見出し画像

『人事で一番大切なこと』を読んで感じたこと—人事ポリシーの重要性

西尾太さんが書かれた『人事で一番大切なこと』を読みました。西尾さんは現在、人事コンサルタントとして活躍されており、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)で人事部長などを歴任してきた、豊富な人事経験をお持ちの方です。
この本では、人事は「やり方」の前に「考え方」としての人事の軸=人事ポリシーをつくることの重要性や、そのフレームワークや活用方法をわかりやすく解説しています。

会社組織では、ジョブ型人事制度や目標管理制度、評価制度などが、流行や経営陣の感覚によって導入されがちです。しかし、軸となるポリシーがないと、制度が小手先の対応になりがちで、一貫性が欠けたり、制度間で矛盾が生じたりするリスクがあります。
例えば、将来の幹部候補であるコア人材を求めているのに、採用では休暇の充実を前面に押し出していたり、能力主義・成果主義を掲げながらも実際には年功序列で給与が上がるような制度があるといったケースです。

他社で成功している制度をそのまま導入しても、自社の外部環境や組織風土、組織文化、既存の人事制度、そこで働く経営者-社員が異なるため、うまくいかない可能性があります。そのため、自社の人に対する考え方を明確にする人事ポリシーが必要です。このポリシーに基づいて、一貫性と継続性を持った制度設計や採用、異動、労務管理を行うことが重要です。

本書の興味深いところは、「では、人事ポリシーはどう考えたらよいのか?」という問いに対し、多面的なフレームワークを提示している点です。これにより、経営者や人事担当者が自社の人に対する考え方を整理しやすくなります。

私自身、人事の専門家としてポリシーの重要性は理解していたつもりでしたが、この本を通じて多面的な視点で考えることの大切さを再認識しました。経営者の方や人事担当者の方は、このフレームワークを活用して自社の人事ポリシーを整理してみてはいかがでしょうか。また、人事コンサルタントの方は、制度導入支援の際に経営者の考えを引き出す方法として活用できると思います。

ただし、後半の人事ポリシーの活用編については、著者の経験に基づく部分が多いため、参考程度にとどめ、自社に適した活用方法を考えるのが良いでしょう。

現在、未曽有の労働人口の減少に伴い、人材確保がますます困難になる時代です。このような状況下でも、企業のパーパスに基づき、外部環境を考慮した人事ポリシーの策定が重要です。

この本は、人事に関わるすべての方にとって貴重な学びや気づきを提供してくれる一冊です。ぜひ一度、書店で手に取ってみてください。

人事で一番大切なこと 採用・育成・評価の軸となる「人事ポリシー」の決め方・使い方 | 西尾 太 |本 | 通販 | Amazon

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集