと言っているのではない。念のため)
「trap」的な描写がトランスフォビックだというのは私も本当にそう思います。『トランスジェンダーとハリウッド』でも語られてますよね。そんなふうに描かれていたというキャラがトランスアイコンになるのは胸が熱くなる反面で、偏見なく描かれるシスジェンダーの異性装者とかも増えてほしいですよね。
— 三木 那由他 (@nayuta_miki) August 12, 2022
こうした数々のデータが示す事実に目を向けず、ただひたすら「日本は海外よりも優れているはずだ」と喚き立てている人々は、実は「オタク」でもなんでもない、単なるガラパゴスネトウヨではないでしょうか。
3.神様が作った自分を信じて―「男の娘」とクィアパーソン
とはいえ、「男の娘」表象が全く差別的であり、評価に値しないとするのも、当然ながら一面的な見方です。実際に、ブリジットのような「男の娘」は、現実を生きるクィアパーソンに少なからず勇気と自己肯定感を与えてきたのであって、問題はマジョリティである我々がそれをどう受け止めるかにかかっているのです。
去年完結した『不可解なぼくのすべてを』という漫画があって、「男の娘カフェ」(というのが実在するのかわからないけど)にトランスジェンダーの女のひと、潜在的にトランスだけどそれを認められず「男の娘」をアイデンティティとしようとする子、AMABのノンバイナリーフェミニンな子、
— 三木 那由他 (@nayuta_miki) August 12, 2022
女装するシスゲイの男の子、たぶんシスヘテロで女装を好む男の子といったいろんなひとたちが働いていて、互いの違いのためにすれ違ったりもしながら少しずつ互いを尊重するようになっていく、みたいな話なんですね。そういう物語もこれからどんどん増えてほしいです。
— 三木 那由他 (@nayuta_miki) August 12, 2022
ところで、「不可解なぼくのすべてを」には英語版wikipediaの記事が存在しますが、日本語版はありません。
反対に、しっかりとフェミニンな男の子だと自認している人々が、代表者としてのブリジットを「失う」ことにいくらかの悲しみを感じるのはよく理解できます。割り当てられた性別に関係なく、スカートをはいた男の子に対するポップ・メディアの肯定的な意見はまだ多くありません。その点で、ブリジットは多くの人にとってオアシスでした。しかし、彼女の話は、なりたい自分のために立ち上がることに関するものであり、性同一性が静的である必要はなく、自己実現への道が直線的である必要がないことを示す貴重な例です. ブリジットは男の子であり女の子であり、それは彼女にとって非常に有効でクールです。
ジェンダーは病気の症状じゃない。決してそんなことはないと言いたい。どんな努力をしても、私の気持ちは消えなかった。私はトランスジェンダーだった。それを受け入れても、戦うことをやめられなかった。トランスジェンダーであることは怖いことだ。他の道を選びたかったし、きっと正しい場所を探せば見つかると思ったから。だから、トランスを拒絶する登場人物たちの中にトランスを見る。なぜなら、私がそれを拒絶したからだ。私は毎日、彼らと同じ言葉を発し、毎晩泣いていたからだ。もし私の物語が書かれていたなら、そこは切り捨てられたはずだから。でも、もっともっとある。私が想像していた以上に。もしかしたら、すべての人がそうではないかもしれない。ビタミングミやトカゲを買ったり、銃を撃ったりして、ジェンダーアイデンティティの問題を解決し、もう何も疑問に思わないかもしれない。でも、私には私の人生しかない。そして、普通になりたいと強く願う登場人物たちの中に、それを見ることができるのだ。自分がそれを理解したと思い込んでいる人たち。もし彼らの次のステップが、私のものだったらと考えるのは利己的なことだろうか? そうであってほしいと思うのは利己的だろうか。つまずいて、もがいて、普通の枠の外に幸せがあることを発見してほしい。それが彼らにとって正しいと思うこと。自分にできないことを描くフィクションに憤慨するのは利己的だろうか?
もし普遍的なトランス体験があるとしたら、自分がトランスであることを否定することにあると思う。
ブリジットに「男になれ」と言った人はいない。でも、女の子でいいとも誰も言っていない。両親への罪悪感から、自分は何か間違っていると感じているが、なぜそう思うのかを聞ける人はいない。彼女が本当に知っているのは、自分が「変わっている」ということだけだ。そして、自分が何をすべきか教えてくれる世界に目を向けたとき、彼女は私と同じ結論に達した。その結論に最後まで従ったとき、彼女は私と同じ場所にいることに気づいたんだ。
"ブリジットがトランスジェンダーだということは、女性的な男は存在してはいけないと言うことか"? もちろん、そんなことはない。私もかつては女性的な男性だった。ブリジットもそうだった。あなたにはそれがふさわしいのかもしれないけど、私は違う。ブリジットは違う。ここで彼女の自由意志を決めつけたくはない。彼女は太輔 [註:ブリジットの生みの親・アークシステムワークスの石渡太輔氏のこと] のペンの産物なんだ。彼女は太輔の脳内ニューロンの活性化の集合体だ。ブリジットというキャラクターは岐路に立たされ、太輔は道を選んだ。そして、進まなかった道を悔やむこともできる。それでいい。もしかしたら、あなたのブリジットも、私にとってのブリジットと同じように大切な存在だったのかもしれない。太輔がこの道を選んでくれてよかった。こんなこと言うのは照れくさいけど、私にとっては大切なことなんだ。
こういう文章が、日本にいるトランスパーソンは勿論のこと、「オタク」の誰からも上がってこないというのは、全員にとって実に不幸な話だなあ、と思います。
「オタク」の一人としてはせめて、日本が誇れるゲーム・クリエイター達の勇気と、ブリジットの新たな歩みを素直に祝福したいところです。
I was born to be brave
I'm beautiful in my way
'Cause God makes no mistakes
I'm on the right track, baby
I was born this way

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