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「オオカミはなぜ赤ずきんを食べなかったのか?」

映画「今夜、世界からこの恋が消えても」をネットフリックスで視聴。眠ると記憶がリセットされる脳の障害を抱えながらも気丈に生きる女子高生とクールな男子生徒の淡い青春ラブストーリー。福本莉子・道枝駿佑のダブル主演。

(あらすじ)
アイドルグループ「なにわ男子」の道枝駿佑と「思い、思われ、ふり、ふられ」の福本莉子を主演に、一条岬の同名恋愛小説を映画化。高校生の神谷透はクラスメイトに流されるまま、同級生の日野真織に嘘の告白をする。しかし彼女は「お互い本気で好きにならないこと」を条件にその告白を受け入れ、2人は付き合うことに。やがて真織は、自分が前向性健忘症で、夜に眠るとその日の出来事をすべて忘れてしまうことを透に打ち明ける。彼女は毎朝、前日の日記を読み返すことでどうにか記憶をつなぎ止めていた。透はそんな真織と1日限りの恋を積み重ねていくが……。「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」など数々の青春恋愛映画を手がけてきた三木孝浩監督がメガホンをとり、「君の膵臓をたべたい」の監督・月川翔と「明け方の若者たち」の監督・松本花奈が共同で脚本を担当。

(引用:「映画.com」)

(ネタバレ感想)

ひと言でいえば、いわゆる難病ものである。前半はよくある青春キラキララブコメかと思いきや、中盤以降から予期せぬ急展開がくわわり、物語は終盤にむけて意外な方向へと収斂していく。

青春ラブストーリーとして見ればまあまあ安定感があるし、キャスト陣の演技にも特に文句はないのだが、ただ1点だけ、どうしても納得できないというか、ツッコミを入れたくなってしまうところがあった。

しかし……寝るかね。

道枝君との公園デートで肩を寄せながら日向ぼっこをしている最中、気を許した福本莉子は次第にウトウトし、ついには眠りこけてしまう。

彼女には「眠ると記憶がリセットされる」という難病があるから、当然、ほんのわずかな居眠りでも命取りである。当然、目覚めた莉子ちゃんはすべてを忘れ、目の前の愛しい道枝君が「見知らぬ男」となり、「誰なのよ、あなた!」と大パニック、という流れ。

いや、ちょっと待ってほしい。

莉子ちゃんは、自身の記憶障害について、「昨日までの自分」が書き残した日記を通して理解している。

ということは、当然、道枝君との公園デートでも、「ここで眠ってしまったらどういうことになるか」ぐらいは容易に想像がつくはずだ。

つまり、たとえどんなに道枝君とのラブラブムードに呑まれていたとしても、日向ぼっこが思いのほか気持ちよかったとしても、夜の自室以外で無防備に眠るというのは、彼女にとってきわめて不自然な選択なのである。

そこで、今回のタイトル。

「オオカミはなぜ赤ずきんを食べなかったのか?」というのは、グリム童話「赤ずきん」に対する古典的なツッコミである。

おばあちゃんの家に行くために森を歩く赤ずきんをオオカミはずーっと陰から監視しつづけ、あろうことか途中で見つかって会話までしているのだ。

森のシーンではオオカミは赤ずきんと2人きりなのだから、襲おうと思えば襲えるはず。そもそもオオカミなのだから、仮に誰かが通りかかったとしても野生のポテンシャルを最大限に発揮して襲いかかれば、「食べる」という目的は達せられるわけである。

それなのになぜ、オオカミは赤ずきんを食べなかったのか。

物語が成立しないからである。

「お話」として、面白くも何ともないからだ。

オオカミが森の中で赤ずきんを食べてしまっては、オオカミはおばあさんに化けることができず、その時点で話が終わってしまう。

話を戻すが、「今夜、世界からこの恋が消えても」の莉子ちゃんが公園デートでうっかり眠らなければ、道枝君は莉子ちゃんの記憶障害を知ることができない。遅かれ早かれ気づくことにはなるだろうが、脚本的にはかなりまどろっこしくなるだろう。

正統派のラブストーリーとして素直に楽しめばいいものを、ここまでひねくれたツッコミをついつい入れてしまうのは、私もとうとう「老害」になってしまったのだろうか。

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