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「Colabo叩き」は新しい「公務員バッシング」である―暇アノンと新自由主義

こんばんは、烏丸百九です。

長らくnoteの更新をしておらず、申し訳ありません。Youtubeでの活動の他、先週から体調不良で寝込むなどしており、あまり積極的な発信が出来ませんでした。

今回は、一連の事件に大きな動きがあったことから、昨年ぶりに「暇アノン(暇空茜)問題とColaboバッシング」の話題に触れていきたいと思います。
事件についてよく知らないという方は、昨年のnoteを是非お読みください。


ついに崩壊し始めた暇アノン運動

最近の動きをよく知らない方のために簡単に説明すると、昨年私などが予想したとおり、暇空茜氏がColaboとの裁判で「事実上の敗訴」をしてしまい、シンパが続々と離脱・Colaboと和解する動きが広がり、いよいよ「暇アノン運動」そのものの崩壊が始まった状態と見られています。

 インターネット上で「暇空茜」を名乗る男性が、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」(通称:のりこえねっと)に虚偽の著作権侵害通報をされたとして165万円の損害賠償を求めていた民事訴訟の判決が8月24日に東京地裁中目黒庁舎で言い渡され、中島基至裁判長は原告の請求を棄却した。
 暇空茜こと水原清晃氏は、昨年から一般社団法人Colaboや、その代表の仁藤夢乃氏に対してインターネット上で繰り返し言及。同団体に対して会計報告に不正があるとする住民監査請求を行なった。結果は経費192万円が認められなかったものの、それ以上の金額を団体の自主財源から持ち出しで行なっていたことが明らかになり、返金措置は取られていない。

上記記事より

少々解りづらい点として、暇空氏は自身の動画に対する著作権違反の申請などが不当だとして自ら仁藤氏≒彼女が所属する団体「のりこえねっと」を訴えており(つまり暇空側が原告)、裁判により訴えが棄却された≒事実上の敗訴、という流れになっています。単に「暇空敗訴」と書くと法的には誤りなので、ご注意ください。
また同時に、改めて後述しますが、暇空氏が再三追求していた「Colabo不正会計問題」にも一端の決着が付くこととなりました(192万円について経費と認められなかったものの、持ち出し費用だったため問題なしとの判断)。

また、この結果を受けて、改めて仁藤氏側が原告となり、暇空茜氏や彼に賛同した川崎市議の浅野文直など数名を相手取り、改めて名誉毀損による訴訟を起こしています。

 虐待や性搾取の被害女性らを支援する一般社団法人「Colabo(コラボ)」の仁藤夢乃代表と弁護団は16日、東京都内で会見し、同団体の活動を誹謗(ひぼう)中傷し名誉毀損(きそん)したとして、同日までに4人を相手取り計2260万円の損害賠償請求訴訟を提起したと明らかにした。
 提訴したのは、都のコラボへの委託料に「不正受給がある」として住民監査請求を行うなどデマをあおった「暇空茜」を名乗る都内男性ら、ネットで誹謗中傷を行った匿名アカウントの3人と、浅野文直川崎市議。今後も別の匿名アカウントなどを追加提訴する予定という。

上記記事より

複数の裁判を争っていることから、この裁判結果を受けて暇アノンにはかなりの動揺が走ったようですが、表面上の変化はあまりありませんでした(少なくともネット上の議論では)。
しかし上記名誉毀損の提起から、ネット上の一部アカウントが次々と「Colaboへの謝罪文」を投稿する事態が起き、「名誉毀損について和解」「暇アノンからの離脱」をはかる人々が現れたことが示唆されました。

(↑謝罪した人たちについてのまとめ(特に読む必要なし))

この流れが続けば、仁藤氏の提起した名誉毀損訴訟についても勝訴の見込みが濃いものと考えられるものの、一年間の「騒動」を受けて東京都はColaboへの貧困者支援事業委託を取りやめており、おそらく都との関係修復も難しい状態と見られるため、仁藤氏の事実上の負けであると考える人たちも少なくないようです。

 コラボをめぐっては、2021年度の委託事業で一部の領収書が提出されなかったなどとして、都が計約193万円を経費と認めなかった経緯がある。仁藤代表は「(会計不備の指摘を受けての都による調査の中で)領収書の原本の存在は都に見せたが、支援対象者の個人情報を守るため、名前の提示を拒否した」と説明した。
 コラボは月3回ほど、新宿区役所前にマイクロバスをとめ、10代の女性を対象に食品や衣類、生活必需品などを提供したり相談に乗ったりするカフェを開催してきたが、昨年末から暴言を浴びせるなどの妨害が続いたため、都が3月中旬、「安全が確保できない」と中止を要請。4月に場所を変えて再開した。21年度は都から約2600万円、昨年度は約4600万円の委託費を受けていたが、今年度は自主事業とし、寄付や民間の助成で運営するとしている。
 都福祉保健局は、都が必要な場合に記録の開示を求めることについては「補助事業化したことで実施主体は民間団体になったが、都も連携していきたい。支援で必要な場合に備えて順守事項に盛り込んだ」と話している。

上記記事より

Colabo叩きは新たな「公務員バッシング」である

あえて「事実上の負け」と書きましたが、暇空氏が正しかったかどうかとは一切関係なく、今回の件でColaboはじめとする、貧困者女性支援、若年女性支援などの事業主体に激しいバッシングが行われ、今後国内での活動がより困難になったことは間違いないと思われます。
そのことについて、「(正しかったかは別として)暇空は一定の成果を上げた」と評価している人もいるようです。

しかし、都は会計を厳格化し、Colaboが申請できないようなスキームに変更し、Colaboは新事業に申請しなかったというのが事実関係となる。
都は「今回の件を受けて、1年前倒しすることになった」としており、仮にこれが本当だったとしても、今回の騒ぎを受けて、都は会計を早期に厳格化する必要性を理解し、実施したわけだ。
これはColaboの要望を都が受け入れなかった結果に見えるし、この運動の成果とも感じられる(少なくとも一年分の事業のやり方を変えられたのなら市民運動としてはかなり大きい成果ではないかな?)。
後はその評価となる。都がColaboを切り捨てたかどうか俺には分からないが、これを「都がColaboを切った」と評価する人がいても不思議ではないのでは、とも思う。
誹謗中傷が含まれるなど騒ぎかたがよくないことと、事業の実施に不備があることは両立すると思うが、Colabo完全勝利の情報を見落としているのかもしれないので御指摘いただければ幸いだ。

上記リンクより

「市民運動」によって市民への福祉を削る、またそれを「成果」と誇るのは一見異様に見えますが、私はこれに近い現象を見たことがあります。公務員バッシングです。

 東京都の人事委員会の勧告が先日発表されたのはご存じのことだろう。結果は8年連続のベースダウン。それに加えて中高年者の住宅手当の廃止など。。。
 世間はそれでも「公務員は恵まれている」「もっとリストラしても差し支えない」などという風潮だ。ともすれば、民間社会福祉施設で働く私たち自身も「公立保育園の保育士は恵まれている」などと、思い公務員叩きの風潮にのってはいないだろうか?
 公務員だって、労働者である。しかし、ストライキなどを行使する労働権は日本では付与されていない。労働者としての武器である「権利」がないなか、東京都でいえば石原都知事による悪政の手先として見られ、権力を持つ強いものに対して切実な要求が届かないうっぷんが、窓口など現場の最前線で働いている人に向いていないだろうか。時々自分自身もそういうことをしているかもしれないと正直言って思う。

上記記事より

これは2012年の記事ですが、最近では保守派と呼ばれる人々も公務員の方々の境遇に同情しているのか、はたまたパソナなどの企業による公務員支配がある程度完成を見たからなのか、バッシングも大分鳴りを潜めたように思えますが、「派遣」や「委託」が当たり前の業務形態になって以降、「公金を無駄遣いする委託業者」というフレーミングでColaboその他の団体がバッシングされている、という流れはあるのではないでしょうか。

私も含め、社民主義的な政策を支持するリベラル派であれば当たり前だと思いますが、そもそも国家がやるべき事業(貧困者支援や若年者支援)を民間委託している時点で「無駄遣いを削減する」「利益を追求する」目的があるわけで、それすらも「否認」「切り捨て」「厳格化」するのは社会の自殺に見えてならないのですが、一連のColaboバッシングを「フェミニスト批判」「ミソジニー」「ネット陰謀論」といった切り口でだけ捉えていると、案外こうした問題の側面を見逃してしまうのではないかと思います(無論、そういった切り口も非常に重要ではありますが)。

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