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「私たちはだまされている」
『今すぐ購入:購買意欲はこうして操られる』をネットフリックスで鑑賞。ワンクリック注文など、あらゆるサービスによってユーザーの購買意欲を煽り、世界最大のオンラインショップとなったAmazonの闇をさまざまな視点から浮き彫りにしたオリジナルドキュメンタリー。
Amazonの元スタッフ、アパレルブランドのデザイナー、シューズブランドの元責任者、環境活動家……あらゆる視点から語られる「Amazon」は独善的で打算にあふれ、どこまでも隙がない。
「(買いたい)のではない。(買わされている)のだ」
異口同音に、彼らは訴えかける。
私たちが思っているよりもはるかに、Amazonはしたたかだ。
トップページから商品ページ、購入ページ、そして、ユーザーメッセージのフォントと、細部に至るまで「買わせる」ための計算が張りめぐらされおり、新たなユーザーアクションはたちまちのうちに数値化され、未来の購買戦略へと活かされる。
ユーザーの希望をたちどころに叶えてくれるAmazonだが、その裏には膨大な搾取があることを忘れてはならない。
Amazonの返送品はガーナをはじめとした途上国に送られる。衣服やおもちゃ、電子機器など、膨大な返送品をリサイクル用に処理するのは、現地の貧しい子どもたちだ。
許せないことに、Amazonのそうした搾取は、「環境保護・貧民救済」の美名のもとに公然と行われているのである!
リサイクルは環境に優しい、貧民救済はいいことだ……使わなくなった衣服やおもちゃで地球が救われるのだと信じて、多くの人々がAmazonに不要品を送る。
しかし、Amazonにそのような「善意の心」はない。彼らはただ、正規のゴミ処理コストをカットしたいだけであって、地球や恵まれない人たちを救おうとは微塵も考えていないのだ。
何万トンにも及ぶ古着で途上国の海岸が埋め尽くされている光景はそれだけでおぞましく、終末を思わせるほどのインパクトがある。
「Amazonの闇」について理路整然と語るプロフェッショナルたちは同時に、自分たちもAmazonの策略に加担してしまった罪を嘆き、観る側に語りかける。
「どうか、慎重になって」
Amazonと縁を切れとは言わない。そんなことはもはや不可能だ。ただ、せめて、最後のワンクリックの前に、ほんの少しの慎重さを取り戻してほしい。
それは本当に、あなたにとって必要か?
1カ月待ってみて、それでもほしかったら注文しよう。
Amazonに世界を変える意志がないとしても、賢明なユーザーひとりひとりの小さな「抵抗」によって、世界は着実に変わっていくはずだ。
私自身、Amazonとは切っても切れない関係にあるが、せめて、週刊誌の定期注文ぐらいは控えようと思う。
「Amazonの闇」については、以下の記事もお読みいただきたい。