それはもう、れっきとした、新たな嗜好行為になった。小杉湯クラフトコーラフェスト vol.2
本日8月31日に、小杉湯クラフトコーラフェスト vol.2が終幕しました。
G.W.に開いたvol.1時で確信した、銭湯×クラフトコーラの可能性。それを受け継ぎ、新たなラインナップでふたたび表現できることに喜びを覚えて迎えた、この夏の小杉湯。
そこで見たのは、銭湯×クラフトコーラが、もう、れっきとした新たな嗜好行為として、お客さんたちのものになっていた光景でした。
思い出す度に嬉しくなる気持ちを指に走らせ、小杉湯クラフトコーラフェスト vol.2を振り返ります。
1.今回の概要
基本的には、vol.1時のスタイルを受け継ぎました。
8月の1か月間、小杉湯の待合室を各クラフトコーラの展示販売ブースに。何度見ても、ずらっとクラフトコーラが並ぶ光景の壮観さと、これが銭湯に並んでいるという、いい意味での違和感を覚えます。
20日[金]~27日[金]は、総勢7銘柄のクラフトコーラの湯を日替わりで実施。各銘柄の製造過程で出たスパイスやハーブ、柑橘の出し殻・絞りかす、あるいはキープレイヤーとなる素材を入れた、特製のあつ湯が誕生しました。
そして、クラフトコーラの湯weekの週末2日間は、小杉湯の玄関軒下で飲み比べ屋台が登場。1杯だけではなく、サイズを選べる2種飲み比べやミルク割りのメニューを用意しました。
2.今回のセレクトに込めた想い
さて、今回のラインナップについて。
自分が考える”クラフトコーラ”の定義に沿う銘柄の中から、「小杉湯との親和性(生産者の紹介しろ)」を感じるかどうか、「もったいない風呂を実施できるか」は、もちろんセレクトの大前提。
それに加え、テーマとして持っていたのは、特に、新登場の5銘柄のセレクトに込めたのは。
「クラフトコーラの“前進”“拡張”を表現する」
ということ。
今やもう、クラフトコーラと名付けられたあらゆる飲み物が同時多発的に誕生し、カオスな様相を呈してきています。いいことなのか、悪いことなのか、いまいちわかりません。
けれど、僕は、クラフトコーラが文化になってほしいと思っています。ブーム、ではなくて。
その言葉をみればわかる通り、文化とは「文と化す」こと。
現象や正体を言葉で表現すること、整理することを諦めてはいけない、と思っています。
そこで。この小杉湯クラフトコーラフェストの場をもって、自分がクラフトコーラだと考える銘柄の中から、これまでのクラフトコーラの歩みと、その前進を、銘柄のセレクトによって表現しようと考えました。
今回新たに登場した5銘柄は、クラフトコーラの”第3世代”だと考えています。
第1世代は、2018年生まれの同級生2銘柄。クラフトコーラ界の2台巨頭であり、すでに小杉湯で定期的にお風呂が行われている、「伊良コーラ」と「ともコーラ」。
第2世代は、小杉湯クラフトコーラフェスト vol.1のラインナップに代表される、2020年前半までに登場した、地域性を文脈に持つクラフトコーラたち。
伊良コーラとともコーラの活躍が、さまざまなメディアを通じて各地に伝播したことに加え、第2世代の筆頭ともいえる「熊本クラフトコーラ」の登場。ともコーラのご当地クラフトコーラ第1弾として2019年に登場したこの出来事も、2020年前半に”地域性の色が濃い”クラフトコーラがたくさん現れた1つの要因でしょう。
そして、第3世代は、2020年後半以降に登場した銘柄たち。地域性に加えて、作り手に食品開発のプロフェッショナルが増えたり、素材がチャレンジグになったり、飲むシチュエーションまでデザインしたりと、その個性が尖ってきています。
この流れは、クラフトコーラの可能性や多様性を拡張するものであり、とても喜ばしいもの。そこをしっかり示そうと思い、小杉湯クラフトコーラフェスト vol.2のラインナップを選びました。
1日目(8月20日[金]):TÉTOTARŌ COLA / てとたろうコーラ
“料理変態”と“日本酒変態”。食のプロフェッショナルがタッグを組み、理想的な姿を原価無視で追求した、まさにクラフトコーラ界の”黒船”的存在。苦みを出すために自家製でカラメルをつくるこだわっりぷりで、独特の甘みと苦み、コクがたまらない。セイロンシナモンや和山椒、とうもろこし発酵エキス等による芳香な香りや酸み等も併せ持つ、浸れる1品。
TÉTOTARŌ COLAの湯では、セイロンシナモンや和山椒など、厳選されたスパイスやハーブのガラを大量にお風呂へ。あまりの素材の主張の強さに、準備時点から小杉湯の皆さんが盛り上がっていました。
2日目(8月21日[土]):ぎふコーラ(@gifucola)
古くから“薬草文化”が根付く、岐阜・旧春日村まわりで発祥したクラフトコーラ。地元の霊峰・伊吹山で採れた薬草4種(どくだみ、よもぎ、かきおどし、ヤブニッケイ)がたっぷり入っている。コーラらしいスパイシーさや、黒胡椒や唐辛子のキレ、どくだみやよもぎ等の薬草由来のまろやかさ、渋みを楽しめる。岐阜の伝統を受け継ぐコーラです。
なんと、この岐阜・旧春日村地区には、乾燥させた薬草をお風呂に浮かべるということが、昔から文化になっているそう。そんな背景からぎふコーラの方と会話を重ね、単純に出し殻を入れるのではなくて、ぎふコーラのキープレイヤーである薬草をたっぷり入れようという話になりました。
つまり、岐阜の文化を小杉湯の日常に誕生させたわけです。そんな姿勢からも、”岐阜のカルチャーテラー”であることを実感します。
3日目(8月22日[日]):屋久島1000年コーラ(@yakushima1000)
屋久島産のウコンや超軟水、近隣の種子島産の黒糖等、屋久島まわりの恵みが詰まった1品。シナモンやクローブ等のスパイス感に加え、ウコンと黒糖が効いた、ビターな甘みがクセになる。
ラベルや箱には島の象徴・屋久杉の姿。また、「1000年」の名前も、1000年を超えないと正式名称で呼ばれない屋久杉に掛けて、永く愛されるようにという想いが込められています。1年前に「屋久島コーラ」という屋号で営んでいた中で、内部事情で一度営業活動を停止せざるを得なかった背景を持っていることからも、「永く」というところには並々ならない想いを抱いている。そんな覚悟まで持ち合わせ、名前に表現しているのです。
屋久島1000年コーラの製造過程で出る出し殻に加え、生産者さんのご厚意で送っていただいた「屋久杉のチップ」も入れた、屋久島1000年コーラの湯。
さながら、屋久島の刻を感じるお風呂だったことでしょう。
4日目(8月23日[月]):80“YASO”コーラ(@80gin_)
由緒美しい野草の力をいただける、クラフトコーラ。野草の力と独自の発酵技術を活用した健康食品づくりを営む「越後薬草」(新潟・上越)が手掛ける。80種の植物発酵エキスと、バニラビーンズやカルダモン等のスパイスが優しく調和する、まろやかな味わい。
80"YASO COLA"の湯には、製造過程で出る出し殻をたっぷりと入れました。飲むとわかるように、80種の植物発酵エキス由来の、上品で、まろやかで、奥深い、鼻に抜ける香りと味わい。
それをお湯でも感じていただけたと思います。
7日目(8月27日[金]):みちコーラ(@michicola_official)
幻の柑橘類「ゲンコウ」をはじめ、嬉野のお茶や武雄のレモングラス、そして玄界灘の塩など。佐賀の魅力を詰め込んで届ける『みちコーラ』。佐賀のことが大好きな仕掛け人たちがプロデュース / 運営 / クリエイティブを、老舗・地域密着型の飲料メーカー「小松飲料」が製造を担う。まさに”佐賀愛溢れる”布陣でクラフトコーラづくりに臨んでいます。自社工房以外で、製造担当にクラフト性を表現した例は、意外と初めてかもしれません。
また、パッケージデザインや名の由来は、2020年に日本遺産に認定された、佐賀を通る「シュガーロード」。古くは出島で荷揚げされた砂糖が江戸へと運ばれていた歴史があったり、多くの砂糖菓子が生まれたり、ひいては著名な製菓メーカーの創業者も輩出されるという、砂糖文化の文脈を持つ道です。そんなところも受け継ぎ、クラフト品らしく表現しています。
みちコーラの湯には、製造過程で出たスパイスや柑橘の出し殻をたっぷりと入れました。
みちコーラを大トリに選んだのは、ワケがあります。
まず銭湯との相性。素敵な温泉街やサウナシュラン1位をとったサウナ施設がある佐賀と、塩を素材に使っていることを掛け合わせて、”アフターサウナ””アフター銭湯”のドリンクとしても表現しているのです。さらに、開けてすぐ飲めるRTD瓶では、湯上りの心地よさを引き立てるために、発砲加減を微炭酸に調整。
ルーツや作り方と、飲むシチュエーションをここまで掛け合わせ、かつ落とし込んでいるのは、クラフトコーラでも珍しい。とても”第3世代”的だなと。
そして、2021年8月に登場したばかりの新銘柄であること。ある意味、今夏のクラフトコーラ界における主役だったわけです。そんな経緯から、大トリに選びました。
3.軒下飲み比べで触れた、新たな嗜好行為を楽しむ人たち
さて、今回自分がその場にいれたのは、軒下飲み比べを実施した8月21~22日の2日間。
もっとたくさんいれたらな、と始まる前は思っていたものの、その2日間だけでも十分すぎる光景がみれたのです。
ちなみに、軒下飲み比べでは、2日間で計5銘柄を楽しめるような設計にしました。
21日は、前日にクラフトコーラの湯を実施したTÉTOTARŌ COLAと、当日にクラフトコーラの湯を実施したぎふコーラ。
22日は、当日にクラフトコーラの湯を実施した屋久島1000年コーラと、翌日以降に予定している80 "YASO" COLA、みちコーラ。この日は、午前中から場を開けたので、朝風呂後にそそるであろうミルク割りもメニューに加えて、という布陣でした。
いざ、OPEN。
やっぱり楽しい、小杉湯軒下でのクラフトコーラのお振る舞い。
目新しい銘柄を、興味深そうに眺めてくれた
夏の日の、あるいは湯上りで火照った体に染み渡らすように味わい、美味しいと声に出してくれた
今日のお風呂になっていたクラフトコーラはなんですか?と聞いてくれ、その銘柄を当然のように選んで、飲んでくれた
このあたりは、vol.1の経験から、そうなってくれるだろうなと予想していたものの、目の当たりにすると、感じる嬉しさに変わりはありませんでした。
さらに、驚いた光景がいくつもあったのが、今回の小杉湯クラフトコーラフェスト vol.2。
小杉湯クラフトコーラフェスト vol.2のお知らせを受けて、いつ試飲販売をしているのかわざわざ事前に問い合わせてくれた
「ふだんなかなかクラフトコーラに手を出せないけれど、送料かからず色々手に入るから、ココ(小杉湯クラフトコーラフェスト)で買うようにしている。」と言ってくれた
軒下飲み比べを行った2日間どちらにもきてくれて、すべての銘柄を味わってくれた
「水分補給のつもりでさ。」なんて冗談のような誘いに気前よく乗ってくれて、湯上がりだけではなく湯に入る前も一杯ひっかけてくれた
ふだんなかなかしないけれど、昼と夜の2回もお風呂に入りにきてくれて、飲み比べをしてくれた
飲み比べしてもどれを買うか迷った中で、我々渾身の「各銘柄を伝えるお風呂POP」の内容をみて、決め手にしてくれた
僕らが思っている以上に、この日常を楽しみにしてくれて、楽しんでくれて。小杉湯クラフトコーラフェストで味わえる新たな嗜好行為を、しっかり自分のものにして楽しんでいたお客さんが、とても多かった印象です。
新しい銭湯の楽しみ方であり、新しいクラフトコーラの楽しみ方でもある。
こんな光景は、お風呂があって、生活の中に佇んでいて、感性を研ぎ澄ますことができる銭湯だからみえたことであり、作り手の個性や味わい / 香りの違いが分かりやすく、ノンアルコールであり、出し殻が発生するクラフトコーラだからみえたこと。
銭湯とクラフトコーラの、切っても切れない関係がそこにはあった。
そんな気がします。
個人的には、クラフトコーラフェストでしか滞在することがなかなかできない高円寺の町と、なんだかコミュニケーションをとれているような気がして、そこに住む人の生活を感じれて、それがとっても嬉しかったです。
4.銭湯×クラフトコーラ、”次の日常”へ
今、素直に思うのは、このケの日のハレをもっと日常化したい、ということ。なので、vol.3ができたら、もちろん嬉しい。
ただ、もっともっと、面白いことが起こりそうな気がしています。
ここでみてきた、銭湯×クラフトコーラの可能性を、vol.3という形で表現するのか、はたまた違う形にも昇華するのか。
今から楽しみです。
ここまで読んでくれた方へ。ぜひ、vol.1時のnoteもご覧いただき、銭湯×クラフトコーラの可能性をみてみてください。
MVやとお風呂POP等デザイン&写真:
松田 大成さん(マツダデザインストア)
note告知・SNS発信:
銭湯ぐらしイベント部 大塚 靖子さん
イベント企画運営:
銭湯ぐらしイベント部、鯉淵 正行(クラフトコーラアワー主宰 / クラフトコーラ行商・マイスター)
スペシャルサンクス:
vol.2の銘柄さん、vol.1の銘柄さん、小杉湯三代目・平松佑介さん、小杉湯にかかわるすべての方、試飲のシフトに立ってくれたみなさん、小杉湯となりのみなさん、なによりこんな日常を楽しんでくれたお客さん
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